これ(タイトル)は本当なんですね。驚きました。
'MentalRules for Golf'
by Gregg M. Steinberg, PH.D. (TowleHouse Publishing, 2003, $12.95)
「笑いは出来の悪いラウンドの日の最良の解毒剤だ。学者たちによれば、笑いがエンドルフィンというホルモンを放つそうだ。そのホルモンは脳における自然の麻薬ともいうべきもので、あなたに幸福感を与えてくれる。
要は、笑いは悪いスコアに影響されない、いい心理状態を作り出すということだ。含み笑いもまた集中することを助けてくれる。
笑いの力はゴルフ・コースだけで役立つものではない。Norman Cousins(ノーマン・カズンズ、作家・編集者)はその著書'Anatomy of an Illness'『病気の分析』において、次のように述べている。彼は衰弱から立ち直るため、TVのさまざまなコメディ・ショーを見ながら大笑いし、元通りの健康を取り戻した。
ミス・ショットの後や人生の過酷な状況で毎回腹を立てると、多分あなたはラウンドや健康を損なうだろう。ゴルフ・コースと人生における全てのミスを笑い飛ばせば、もっと楽しくなり、その結果得られる健康によってより長くゴルフを楽しむことが可能になる」
(January 05, 2004)
'Watson's Shortcuts'
by Tom Watson with Nick Seitz ('Golf Digest,' December 2003)
Tom Watson(トム・ワトスン)考案の「ぼくらの発明工夫展」出品作(?)。スウィングの間、頭が左右に動くのは許容されますが、上下運動は最悪です。ダフり、トップ、てんぷらの元凶だからです。私はレーザー・ポインター利用の「ヘッドダウン矯正器」というのを創案しましたが、このTom Watsonのアイデアはもっと手軽で効果的です。
針金のハンガーを使います。先を丸めて、残りは伸ばします。Tom Watsonの方式では地面に針金を差し、円形の中にボールが見えるようにアドレスして打ちます。ボールが左右にズレた場合は、インパクトでまたボールが円内に戻るように努力しなければいけません。上下にズレるのは不可。一見、スウィングでこの器具を打ってしまいそうに見えますが、打ったとすればそれは相当ひどいスウィングです。普通は全く問題ありません。
私が通っている市営ゴルフ場付属練習場は地面が固く、針金を深く差すことは難しい。そこで、地面にポンと置けるようにしました。重しとして使用済み乾電池二個を使っています。これなら、日本のマット式練習場でも問題なく使えます。
難点としては、ボールの位置を固定しない限り、一球毎にこの器具をずらして円にボールが納まるようにしなければならない点です。自動的にボールがティーアップされるタイプの練習場だと最適でしょう。
(January 08, 2004)
'Long and the Short of It'
by Andy North with Burton Rocks (Thomas Dunne Books, 2002, $24.95)
1978年と1985年の二回U.S. Openに優勝しているにもかかわらず、Andy North(アンディ・ノース)の名はあまり知られていません。彼はいま、CATVのスポーツ・チャネルESPNにおいて、ゴルフ中継の解説者として活躍しています。紳士的な顔立ち、穏やかな声音、真摯なコメントが特徴です。
「練習場では、先ずストレッチングすること。誰でもその重要性は知っているが、しばしば無視される手順である。ストレッチングを怠ると筋を違えたりし易い。
練習場で最も大事なのはウェッジだ。ウェッジは力一杯振るものではないから、ストレートに打つことと、正しいリズムとテンポを保つことを身体に教えることが出来る。
練習では全てのクラブを使用して、クラブによる好き嫌いを無くす。ドライヴァーや3番ウッドに到達するまでに身体をほぐす。そのためにも、ロフトのある短いクラブからの練習がベストである。
時として、あまりにも力一杯振り過ぎていると思われることがある。そういう場合、私は7番アイアンを手に、リズムの再構築を図る。リズムが蘇ったら、一個か二個のボールをドライヴァーで打つ。
多くの人がクラブを目一杯強く振りたがる。これは人々が練習場でドライヴァーばかり使うからだ。私の助言は、いいリズムを確立するまで短いクラブを使いなさいというものだ。その後はドライヴァーでも3番ウッド、5番ウッドでも構わない。
そして、練習をいつ止めるかも大事なことである」
(January 14, 2004)
ある日、練習場で黒人の中年男性が練習器具を使っているのを見掛けました。Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)がTVで宣伝している'Inside Approach'(インサイド・アプローチ)で、右の写真のようなものです。ウレタン・フードを装着したゼンハイザー・マイクロフォンという感じ。この部分に触れないようにしてボールを打ちます。
黒人男性の説明によれば、「インサイド・アウトのスウィングしか許して貰えない。アウトサイド・インとか手打ちでトップから打ちに行く場合はウレタンの部分をヒットしてしまう。おかげでボールが真っ直ぐ飛ぶようになった。これはいい投資だった」ということでした。
結構ウレタン部分が長いので、正しいインサイド・アウトか、ベラボーに低い軌道でボールに到達しなくてはならないようです。しかし、これが$80.00というのは高い。eBayを見ると類似品がいくつかあります。
私も類似品を作ってしまいました。Tom Watson(トム・ワトスン)の「ヘッド上下運動矯正装置」は試してみられたでしょうか?あれにちょいちょいと付け加えるだけで、$80.00を節約出来ます。ボール紙を幅2.5cm、長さ35〜40cmほどに切り「ヘッド上下運動矯正装置」の輪っかに引っ掛けます。左の写真が完成図(と云うのも大袈裟ですが)。ボール紙はターゲット・ラインに揃え、ボールはボール紙の(左方の)真下に置きます。
アウトサイド・インや手打ちで“この道ウン十年”という方は、すぐボール紙を破壊してしまうでしょうが、ドライヴァーを破壊するよりはましだと考えなくてはいけません。こういう方はボール紙を数十本まとめて切っておくことをお勧めします。
(January 19, 2004)
インドネシアで働いておられる渡辺さんからの現地リポートです。なかなかタフな土地柄らしく、フロンティア・スピリットが要求されるようです。
約2億8,000万人もの人口を抱えるインドネシアは、よく皆さんご存じのバリ島、ジャワ島をはじめとする1,000の島々からなる南国の国です。人口の90%以上がマレー系で残りが中国系、ごくわずかなインド系という人口比率になっています。
気になる物価の方はと申しますと、使用通貨はルピア(Rp) 現在 US$1.00=8,400Rp。1円=78Rp程になります。私の仕事場は工場にありますので、工員さんの給料を例に取りますと、賃金は、残業入れて月US$100位です。法定最低賃金は地域、業界によって違いがありますので、多少の違いは出てくると思います。たばこが90円くらい、ガソリンが1リッター23円くらいです。
さてゴルフについてですが、バリ島をはじめとするリゾート地や、首都ジャカルタ周辺のゴルフ場はきれいに整備され、スタッフ、キャディーの教育も良くされているそうですが(プレイフィーも結構な金額だそうです)、残念ながら私はパレンバンというスマトラ島にある地方都市に住んでおりまして、バリやジャカルタのゴルフ場でプレイしたことがありません(パレンバンでゴルフを始めたのです)。私のホームコースであるパレンバンのゴルフ場は、その昔オランダ人が石油開発に来ていた時に福利厚生設備として造られたそうで、現在も石油公社の経営で運営しています。プレイフィーは土日でビジター1,800円ほどになります。ところが公社の経営の為、警察、軍人がはばをきかすインドネシアでは、彼等はプレイフィーは支払わずわがもの顔でマナーなど関係なくプレイしています。知人によると、こんなことはパレンバンのみで、ほかの民間のゴルフ場では絶対あり得ないといっていましたので、特殊な環境にあるゴルフ場だとあきらめています。
肝心のコースはと言いますと、距離はバックティーで5,959メートル(6,517ヤード)、レギュラーティーで5,745メートル(6,283ヤード)とそれほど長くはないのですが、ジャカルタなどでプレイされている人によると、まるで全英オープンの会場みたい…というのは大げさですが、フェアウェイともラフともつかない整備不十分なフェアウェイ。でこぼこして読めないラインのグリーン。雨期ともなるとナイスショットしたにも関わらず着地したボールが地面にめりこんで探し出せずにロストボール、と難易度は高いコースです。
カートですが、コースへの乗り入れは自由です。なんたってカート道がないのですから。しかしこのコースはなんとカートは二台しか所有していないのです。私は過去一年(白状しますが私は初心者でゴルフを始めて一年です)動いているカートを見たことありません。カートフィーは一回約640円だそうです。このコースでプレイする人はすべて歩いています。ゴルフ道具はキャディーが担いで歩き、プレイヤーも歩きます。まるでPGAツアーみたいですね。たまに万歩計をつけてプレイするのですが、結構な距離を歩くので、体力がついてそのうち飛距離なども伸びてくるのではないかと期待しています。
私としては、このようなゴルフ場で鍛えてそこそこ上手になれれば、条件の良い他のゴルフ場でプレイしたら結構なスコアーでプレイできるのではないかと密かに期待しているのであります。
以上、インドネシアの極地的なゴルフレポートでした。
【おことわり】画像はhttp://cepamagz.comにリンクして表示させて頂いています。
(January 21, 2004、改訂January 03, 2017)
この記事の筆者はPGAプロ(コーチ)。いいスウィングをするには、正しいポスチャーが不可欠。一般ゴルファーのポスチャー面の問題点は、胸周りのこわばり、弱い腹と腰の上部で、これらが身体のスムーズな回転を妨げてしまうのだそうです。
'A Simple Stretch'
by Michael Girardi ('Golf Illustrated,' Fall 2003)
写真Aのようにストレッチ・ボールに上半身を乗せ、両腕をだらりと垂らす。1分で始め、慣れたら3分に伸ばす。これを週に三回行う。「このトレーニングにより上半身が自由に回転し、正確にボールが打てるようになる」とのこと。
これは子供に背中に乗って貰うのと同じような心地よさが得られます。ラウンド前にやると、背中がピンと伸びた美しいアドレスが出来るような気がします。
ある夜、これをやっている夢を見ました。夢ですから(実際にはボールに乗ってなくて)ただ一分間数を数えてるだけ。こんな超簡単トレーニングなのに、さらに楽をしようという自分に呆れ果てました:-)。
'Make It a Habit'
by Randy Myers with Ron Kaspriske ('Golf Digest,' March 2003)
この記事の筆者はPGAツァー・プロ80人以上を指導しているフィットネス・ディレクター。写真Bのようにストレッチ・ボールに上半身を乗せ、何か重い物を両手で掴み、両手を伸ばして“起き上がり腹筋運動”をします。これは腹部、両肩、両腕、そして腰の強さと柔軟性を生む運動だそうです。
どちらも手軽で、過酷な運動ではありません。
【註】写真Bのトレーニングで足先をベッドや長椅子の下にかけたりするのは危険です。フィットネス運動器具にはそういうものもありますが、腰への負荷が強くかかり過ぎ、腰を痛めてしまう恐れがあるそうです。
(January 25, 2004)
筆者Peter Kostis(ピーター・コスティス)はPGAツァー参加後インストラクターに転じ、現在はCBS-TVゴルフ中継の解説者の一人。
'Practice 'one-ball success' patterns
by Peter Kostis ('Total Golf,' Time-Life Inc., 1998)
「上達への鍵は単に努力するのではなく、目的意識を持って努力することだ。練習場で三時間も四時間も時間を費やす人々は、自分は努力していると自分に思い込ませているだけである。20分、30分でも時間を建設的に用い、常にターゲットを決め、特定のショットを打ったり、ボールの軌道を視覚化したりするなど、目的がハッキリしていれば長時間の練習に優るものとなる。
チップの練習では、多くのゴルファーは同じ距離から同じターゲットに向かって1ダース以上のボールを打つ。最後にはピン傍に寄り、あたかも進歩があったように見えるだろうが、それは実戦には通用しない幻想である(本番では一球しか打てないからだ)。
私はボール一個をベースにした練習を勧める。一個のボールを一つのピンに打ったら、次のボールは他のピンを狙う。あなたは常に距離感や地形の影響を塩梅しなくてはならない。チップが済んだら、ボールを一個一個カップに沈める。これによって、本当のラウンドでの寄せワンに自信が持てるようになるだろう」
(January 25, 2004、増補June 01, 2015)
スポーツ心理学者Dr. Deborah Graham(デボラ・グレアム博士)のインテリ・ゴルファーへの戒め。
'The 8 Traits of Champion Golfers'
by Dr. Deborah Graham and Jon Stabler (Simon & Schuster, 1999, $25.00)
「抽象的に物事を考える人の知性は、状況について考え過ぎる傾向が強いため、簡単に当人をトラブルに陥れてしまう。たとえばグリーンでありもしないブレイク(曲がり幅)を見たり、ミス・ショットを過度に分析したり、必要も無いのにスコアを勘定したり、自分の順位を推定したりすることに時間を費やしてしまう等々。
あなたが知的であればあるほど、ショットとショットの間で雑念を洗い流し、単純にボールに向かい合うことが重要だ。抽象的思考は遺伝の影響による能力なので、それがいい悪いの問題ではない。私達は知的ゴルファーには思考を単純にし、ボールに向う時には無念無想になることを勧める。抽象的思考が苦手な人には、コース戦略、落とし場所、クラブ選択などのプランをよく練るように勧める。
完璧主義者にとって何かが完璧に行なわれないことは、欲求不満、怒り、落胆を導く古典的公式である。ゴルフでは一生懸命の努力が常に完璧なプレイにつながらないことを知るべきだ」
(February 03, 2004、増補June 01, 2015)
'Golf for Teachers and Their Students'
by Stanley L. Shapiro (Stanley L. Shapiro, 2002, $19.95)
Stanley L. Shapiro(スタンリー・L・シャピロ)は、PGAとは別の組織であるUSGTF(U.S.ゴルフ教師連盟)に属しているコーチ。彼の本はスウィングに関するテキストなのに、10頁もルールの要点について書かれています。ですから、彼は厳格にルールに則ったラウンドを第一義に考えているのですが、以下は世にも珍しい“掟破り”のラウンドの勧めです。
「私は真剣なラウンドではルールに従ってプレイする。しかし、練習ラウンドあるいは純粋に楽しみのためのラウンド(以下、非公式ラウンドと略)ではエンジョイすることが最優先であり、ルールは適宜変更可能であると考える。
1. 非公式ラウンドでは、時間の節約のためボールを探さずドロップする。
2. 短いパットはOKする。
3. ダブル・パーを上限とし、その打数に達したらボールを拾い上げる。
4. 公式競技で失格となるような罰則を、非公式ラウンドでは適用しない。
5. ルールではストロークの省略を禁じているが、片方がパーで上がっているのに、もう一人に11打目のパットをさせても仕方がない。拷問して楽しいわけはない。
6. 非公式ラウンドでは違法クラブを使ってもいい。違法クラブを使う人は、そもそも距離が出ない人である。
7. カートでラウンドする場合は14本以上のクラブを携行しても構わない。キャディなら重くて泣くだろうが、カートは悲鳴をあげたりしない。
8. ボール位置やライを変えてもいいと思う。無理して木の根っこから打って、クラブや手首を痛めるなんて馬鹿げている。
9. 黄色の杭があるところで水難にあった場合、向こう岸から打ってよい。ボールを失くすのは一個で十分だ。
10. 非公式ラウンドでは、プレイヤーの腕前に準じてプレイすべきである。ラフやバンカーの練習をしていない人に、同じ場所で何度も何度も打たせるのではなく、二度か三度の失敗の後は“ハンド・ウェッジ”でグリーンに投げさせることを勧める。
11. 非公式ラウンドでは、スコアをつけない方がよい。実行能力の進歩があったら、ルールに従ったラウンドでスコアをつけ、また楽しみのためのラウンドに戻って一段上の実力をつけるようにする」
(February 19, 2004)
私が住んでいる町のローカル紙に、ある主婦がPGAツァーに挑戦する夫のキャディを勤めたという体験談が載りました。夫のJake Narro(ジェイク・ナロ)は当地の出身で、現在はニュー・オーリンズに住んでいます。彼はPGA of America(コーチの組織)が主催した2002年「メキシコ湾岸地区」のトーナメントで優勝し、いくつかのPGAツァーに参加出来る資格を得ました。彼はPGAツァーへの三回目の挑戦として、2003年10月にミシシッピ州で開催されたSouthern Farm Bureau Classicへの出場を決意します。以下は彼の妻Amber Narro(アンバー・ナロ)による手記の概略。【写真はHenrik Stenson(ヘンリク・ステンソン)とキャディ・Fanny Sunesson(ファニィ・スネッソン)】
'The WifeCaddy is Born'
by Amber Narro ('The Meridian Star,' February 26, 2004)
「夫のキャディが電話して来て『都合がつかない』と云った。夫の友人たちも都合がつけられなかった。
私は大胆にも『私がやる』と云った。夫はものが云えない感じだったが、彼は選択の余地が無いことを認識していた。
私は自分が何てことを口走ったのか、後になって実感した。私がキャディをしたのは、ある練習ラウンド一回こっきりであり、これまでの人生で25ホールぐらいしかプレイしたことがなかったのだ。私はどこに立っていたらいいの?どう行動すればいいの?何を云ったらいいの?いつ話すべきなの?分らないことだらけだった。
トーナメント会場に向かう車中、私は想像出来るあらゆる問題点を夫に尋ねた。夫は笑い通しだったが、道半ばにして神経質になり、向こうに着いたらせめてウッドとアイアンの区別がつく人間を探そうと決意したようだった。
夫の友人Mike(マイク)が私と話をしたがった。彼は『旦那にガミガミ云うな』と云い、私に17回も誓いの言葉を云わせた。Mikeは夫に対しては『奥さんにガミガミ云うな』とは云わなかった。
コースで、夫の父が私たちと昼食を共にした。義父は『伜がアマチュア・サイドにミスしないように注意してくれ』と私に云った。ン?アマ…何ですって?私は、これからやろうとしていることについて全く無知である事実を痛感したが、それを義父に悟られたくなかった。『大丈夫』と私は答えた。
初日、No.1ティーで私は何人かの人たちと握手した。キャディはショート・パンツだからすぐ見分けがついた。前夜の11時過ぎに夫が『キミはショート・パンツを履いちゃいけないんだ』と云い出し、私は急遽スーパーへ走って、ポケット付きのスラックスを買ったのだ。スラックス姿は私一人だけだった。
最初のプロがヒューッ!とティー・ショットを放ち、私は拍手した。夫は『我々は拍手しないんだ。"Good job."と云うだけだ』と云った。他の二人のキャディは、私がずぶの素人であることを知ったわけだ。夫はNo.1をバーディで上がったが、その後はひどいスコアになって行った。【編者註:この日は結局85となる】
夫はRick(リック)というキャディを紹介してくれた。Rickは人間も素晴らしく、キャディとしても抜群だった。Rickは私に『あんたはよくやってる』と云ってくれた。私は彼の“不正直さ”に感謝した。私は彼が"my player"(キャディは雇い主を"my player"と呼ぶ)の悲痛な状態から私を救ってくれたことが有り難かった。
私は“妻”と“キャディ”の二つの役割の狭間で当惑させられた。『慰めの言葉は要らない』と夫はぴしゃりと云った。私は(Mikeに約束したので)夫にガミガミ云わなかったが、本当は云いたかった。私の目に涙が湧いて来た。あなたのためにやってるのに!でも、私は泣かなかった。その夜、夫は彼の姉に『Amberは八回も唇を噛んでた』と云った。その通りだわよ。
私たちはもう予選通過は望めないと悟り、翌日は楽しくやろうと決意した。二日目、夫は出来が良かったものの、それでも予選通過には程遠かった。彼は折角のこの機会を私の研修に使うことにし、私に歩幅でヤーデージを測らせたり、風の向きを調べさせたり、なんとクラブ選択までやらせたりした。
9ホール目で夫はイーグルを達成した。ボールがカップに消えた瞬間、夫の母親が喚声をあげた。夫は私にキスしようとした。私は身を引いて、「私はキャディよ。忘れたの?」と云った。
初日もこの二日目のようだったら予選は通過出来ていただろう。しかし、いずれにせよ私たちはこの日79で上がり、83を叩いたJohn Daly(ジョン・デイリー)に勝ったのだ。私が“私たち”という云い方をしてるの、気付きました?ヘヘ。
その夜、レストランで夕食をしながら、私たちは一打一打について話し合った。私はゴルフについて喋っている自分の口が信じられなかった。ゴルフについて話し、聞き、それを楽しんでいた。私は泣き出してしまった。他のお客たちは私たちが別れ話をしていると思ったに違いない。夫はびっくりし、すごく優しい言葉をかけてくれた。『またいつかキャディをやってほしい。楽しいだろうな』と。私は信じられなかった。彼はまた私の夫に戻ったのだ」
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(February 27, 2004)
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