私の生徒の黒人少年Andrew(アンドルー、14歳)の欠点は、バックスウィング開始後、頭が沈んで行くことです。ボールに集中するのはいいのですが、身体が沈むと必ずダウンスウィングで身体は上昇します。短い時間に上がったり下がったりして、ちゃんとスウィート・スポットで打てたら名人です。当然、Andrewはダフったりトップしたり、忙しい変化を見せます。
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のアマチュア時代、コーチがJack Nicklausの頭の毛を掴んでスウィングさせ、沈み込みを矯正したそうです。「あれは痛かった」と、当人はまだ覚えているとか。その痛みが、以後数十年にわたって彼の身体の上下動を無くす役目をしたわけですから、これはいい特訓でした。
Andrewにもそのテを使いたかったのですが、彼は私より長身だし、髪は短く縮れていて掴みにくい。止むなく、私のクラブのグリップ先端を彼の額に当て、それからズレないようにスウィングさせてみました。しかし、髪の毛を引っ張るのと違ってちっとも痛くないため、グングン押して来ます。やらないよりはマシな特訓でしたが、やはり誰かが頭に触っているという異常感覚は拭い去れません。何らかの道具を開発したいと考えていました。
私の考案は常に安上がりをモットーにしています。
【材料】
ミニ・レーザーポインタ(一番安く小さい、キーホルダー式) $10.99 壊れた眼鏡(レンズ無し) $0.00 輪ゴム 二本 $0.00 針金(ケーブルを束ねたり、ゴミ袋を止めたりするもの) $0.00
私が購入したレーザーポインタのサイズは、長さ5cm、直径1.3cmという感じ。キーホルダーの部分を外して、弾丸のような形の本体だけにします。壊れた眼鏡はお祖父さん、お祖母さんのところへ行けば一杯ある筈です。現在眼鏡をかけている方はそれを使って下さい。ビームが見えなくては意味がありませんので:-)。
レーザーポインタを眼鏡の上部真ん中にセットし、輪ゴム二本をたすき状にかけ眼鏡に装着します。レーザーポインタは押しボタン式なので、これを押しっぱなしにする必要があります。ボタン上に針金を絡め、ボタンが押された状態になるまでねじり上げます。作業終了(極めて簡単)。
アドレスして、ボール位置近くにビームが届くようにレーザーポインタを調整します。ビームは日中屋外でも見えます。ヘッドダウン矯正器としては、テイクアウェイでビームが飛行線より下に移動しないようにスウィングします。完全に静止させようとすると「逆C」のギッコンバッタンになる恐れがあるので、飛行線後方に水平移動するのは可とします。完全無比な静止状態を得るには、顎を上げてアドレスする必要があります。
連続使用ですとバッテリーがすぐヘタります。練習場へ行く前に予備を買っておきましょう。
他の利用法としてはヘッドアップ防止(インパクトまでビームを見ている)とか、パッティングで頭を静止させるためなどにも使えます。
なお、これはUSGAの認可を受けていませんので、公式競技においては使用出来ません:-)。
(August 03, 2001、改訂January 07, 2019)
'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books, 2001, $22.95)
PGA Tourで1ラウンド59や60台前半など生涯最少スコアを達成したプロ達へのインタヴューをもとに、スポーツ心理学者Dr. Patrick Cohn(パトリック・コーン)がまとめ上げた「記録達成虎の巻」。当人の最小スコアは74だそうです。以下は本の最後に登場する「初めて80(あるいは70)を切るには」の要旨。
「生涯ベストのラウンドを記録するには、心構えと考え方をいくつかのステップ別に習得する必要がある。
【コースまでの道中】
・“期待”を一掃すること。ゴルフはミスをするゲームである。生涯ベストのスコアのために“完璧なプレイ”は必要ではない。79など特定の目標スコアを設定しないこと。その代わり、何回フェアウェイとグリーンを捉えるかを決める。7つのフェアウェイと8つのグリーンを捉えた場合81で廻れるとすれば、8つのフェアウェイと10のグリーンが目標となる。
【ウォーミング・アップ】
・練習場ではNo.1ティーやNo.1のグリーンを想定してボールを打つ。
・スウィング・キイはメカニクス関連ではなく、テンポ、バランス、リズムについてのどれかを選ぶ。単にターゲットだけを考えて、それに身体が反応する境地が理想的。
【第一打】
誰しもその日の第一打に神経質になるが、それもゲームの一部である。これに対処するには、次のどれかを用いる。
・自分が打ちたいショットを視覚化する。数回のスムーズな素振りをしながら、ターゲットに飛ぶボールを“視る”。
・何もしないで第一打を不安がっているのは最悪である。第一打から思念を遠ざけ、パートナーと会話をする。自分の番になったらプレショット・ルーティーンを慌てずに完了させる。いいショットを視覚化すること。
・その日の目標(【コースまでの道中】参照)をスコアカードに書き込み、何度も目に入るようにする。
・腹式の深呼吸をする。吸い込みながら肩を耳に届くまで上げ、吐きながら肩を下ろして緊張を解く。グリップも強く握り、リラックスさせ…を繰り返す。ガチガチのグリップは駄目。
・フェアウェイを捉えることに焦点を合わせる。第一打でバーディ(やボギー)を達成出来るわけではない。「いいショットを打つために必要なことは?」と自分に問いかける。
【序盤】
序盤は以後のラウンドへの"momentum"(勢い、弾み)と自信を決定する。
・ラウンド開始がパー、パー、バーディ、パーとなったとしても、まだ80(あるいは70)を切ることを考えるには時期尚早である。現在のショットに集中し、過去を振り返るな。
・自信過剰は、冒険的ショットに走ったりあまりにも攻撃的ゴルフになりがち。完璧なプレイでTiger Woods(タイガー・ウッズ)のような自信を感じたとしても、ゲーム・プランに固執し変更しないこと。
・80を切ることを目指すゴルファーが最初の9ホールで39を記録すると、次の9ホールで43を叩いたりする。スコアのことをあまりにも早くから考えると、快適領域への回帰が始まってしまう。
・スタートが平均的な成績であっても、後半目覚ましいプレイが連続して偉大なラウンドに変貌することがあり得る。私の例では、先ず最初醜悪な44を記録したが、続いて生涯最少の32を達成したことがある。
【中盤】
ラウンド中盤でややもすると眠ってしまうゴルファーがいる。集中出来ないのだ。本や映画でも最初と最後だけは鮮明に覚えているが、途中の記憶はぼやけている。中盤で集中出来ないのは人間誰しもが持つ傾向だ。自分の目標とゲーム・プランを再確認し、いいラウンドを殺さないようにする。39で廻った場合、いいラウンドを継続させるには、
・最初の9ホールのスコアを計算しないこと。いい出来であることは分っているわけだから、スコア・カードを眺めて確認する必要はない。スコアをつけるのは誰かに頼むとよい。
・前の9ホールを忘れること。ここからは新しい9ホールであり、またイーヴン・パーからのスタートである。
・ゲーム・プランにこだわる。
・攻撃的ゴルフになってもよいが、スマートなプレイが前提。
・残りの9ホールを3ホールずつに分割し、それぞれの3ホールで何をすべきか設定する。
・"momentum"(勢い、弾み)の徴候を探すこと。ロング・パット成功、パー・セーヴ、見事なティー・ショット、ラッキーなバウンス…などの"momentum"によって自信をつける。
【終盤】
・「今6オーヴァーだから、三つのパーと一つのボギーで79だ!」などと考えてはいけない。最終スコアを考えても現在のショットの助けにはならない。最後の4ホールをうまくプレイするには、ゴルフすることに集中し、質のいいショットに必要なことは何かを考えることだ。
・大事なのは自分の思念が間違った方向(結果)に行っていることに気付くこと。過ちに気付いたら直ちにストップし、目の前の仕事に集中するために必要なことは何か考える。
・ボギーを防止する努力の代りに、バーディや手堅いパーを取るべく攻撃的に挑戦する。
【練習法】
80(あるいは70)を切るにはショート・ゲームや特殊なショットのマスターが不可欠である。
・練習の75%をチップやパットに費やす。
・3パットが出る場合、タッチ(距離感)を掴む練習が必要。様々な方向からのロング・パットを試みる。
・コース戦略を練りあげる」
【参考】
・「Arnold Palmerの最初の三ホールの重要性」(tips_148.html)
・「Arnold Palmerの最後の三ホールの重要性」(tips_148.html)
・「クラチャン優勝への道」(tips_97.html)
・「80を切る!栄養学」(tips_5.html)
(August 05, 2001、増補May 24, 2015)
以下の金言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。
「いいショットは偶然であり、まずいショットはいい運動だと納得するまでは、ゴルフをマスターしたことにならない」
Eugene R. Black(ユージン・R・ブラック、銀行頭取)
「(距離より正確さが重要であることについて)郵便番号の無い航空便は絶対に目的地に到達出来ない」
Bob Toski(ボブ・トスキ)
「練習ラウンドはパンチ・バッグを打つボクサーと同じ。向こうが反撃して来ることは無い」
Chi Chi Rodriguez (チ・チ・ロドリゲス)
「ヒッティングは完璧なタイミングを必要とするが、スウィングにはタイミングが含まれている」
Grantland Rice(グラントランド・ライス、スポーツ・ライター)
「グリーンを読むというのは契約書の小さな文字を読むのと同じだ。苦労して読まないと、後でトラブルが待っている」
Claude Harmon(クロード・ハーモン、クラブ・プロ、"Butch"(ブッチ)の父)
「どのホールもパーには難しいが、ボギーには快適でなくてはならない」
Robert Trent Jones(ロバート・トレント・ジョーンズ、コース設計家)
(August 12, 2001、増補January 01, 2017)
'Play the Percentages'
by Mitchell Spearman ('Golf Magazine,' September 2001)
「常に同じ種類のボールでプレイすること。その感触、スピン、音、距離に慣れると、戦略が立て易くなる。練習グリーンでも使用球と同じ種類のものを使う。異なるタイプだとパター・ヘッドを離れる時に異なるリアクションを示す。
練習グリーンでは一個のボールだけ使う。数個使うよりもいいルーティーンを確立し易く、パット毎の集中心を鋭くする」
'A Game of (Less Than) Inches'
by Editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' June 2001)
「一度打たれたボールが元のように完全に丸くなるには、数ホール分の時間が必要である。あなたがハード・ヒッターだったり、一、二度トップした場合などは、特に復元に時間がかかる。丸くないボールは真っ直ぐ転がらない。適切にローテーションをすることが望ましい」
(August 20, 2001)
高知市にお住まいの内田さんからのリポートです。二週間にわたる夏休みお子様サーヴィス旅行の直後のコンペだそうで、優勝やベストスコアを狙うどころでなく、慎重にボールを運ぶことに努力されたのが良かったそうです。巻末付録【内田流寄せの秘訣】付き。
私はゴルフ歴七年で44歳。土佐カントリークラブをホームコースとし、月三回のゴルフのうち二回は月例などの競技ゴルフに参加しています。昨年、月例競技でB組優勝をし、ハンディキャップが12になりハーフの30台は時々記録。ベストスコアも81と何時70台が出ても不思議ではないと思いながら早くも一年。週三回は練習場に行き、月三回はコースに出ているにもかかわらず、最近の成績は103、90、89、84、96とイマイチ。子供が夏休みになり、恒例の家族旅行に出発。帰って来た三日後、8月19日(日曜)のコンペでした。台風11号が明日にも高知に上陸との予報でしたが、当日は曇りでそれほど風も強くなく、逆に暑さをしのげて絶好のゴルフ日和。
このコンペは私が所属するロータリークラブの親睦コンペで、同伴競技者は毎週木曜日に昼食をご一緒するメンバーです。場所はこのコンペでいつも使用する高知ゴルフクラブ正連寺コース。私にとっては珍しくレギュラー・ティからのゴルフです。このゴルフ場は高知県では一番最初に出来たコースで、距離は短いですがトリッキーなコースです。普段は3日以上クラブを握らない日が無いというのに、今回は20日以上も全くクラブに触っていなかったので、まともに当たるだろうか実に不安。奥さんにも「今回は賞品は期待しないでよ」と言って出かけました。
コースにはいつもの様に一時間半前には着き、普段は練習ボールを一箱の処を二箱購入。 6番アイアンだけを練習しました。心配した通りまともな当たりは出ません。こんなものだろうと気負らずにスタートしました。今振返るといつもコースに着くと「今日こそは70台!」と貴重品ロッカーも77とか78、79番を選んでましたが、この日は163番。全く70台の予感はありませんでした。
イン・スタートで出だしの10番。セカンドは右奥のバンカーへ。これが上手く2mに寄り 1パットのパー。11番はティーショットが右に吹けラフにある木に当たってフェアウェイに戻るラッキー。セカンドはショートしたもののエッジから寄せてパー。12番もセカンドをショート。手前のガードバンカーへ。2パットのボギー。13番ロングはティーショットを引っ掛けて左のフェアウェイバンカーに。7番で打ったセカンドは前の土手に当たって50ヤードも飛ばず、残りは210ヤード。これをスプーンで打つと何と1.5mにオン。1パットでバーディ。
こんな状況でここまでイーブンパーもショットは右へ左へ、はたまたオーバー、ショートとぼろぼろ状態。果たして次の14番ショートも右に外して1オンならず。この日は午後も含めショートホールは全て1オン出来ませんでした。ショットはこんな状態だったので、この日は13番以降はロングホール以外はティーショットにドライバーを使いませんでした。その後このハーフ終了までは2ボギー、1バーディーで37。
食事時も一緒に回ったこのコースをホームコースとしている三井生命の支店長が、ハンディ29にも拘らず42で回って来たので優勝確実とその話題で持ちきりで、私はショットがぼろぼろだったこともあり特に話題にもならず午後のスタートに。
1番ホールはロング。久しぶりにドライバーを振ると思ったより良い当たりで普段より15ヤード程長く飛んで左のセミラフ。ここからこの日は唯一絶好調のスプーンを振ると、グリーンエッジの手前に。これを寄せて1パットのバーディー発進。その後6番ロングでドライバーをOB、トリプルとするも後のホールはドライバーを使わず3ボギーに抑え41。念願の70台、78で回ることが出来ました。
コンペは後半51で回った三井生命支店長が優勝。私も6アンダーで準優勝でした。このコンペでは次回からなんとシングルハンディになります。
何処が良かったのかを振り返ると、先ず第一に気負いが無かったこと。元々今日は成績が良い訳が無いと思う状況でしたし、ショットがばらばらだった事もあり、今の自分の成績より目の前の球をどう打とうかしか考えなかったことがあげられます。次に、グリーンを外すことが多かったものの、概ねエッジから約5m近辺に到達していたことです。実はこのグリーンから5m以内の寄せには自信があるのです。悪くても3ヤード以内、良ければチップインも含め1パット圏内には寄せられます(詳細後述)。この事も初の70台達成の原因にあげられるのではないでしょうか。どちらにしろ私にとっての「80を切った、その日」は予想もせず不意に訪れました。
【内田流寄せの秘訣】
キャリーが一定(5m)のチップ・エンド・ランです。使うクラブは主にLW、SW、AWです。球の位置は右足より少し外。身体の外になります。この位置に球を置くとリストの動きを制限出来るため、ヘッドがボールに当たる位置も強さも一定になります。グリップは通常の位置。身体は少しオープンに構えます。真っ直ぐに30cm程引いてヘッドを落とし、フォローも30cm。そうするとLW〜AWまではボール位置からキャリーが約5m(一定。私の歩測で6歩)、平坦なグリーンではキャリーとランを合わせてLWでは10歩、SWで13歩、AWで16歩になります。
<-- Carry ---><-- Run ------------> (6歩、一定) |-1-2-3-4-5-6|-7-8-9-0| LW(ラン4歩、計10歩) |-1-2-3-4-5-6|-7-8-9-0-1-2-3| SW(ラン7歩、計13歩) |-1-2-3-4-5-6|-7-8-9-0-1-2-3-4-5-6| AW(ラン10歩、計16歩)
《例》エッジから1mにボールがあり、エッジからピンまで12歩(計13歩)だとSWを選択し、落し所はエッジからピンの方向に向かって4m(ボール位置から計6歩)のグリーン上になり、そこからランが6m(7歩)ということです。
LW〜AWまではキャリーが一定ですから、PWやAW一本を使って振り幅で距離感を出すよりもずっと正確になります。
ピンまでの距離が長い場合、PW、9番、8番を使います。しかし、PW以上はキャリーが7〜8歩となり、ランの距離も少し不確実になります。キャリーとランを合わせてPWで20歩、9番で25歩、8番だと約30歩です。
<-- Carry -----><-- Run --------------------------------------> (7歩+α、一定) |-1-2-3-4-5-6-7|-8-9-0-1-2-3-4-5-6-7-8-9-0| PW(ラン13歩、計20歩) |-1-2-3-4-5-6-7|-8-9-0-1-2-3-4-5-6-7-8-9-0-1-2-3-4-5| 9 Iron(ラン18歩、計25歩) |-1-2-3-4-5-6-7|-8-9-0-1-2-3-4-5-6-7-8-9-0-1-2-3-4-5-6-7-8-9-0| 8 Iron(ラン23歩、計30歩)
後はパターと同じように、上り下りやその日のグリーンの速さを考えます。落ちて転がり始めるときはパターより勢いがあるのでラインは薄めに(曲がりを少なく想定)。止まる寸前にはスピンが掛かっているので大きく曲がりますが、私は曲がる前に入れようとラインを薄めに狙います。奥からの下りのラインではパターより距離感が合うかも知れません。
大事なのは、ピンまで20歩以内ならピンが狙えるということ。なおLW〜AWでは必ず約5mの所に落ちるので、ラインが読み易いと言う事があげられます。私はパターの時は歩測はしませんが、チップの時は必ず歩測をします。少しのラフや、裸地からでも同様に転がります。ボールがエッジから5m(6歩)より離れている場合や、5m以内でも深いラフやディポットの跡にボールが沈んでいる場合は使えませんが、それ以外では非常に有効です。
ものの本に書いてあるように球の位置を右足の前に置くと、手の自由が利きすぎ振り幅が一定しないので、落ちる位置がばらばらになります。
他の方がウェッジ一本とパターだけ持ってグリーン周りに歩いて行く時に、こちらは数本担いで行く事になるかも知れませんが、それに見合う成果が得られます。試してみて下さい。
(August 23, 2001)
'Teacher's Edition'
by Kevin Morris with Rick Maltino ('Senior Golfer,' August 2000)
Kevin Morris(ケヴィン・モリス)はThe PGA of America(コーチ、レッスン・プロの組織)のディレクタです。そういう人ですから、プロのレッスンが最良であるという方向へ水を引くのは当然です。しかし、なかなかいいことを云うので参考になります。 「生徒のスウィングを変えるのに、たった30分とか一時間のレッスンなんて無茶苦茶だ。ピアノの先生はずっと利口だ。ピアノの稽古は一年の契約で、毎日練習するのが当然、そして誰もが基礎から叩き込まれる。ゴルフもそうあるべきだ。 トップ・プロのプレイを見ていると、ゴルフはいとも簡単に見える。イージーで、運動神経も必要なさそうだし、体格、体型も問題にならないように見える。しかし、他のスポーツに較べ、ゴルフは接触点が非常に小さく、失敗の確率がかなり高い。ツー・ストライクというのは無いし、セカンド・サーヴという逃げ道も無い。一打勝負であり、初めての一撃で完璧にやり遂げなくてはならない。 グリップにはVがどこを指すかとか、実に色んな理論がある。しかし、グリップはプレイヤーによって異なるものだ。David Duval(デイヴィッド・デュヴァル)のグリップはTiger Woods(タイガー・ウッズ)には当てはまらない。『ツァー・プロの真似をするな。自分に適したスウィングを見つけろ』と云いたい。 どのレヴェルのゴルファーをとっても、これは欲求不満が残るゲームだ。1ラウンドで思い通りに打てることはたった5〜6回に過ぎない。ベストなプレイヤーというのは、最悪のショットをしてもいいスコアに変えられる人だ。 TVというのは助けにならない。7アイアンで180ヤードとか打つのを見ると、一般ゴルファーもその位打たないといけないのかと思ってしまう。Ben Hogan(ベン・ホーガン)は7アイアンで140ヤードだった。トップ・プロと比較するのは無意味だ。TVで参考になるのは、プロのスウィングではなくルーティーンだ。どうプレイするかを観る。 |
メンタル面の問題点は、今日役立ったものが明日も役に立つとは限らないことだ。多くの人々が毎回ホームランを打ちたがるが、そんなことは起り得ない。
私は"tip"という言葉が嫌いだ。それは救急薬を意味していて、生涯にわたる変更ではない。ワン・シーズンとか一年とかコーチにつけば、コーチはいわばあなたの一部となり、どのラウンドにおいてもあなたの指針となるだろう。一人で学ぶには、ゴルフは難し過ぎる」
(September 17, 2001)
ショ−トゲーム専門インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)によるスポーツ感覚養成法。
'Feel--What it is, and How to Learn it'
by Dave Pelz with James A. Frank ('Golf Digest,' October 2001)
「感覚は天与のものではなく、学ぶことが出来るのだ。バスケットのMichael Jordan(マイケル・ジョーダン)、フットボールのDan Marino(ダン・マリノ)、アイスホッケーのWayne Gretzky(ウェイン・グレツキィ)、彼等はその道のベストだ。しかし、ゴルフでもベストの感覚を所有しているとは云い難い。感覚が天与のものなら、どのスポーツでもベストの域にある筈だ。それぞれの種目において、感覚は学び、修得するものなのだ。
勿論、安定したメカニクス(スウィング動作)が必須であり、感覚はそれを土台に養われる。日々異なるスウィング、異なるストロークをしていて感覚を養うもへったくれもない。感覚を養う準備が出来ているかどうかは、次のように調べる。パターにインパクト・テープかタルカム・パウダーを塗布し、20フィート(約6m)のパットをし、十回のうち八回は同じ一点で打っていないと、まだ感覚を学ぶレヴェルに達していない。先ず、安定したストロークを身につけるべきだ。同じことはウェッジでも云える。ボールとの安定した接触が必要だ。
感覚を養う重要な要素の一つはプレショット・ルーティーンである。私が提唱するのは"See it, feel it, do it"(見て、感じて、実行する)というものだ。先ず、心の目で望ましいショットを“見る”。次にそのショットを導くスウィングが感じられるまで素振りをする。どの種類のショットでも感覚は大切だが、特にウェッジ・プレイとパッティングで重要だ。グリーンの状態はショート・ショットの着地や転がりに大きな影響を与えるので、感覚の有無が問われる場面であることは疑う余地が無い。
ピッチ・ショットにおいては、感覚が望ましいスウィングを創り出すまで時間をかける。脳が「それだ!それが完璧!」と云うまで数回の素振りをする。一回毎にホールを見ること。スウィングの結果を想像する。ボールがどう飛行し、どこで着地し、どうホールに転がるか。
完璧な練習スウィングを感じることが出来たら、アドレスに入り、一度だけ着地点を見て、スウィングする。あなたが“見た”通り、完璧と感じた通りのスウィングを、記憶と知覚がまだ活き活きとしている間に実行する。練習スウィングと本番の間に8秒以上空けてはいけない。感覚が薄れてしまうからだ。以上のプロセスはパッティングでも同様。
【パットの感覚を養う練習法】
一打おきにバックストローク開始と同時に目を閉じる。ボールが転がってから七つ数える。目を閉じたまま、パットがどういう結果になったか感じる。オーヴァーしたか、ショートか、ホールからの距離も感じ取る。
(September 26, 2001、増補May 31, 2015)
'The Short Game Magic of Tiger Woods'
by John Andrisani ('Three Rivers Press,' 1998, $12.00)
これはTiger Woodsのパッティング・メソッドを分析した記事です。メイジャー連勝前のTigerで、一寸古いヴァージョン。
「Tigerのパッティング・グリップはオーソドックスではない。ポピュラーなリヴァース・オーヴァラップ・グリップではあるが、その変形である。左の人指し指を右の小指に被せる代りに、右の薬指、小指の二本を覆っている(原文では「左の人指し指で左の薬指、小指の二本を覆っている」となっていますが、これは不可能で完全な誤り)。 コーチButch Harmon(ブッチ・ハーモン)がしょっちゅうチェックするのは、Tigerの頭がボールの真上にあるかどうかである。 パットの直前にTigerは数回の呼吸をする。インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)によれば、それは日本では“座禅の呼吸”として知られているものだそうだ。鼻と口両方から息を吸う。呼吸のコントロールは神経を落ち着かせ、集中心を助けてくれる。 Tigerのストロークを一言で云うなら、手首が無いかのように真っ直ぐな手で、振り子運動の往復をすることだ」 'How to Putt Like Tiger' これは現在のスランプに陥る前、メイジャーに連勝していた頃のTigerです。 「Tigerはオーソドックスなリヴァース・オーヴァラップ・グリップでパットする。左手首はストロークの間中、真っ直ぐ伸びたまま、折れることはない。 アドレスでの体重は55:45の割合で左サイドに多め。Tigerの足の巾は、若干狭めである。気持ちオープン・スタンス。 |
両目はボールの真上にある。これはTigerのパッティングの鍵の一つだ。
Tigerのストロークは振り子運動である。
ボール位置は、左足甲の2インチ(5cm)右側である」
'Tiger Tips'
by Tiger Woods ('Golf Digest,' March 2000)
これは御本家による最新のコメント。
「私はリヴァース・オーヴァラップ・グリップを、両方の指が真っ直ぐ地面を指すように握る(写真では、左の人指し指は薬指に掛かっています)。
どちらかと云えば緩めに握る。1〜10の尺度で、10が超きつめだとすれば、真ん中の5ぐらい。緩めのグリップはテンションを和らげ、パターヘッドの動きを強制させずに済む。
自由度が高く自信に裏づけられたバックストロークでは、ちょっぴり右の手首が折れるのを許す。フォワード・ストロークではパターヘッドを十分にリリースするので、手は身体の左サイドを越える」
(November 22, 2001)
本格的にパッティングに取り組もうとすると、誰しもが何か練習器具を買いたくなります。しかし、一寸待って下さい。練習器具にも色々ありますが、どれも目標となるカップが問題です。簡単なものから高価で複雑なものまで、全てカップ周辺は盛り上がっています。床を凹ませたり絨毯を切ったりするわけにはいかないので、当然器具を持ち上げなくてはなりません。ボールが戻って来る仕掛けなどがあるタイプは、相当海抜が高くなっています。つまり、これらで練習出来るのは上りのパットだけということになります。
まあ、上のような道具も方向性を身につけるものと割り切れば、あっても悪くはありません。しかし、現在の私のように距離感をマスターしようとする場合には、練習していても「本当にこれでいいのか?」という疑念が去りません。カップに入ったとして、本当はどれだけオーヴァーする勢いで打ったのか分らないからです。
やはり、パッティングの練習は平面ですべきだと思います。特に、距離が焦点の場合には。
そこでカップ大に切った紙を置くだけにしました。これだとカップを通過してもミスしても、どこまで届く強さだったのか明白になります。カップの直径は4.25インチ(10.8 cm)です。只の紙ですと歩いただけで舞い上がったりしますので、薄いプラスティックがいいようです。手元にあった薄いプラスティックは半透明だったので、白いペンキを塗りました。
私のあるゴル友が「ひょっとしたら、あんたはスウイート・スポットで打っていないのかも知れない」と指摘したので、目下スウィート・スポットでヒットする訓練をしています。パターに付けた輪ゴムは、約2cm離してあります。スウイート・スポットを外すと、ヘニャッという打感と共にボールはあさっての方向に進むので必ず判ります。
毎度ながら、両方共無料で完成する練習道具でした。
(November 24, 2001)
'Corey Pavin's Shotmaking'
by Corey Pavin with Guy Yocum (Pocket Books, 1996, $14.00)
最近のCorey Pavin(コリィ・ペイヴン)は低迷気味ですが、この本が出版された前年にはU.S.オープンに優勝し、Ryder Cup(ライダー・カップ)でもアメリカの有力選手として活躍していました。距離が出ない代り、彼のショート・ゲームは絶品とされています。
「パットが良くてスコアが悪いということは先ず無い。パットが下手だと、期待出来るのはハイ・スコアだけである。
長いパットでは最少限の手首の折れは許容範囲だ。しかし、短いパットや中距離のパットでは絶対に手首を折ってはならない。手首を折ってしまうと減速を促し、パター・フェースの向きを台無しにする。
手首でパットしないとなると、仕事をするのはどこか?両腕と肩である。それらが作る三角形を保ちながら、バックストロークとフォロースルーを行なう。これが実行出来れば、アドレスした状態に戻ってインパクトを迎えることが容易になる。
さらにもう一つ。両腕とシャフトが作るYの字を保つことも重要。これを崩すと、スピードも方向もコントロールが難しくなる。
スリー・パットは不注意以外のなにものでもない。長いパットでは、ラインよりも距離を重視すること。
パットがOKされたら、素直にボールを拾い上げること。アマチュア同士だと、入るかどうかきわどい距離もOKしがちである。ショート・パットの失敗は影響が大きい。スコアへの影響だけでなく、メンタル面でショックを与える。
アッパーにストロークするか、ダウン気味にストロークするかは議論の分れるところだ。科学的に証明は出来ないが、私にとってはダウン気味の方がボールがよく転がる。ボールがジャンプするということもない」
【編者註】Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のtipに、「ボールを打った後、進行方向の地面にパターをトンと置く」というのがあります。これも、低めのストロークを推奨しているわけです。
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(November 29, 2001)
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