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公開:1997
監督:Spike Lee
地域:アラバマ州
出演:Maxine McNair、Chris McNair、Alpha Robertson、Freeman Hrabowski IIIほか
範疇:ドキュメンタリー/人種差別/教会爆破事件/亡き少女達とその家族
私の評価 :☆
【Part 1】
HBOというCATVのために制作されたドキュメンタリー。監督Spike Lee(スパイク・リー)は劇映画で実績のある人ですが、もともとこのテーマに関心があったそうで、ここでは製作者の一人ともなっています。
1963年9月15日、アラバマ州北部の商業・工業都市Birmingham(バーミングハム)の公民権運動(差別の無い教育、公共サーヴィス、選挙権を求める運動)の拠点 16th Street Baptist Church(16番通りバプティスト教会)にダイナマイト10本分の爆発物が仕掛けられ、日曜学校に来た黒人女子小・中学生四人が死亡した。当時のBirminghamは、Martin Luther King Jr.(マーティン・ルーサー・キングJr.)によれば「アメリカで最も差別の激しい町」だった。
この事件の直前1963年8月には、 公民権を求める人々がワシントン行進に250,000人も集まり、公民権運動はかつてない高まりを見せていた。それは逆にK.K.K.を始めとする南部の白人至上主義者を苛立たせ、より過激で暴力的なリアクションを引き起こしていた。
Joan Baez(ジョーン・バエズ)が歌う'Birmingham Sunday'(バーミングハムの日曜日)をバックに、カメラは少女達の葬られた墓地と墓石を巡って歩く。四人の少女達がどんな娘達であったか、両親、姉妹、叔母、友人、教師などが証言する。Denise(デニーズ)は11歳の活発な少女で、町の白人専用の食堂に行きたがった。父親はなぜ黒人がそこへ入れないか説明するのに苦労した。Carole(キャロル)は14歳でガールスカウトでもあり、学校のバンドでクラリネットを担当していた。翌日はコンサートで演奏する予定だった。Cynthia(シンシア、14歳)は冗談好きの明るい少女で、教会の聖歌隊の一員だった。Addie(アディ、14歳)は小鳥の死骸を見つけると、友達にも参加させて小鳥のお葬式をするような優しい少女だった。
当時の市長、州司法長官、New York Times編集者、公民権運動のリーダーなどの回顧談が続く。教会にダイナマイトが仕掛けられたり、黒人たちが平等座席をテストしに乗車したバスが燃されたりした。こういうニュースは遠く極東の日本にまで伝わり、日本人ビジネスマンを恐れさせた。黒人たちはデモ行進、差別的店舗への不買運動などを推進し、さらに子供達によるデモも指導した。警察機構は容赦なくデモ隊に放水し、警察犬を襲わせるなど、当時のBirminghamは“暴力の町”と化していた。
そんな折り、四人の少女達の近親者や友達の何人かは、「16th Street Baptist Churchに何か飛んでもないことが起る」という予兆を得ていた。しかし、四人の少女達は正装して日曜学校に出掛けた。日曜学校の部屋は教会の地下にあり、その近くの外壁にダイナマイトが仕掛けられていたのだった…。
事件から43年経った(映画制作当時の)1997年においても、亡き少女達は近親者や級友達の胸から消えていません。その後、五つの教会が爆破され、放火されたりしました。「壊されれば、建て直すまでだ。これ以上強いメッセージはあるまい」と語る老人もいます。しかし、「世界で一番安全な所は教会だと思っていたのに…」という、当時行き場が無くなった女性の言葉も出て来ます。
元K.K.K.のBob Chambliss(ボブ・シャンブリス)という男が、爆破犯としてFBIによって逮捕されます。少女達の一人、Deniseの父親が告発の役を引き受けます。当時としては、生命の危険すらある勇敢な行動でした。インタヴューは、その後、娘達を失った悲しみを親としてどう乗り越えたか?を尋ねます。
映画はここで終りですが、DVDにはエピローグとして、次のような字幕が出ます。「FBIは新しい情報を得て、2000年5月、二人の容疑者Thomas E. Blanton, Jr.(トーマス・E・ブラントン)とBobby Frank Cherry(ボビィ・フランク・チェリィ)を第一級殺人罪容疑で起訴した。裁判は2000年12月に開始される」
二人のうちBobby Frank CherryはTV映画'Sins of the Father'で取り上げられた人物です。'Sins of the Father'のエピローグによれば、Thomas E. Blanton, Jr.は2001年5月1日アラバマ州裁判所において、4人の少女を殺害した罪で終身刑、Bobby Frank Cherryに関しては、2002年5月22日、4人の少女を殺害した罪と放火の罪で終身刑を宣告されています。なお、主犯のBob Chamblissも既に終身刑となっていましたが、服役中に獄死しました。
ドキュメンタリーですから、登場する全ての人々は自分の観点から話します。近親者、友人たち、市の関係者の他に、Coretta King(コレッタ・キング、King牧師の未亡人)、年老いた元アラバマ州知事George Wallace(ジョージ・ウォレス)、Walter Cronkite(ウォルター・クロンカイト、元CBSアンカーマン)、Bill Cosby(ビル・コスビィ、コメディアン)、Jesse Jackson(ジェシー・ジャクスン、牧師)、Reggie White(レジー・ホワイト、Green Bay Packers)などが登場します。
Jazzテナーの故John Coltrane(ジョン・コルトレーン)が演奏した'Alabama'という曲が使われています。私はこんな曲知りませんでした。
この映画はアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門でノミネートされました。
(August 11, 2002)
【公民権運動関連】
・Crisis at Central High『アーカンソー物語』 (1981)
・For Us, the Living(未公開)(1983)
・Eyes on the Prize(未公開)(1987)
・The Long Walk Home『ロング・ウォーク・ホーム』 (1990)
・Separate But Equal『裁かれた壁〜アメリカ・平等への闘い』(1990)
・The Ernest Green Story(未公開)(1993)
・The Vernon Johns Story『怒りを我らに』 (1994)
・Ruby Bridges(未公開)(1998)
・Selma, Lord, Selma(未公開)(1999)
・Crazy in Alabama『クレイジー・イン・アラバマ』 (1999)
・Freedom Song『フリーダム・ソング』(2000)
・Boycott『ボイコット/キング牧師の闘い』(2001)
・The Rosa Parks Story『ローザ・パークス物語』(2002)
・Sins of the Father『父と罪 重き告発』(2002)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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