公開：2002
監督：Julie Dash
地域：アラバマ州
出演：Angela Bassett、Cicely Tyson、Peter Francis James、Dexter Scott Kingほか
範疇：TV映画／実話の映画化／人種差別／公民権運動／バス・ボイコット

私の評価 ：☆1/2

【Part 1】

アラバマの州都Montgomery（モンガメリ）におけるバス・ボイコットは、非暴力的公民権運動の最初の勝利であり、また全米の公民権運動を推進させた歴史的出来事でした。

CBS制作のこのTV映画は、そのバス・ボイコットの発端を作った黒人女性Rosa Parks（ローザ・パークス）を物語の中心に据えています。'The Long Walk Home'『ロング・ウォーク・ホーム』(1990) は運動に参加した一般市民を描いたもので、'Boycott'（邦題未定）(2001)はバス・ボイコット運動を指導したMartin Luthor King Jr.（マーティン・ルーサー・キング牧師）の側から見た物語でした。この'The Rosa Parks Story'により、一つの運動について三つの視点が得られたわけです。それぞれ、非常に興味深く出来ていて、似通ってはいません。2002年2月の放送直後に、早くもCBSからヴィデオ発売のアナウンスがありました。その気になれば何方でも観ることが出来るわけです。

1924年、アラバマ州Montgomery。ある小学校へ少女Rosaが4年生として転校して来る。ここで仲良しとなった同級生が、後に彼女をNAACP（全国黒人地位向上協会）に参加させることになる。

Angela Bassett（アンジェラ・バセット）演ずる女学生時代のRosaが、同級生たちと雨宿りのため床屋の店先に飛び込む。Peter Francis James（ピーター・フランシス・ジェイムズ）演ずる床屋のParks（パークス）は、公民権運動推進をお客に説くような進歩的男性で、Rosaは心惹かれるものを感じる。ParksもRosaに一目惚れし、以後積極的に彼女の家に通い詰め、遂に彼女に結婚を承諾させる。

1942年。この頃Rosa Parksはデパートの裁縫師として働いていた。雨のクリスマス・イヴ、帰宅のためバスに乗って着席すると、運転手が「黒人は前で運賃を払ってバスを降り、外から後ろへ廻って黒人専用席に座ることになっている。降りて、後ろから乗れ」と強制する。Rosa Parksは「ひどい雨なのに、また外へ出すことはないでしょう」と抵抗するが、運転手の圧力に負け外へ出る。運転手は意地悪く両方のドアを閉め、彼女を置き去りにして走り去る。Rosa Parksは雨の中を5マイル（8Km）歩いて家に戻る。

小学校時代の同級生と再会し、Rosa Parksは出来たばかりのNAACPアラバマ支部に参加する。指導者の方針で、メンバーは全員選挙人名簿に登録することになっていた。選挙権は憲法で認められていたにもかかわらず、当時のアラバマ州は黒人の登録を妨害する方針を取っていた。黒人だけに議会制度に関する難しいテストを課し、どこが間違っているか説明もしないで落第を宣告していた（白人はテスト無しで無条件登録）。Rosa Parksは何度も苦い思いをするが、最後に裁判沙汰をチラつかせてやっと登録出来た。

1955年12月1日。42歳のRosa Parksはバスの黒人専用席に座っていた。白人が乗り込んで来たが、白人席は満員だった。運転手は黒人席を空けろと命じる。差別に憤り、NAACPによって行動に目覚めていたRosa Parksは動かなかった。運転手は警官を呼び、Rosa Parksは逮捕される。

Rosa Parks逮捕の報は市内の黒人社会を駆け巡り、主だった聖職者、教師、NAACP役員などが緊急の会合を開き、Rosa Parksの裁判の日に合わせて丸一日のバス・ボイコットを決議する。この運動の指導者となったキング牧師は大成功だったボイコットを無期限に延長する。Rosa Parksの家に嫌がらせや攻撃が増え、妻が活動家たちに利用されていると考える夫Parksとの夫婦関係にも亀裂が生じ始める…。

後半は“夫婦もの”に転じ、周知のバス・ボイコットの詳細は省略されています。そういう意味でも'The Long Walk Home'と'Boycott'を併せて御覧になるのが望ましいと思います。

Angela Bassettは自らプロデューサーの一人となって、この映画制作に入れ込みました。名女優Cicely Tyson（シシリィ・タイスン）がRosa Parksの母親として特別出演。キング牧師の実の息子のRev. Dexter Scott King（デクスター・スコット・キング牧師）が父親を演じています。Rosa Parksの仲良しだった同級生がバスを拒否する老婆として出演。なかなか凝ったキャスティングです。

演出、撮影も素晴らしく、実話ものとしては見応えのある一篇となっています。女性監督だけに夫婦愛の繊細な描写が好ましい。

(February 24, 2002)

【公民権運動関連】

・Crisis at Central High『アーカンソー物語』 (1981)
・For Us, the Living（未公開）(1983)
・Eyes on the Prize（未公開）(1987)
・The Long Walk Home『ロング・ウォーク・ホーム』 (1990)
・Separate But Equal『裁かれた壁〜アメリカ・平等への闘い』(1990)
・The Ernest Green Story（未公開）(1993)
・The Vernon Johns Story『怒りを我らに』 (1994)
・4 Little Girls（未公開）(1997)
・Ruby Bridges（未公開）(1998)
・Selma, Lord, Selma（未公開）(1999)
・Crazy in Alabama『クレイジー・イン・アラバマ』 (1999)
・Freedom Song『フリーダム・ソング』(2000)
・Boycott『ボイコット／キング牧師の闘い』(2001)
・Sins of the Father『父と罪　重き告発』(2002)

・公民権運動・史跡めぐり

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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