'How to Build a Classic Golf Swing'
by Ernie Els with Steve Newell (HarperCollins Publishers, 1996, $27.50)
Ernie Els(アーニィ・エルス)は自分で"Classic swing"(クラシック・スウィング)と称している通り、何も特別なところの無いスウィング・メソッドです。特別なのは有名なそのリズムです。"Easy"(楽)で"effortless"(努力しているように見えない)という形容詞が付けられています。このリズムは本からは学べません。彼の説明では、「あなたが早口で喋る人ならOne、twoのリズム、ゆっくり喋る人ならOne、two、three」だそうです。
この本で学んだ最大のTipは「バックスウィングのトップでターゲットに背中を向ける」というもの。「背中を十分に廻せ」という表現はよく見かけますが、「ターゲットに背中を向ける」というのは初めてでした。やってみると、最初はとても恐いのです。ボールから遠ざかるのが恐い、ターゲットから遠ざかるのが恐い…ということで、これまで十分に背中を廻さず、中途半端なところで止めていたことが分ります。その分、左肱を曲げて、あたかも十分なバックスウィングのようなフリをしていたということでもあるでしょう。こういう人間にとっては「ターゲットに背中を向ける」というのは、一種自虐的なアクションです。しかし、この自虐的な行動がいい結果(飛距離)をもたらすと、これは喜びに変わります。いい結果をもたらさない場合は、トップで左腕が伸びているかどうかがチェック・ポイントのようです。戦国時代では「敵に背中を見せては恥」だったわけですが、ゴルフではどんどん敵(ターゲット)に背中を見せた方がいいということですね。
プロ達の「インパクト寸前までコックをほどかずにダウンスウィング」というのは驚異ですが、Ernie Elsは「ダウンスウィングで左肩を顎から離す」と表現しています。腕や手を動かすとアンコックしてしまうので、肩を下ろすだけにするというものです。実行は大変難しいのですが、これならトップから打ちに行く弊害(早めのアンコック)を無くすことが出来そうです。
Ernie Elsの「飛ばす秘訣」の一つは、アドレスでクラブを地面に接触させず、宙に浮かして構えるというもの。云われてみれば、確かにこの方が流動的でスムーズにスウィングに移行出来ます。
(May 04, 1998)
Tom Kite(トム・カイト)は15年も前に三本目のウェッジであるロブウェッジ(60゜前後)の重要性を説き、世の中に浸透させた人です。Tom Kiteって仲本工事みたいな顔なので軽い印象を持っていたのですが(最近、目の手術をして眼鏡無しなので、もう仲本工事じゃありませんが)、こちらでは“練習の虫”として有名で、Ryder Cupのキャプテンになるくらいですから人望もあるようです。彼とDr. Bob Rotella(ボブ・ロテラ)が作ったCD-ROM:'Lower Your Score'を見たらロブウェッジの必要性を説いていました。半信半疑だったので、スーパーで安いクラブを買ってみました(こっちのスーパーは食品が主なスーパーと雑貨が主なのと二系統あり、雑貨系統では鉄砲、釣道具、ゴルフ道具なども売っています)。
ロブウェッジがバンカーや溝を越すのに最適であるのは当然ですが、私はエプロンからのようなごく短いアプローチにも使用することにしました。普通の教えだと「可能な限り地面を転がせ」というのが安全策になっていますが、名人クラスのパッティング技術を持っているならともかく、パットの強弱のコントロールやグリーンの読み方が未熟な私としては、極力地面との接触を避けて宙に上げ、ピンそばでピタッと止まってくれる方が安全なのです。
庭での連日の練習の成果もあって、結構満足出来るアプローチになって来たと思ったら、突如シャンクし出しワンランドで二回、三回とミスが続出するようになってしまいました。練習場のプロにシャンク撃退のためだけのレッスンを受けました。「ヒールで打つからシャンクするのだから、ボールを少し身体から離せばいい」てな対処療法だけで、これでは一向に改善されませんでした。安物のロブウェッジがいけない(注)という説もあり、ツアー・プロも愛用しているClevelandウェッジに変更しました。結果は同じ。【注:安物だとスウィート・スポットが無いものもあるのだそうで。本当かな。安物とはいえDunlop製だし、最近のスウィート・スポットだらけのオーヴァーサイズと同じような気もするが】
ほぼ一年シャンクを患った頃、'Golf Magazine' (1998, No.2)のレッスン記事に'End the Short-Game-Shanks'(ショート・ゲームのシャンクに終止符を打つ)というのが掲載されました。「ウェイト・シフトがシャンクの原因。先ず左手一本でチップ・ショットをする。ウェイトを動かすと満足に打てないので、下半身を動かさないでショットするという基礎が出来る。それが出来れば両手で打つのは、至極簡単」というもの。これは特効薬でした。この練習以後シャンクとは縁切りです。この記事は署名が無いので有名なコーチによるものではなく、編集スタッフが書いたもののようです。'Golf Magazine'は'Golf Digest'に較べて薄味なので、購読を止めようかと思っていたのですが、止めなくて本当に良かった。
なお、パットと同様、ウェッジ・ショットもVisualization(視覚化)が大切で、距離に応じた高さの軌道を空中に想い描きます。適切な軌道を得るにはロフトを活かさなくてはならないので、手加減しないでピシッと加速し続けなくてはなりません。上手くいくと周囲が口をアングリするような寄せワンを連発出来ます。
最近の'Golf Magazine'(1998, No.4)によれば、「ロブウェッジは裸地で使うように設計されていない」とあります。こういう時には他のアイアンで転がした方がよさそうです。【註】
【註】「裸地で使えない」のは、バウンスが多いからです。バンカーで使うにはバウンスが多い方がいいのですが、フェアウェイや裸地ではバウンスが少なければ少ないほどよいのです。(追記January 02, 2019)
(May 01, 1998、追記January 02, 2019)
'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton (Simon & Schuster, Inc., 1996)
Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)はパットの名手の一人。彼は大抵のゴルファーがライン重視でスピードを重視していないと指摘します。「スピードが遅過ぎればボールは大幅に切れてしまうし、速過ぎれば想定したほど切れないという結果になる。私はスピード重視のパットをする」
10フィート(約3m)以上のパットは、全体を三つに分けて作戦を立てるというのが参考になります。「最初の1/3はボールが最も速く転がって行く段階なので、さほど傾斜は関係ない。残り二つが重要。次の1/3は回転が遅くなるので地形の影響を受ける。私は85%〜90%の注意を最後の1/3に向ける。ホール近くで止まろうとする段階が一番地形の影響を受けるからだ」
彼はボールの後ろからもラインを読むが、必ず斜面の下側(右から左へ切れるラインなら左側)からも読むそうです。下側からだと勾配が上りなのか、下りなのか、どの程度のスピードが適切かという情報も得られて、ボールの背後からよりもラインのカーヴが読み易いとのこと。
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(May 05, 1998)
Golf Magazine's Handbook of Putting
by Editors of Golf Magazine (Harper & Row, 1959)
とてつもなく古い本です。図書館で借りたのですが、多分誰かが寄贈したものでしょう。雑誌に連載したものをまとめた風で、あまり「これは!」というユニークなアイデアが盛り込まれていません。
唯一思い当たったのが、「パットをミスることは考えるべきではない。成功することだけ考えるべきである。多くのゴルファーはパニック型で、グリーンに上がりボールに向かうと、パットする前に喉元に大きなしこりを作り出してしまう。そして、こう自問する。右へミスるだろうか、左へか?オーヴァーし過ぎるだろうか、ショートし過ぎか?ツー・パットで済むだろうか?…こういうのは敗者の思考である。全てのパットはカップの向こう側の壁に当ってコツンと転げ落ちるものだと自分に云い聞かせるべきである。Positive putting(確信をもったパッティング)がゴルフというものだ」
(May 05, 1998)
Tom Watson(トム・ワトスン)の『戦略的ゴルフ』という本から、ボールを意図的に曲げる方法。
'Strategic Golf'
by Tom Watson with Nick Seitz (Golf Digest, Simon & Schuster, 1993)
「意図的スライスは、ターゲットの左に身体の向き(肩、腰、膝、足)を合わせ、クラブフェースはターゲットを狙う。身体の向きに沿って左にスウィングする」
結果的にスライスのかかるスピンが生じる。
「意図的フックは、ターゲットの右に身体の向き(肩、腰、膝、足)を合わせ、クラブフェースはターゲットを狙う。身体の向きに沿って右にスウィングする」
結果的にフックのかかるスピンが生じる。
(注意:意図的フックの場合、フェースが伏せ気味になるので、ロフトの大きいクラブを選ぶ。3番ウッドで打ちたくても5番ウッドにする…など。そうしないと、ただのゴロになってしまう)
以上、随分簡単に聞こえますが、何度か練習してみると上の方法で十分であることが分ります。グリップだのスウィングの軌道を心配する必要はありません。身体の向きじゃなくターゲット方向にクラブを振ってしまうと、真っ直ぐ飛んで行ってしまいますので、要注意。「ターゲットの左(右)」とかいうのも、どの程度左(右)かは自分でやってみるしかありません。十分練習してからでないと大怪我します。上の方法を信じて、ゆっくり、ちゃんと肩を廻したショットをすればOK。信じるわけですから、ルックアップしてはいけません。
「意図的スライス & フック」は、これ迄も何度も覚えようと思って果たせませんでした。読んだ記事がいずれもグリップやスウィング軌道について細かく言及し、何やら面倒そうに見えたせいです。やはり上のように簡単明瞭がベスト。面白いように曲がるので、ミス・ショットで林に近づいてしまってももう安心です。
【おことわり】画像はhttps://images-na.ssl-images-amazon.com/にリンクして表示させて頂いています。
(June 09, 1998)
「スウィングのトップで一瞬の間(ま)を置け」というのは、往年の達人ゴルファーでありインストラクターでもあったTommy Armour(トミィ・アーマー)の教えです。
'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Simon & Schuster, 1974)
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は、何人かの有名プロが“トップの間(ま)”を実践していることは認めながらも、「私にはバックスウィングのトップというものが無い。手が最も高い位置に行く、あるいは肩が廻り終える前に、私の足、脚、腰はダウン・スウィングに移っている」。
「下半身が“仕事”を始めるまで上半身が“待つ”ということはある。しかしトップで文字通り全ての動きを止めてしまったら、ボールを通過する動きは弱まってしまうだろう。これではドライヴィング・コンテストで優勝出来ない」。
'How to Make Solid Contact'
by Tom Watson ('Golf Digest' 1998, No.6)
Tom Watson(トム・ワトスン)はトップではスムーズにスウィングの方向を変えなくてはならないので、“静かな”瞬間を作り、のろのろとダウン・スウィングを開始すべきだと主張します。
「最高に脂が乗っていた時期のByron Nelson(バイロン・ネルスン)が、トップで短い躊躇(ためらい)のときを作って、急がずにダウン・スウィングするメソッドを開発したと云っていた。これだとダウン・スウィングでしっかりとしたクラブヘッドのスピードを構築出来る。あとは振り抜くだけだ」
'Pure Golf'
by Johnny Miller with Dale Shankland (Doubleday & Company, Inc., 1976)
アマ時代のJohnny Miller(ジョニイ・ミラー)は、練習場では1〜2秒の“トップの間(ま)”をおいていたそうです。この本が書かれたプロとしての最盛期でも、「間(ま)は多少短くなったが、ゆっくりのバックスウィング、トップの間、そしてダウンスウィングという方式で、どんな困難な状況でも正直に云ってテンポが壊れるということはなかった」
【参照】
・「Tommy Armourのトップの間(ま)」(tips_4.html)
・「積極的躊躇」(tips_2.html)
・「“トップの間(ま)”検事側の証人」(tips_25.html)
・「Leadbetterのトップの間」(tips_40.html)
・「トップの間(ま)の正体」(tips_82.html)
(June 11、 1998、増補May 30, 2015)
「スウィングのトップで瞬間的に間(ま)を置き、全てをチェックしろ」
Tommy Armour(トミー・アーマー)
「ダウンスウィングはボールに60cmぐらい近づくまではごくゆっくり」
Hale Irwin(ヘイル・アーウィン)
「“静かな”瞬間を作り、のろのろとダウン・スウィングを開始すべき」
Tom Watson
「短かい躊躇(ためらい)のときを作って、急がずにダウン・スウィング」
Byron Nelson
これらはみな同じことを云っているわけですが、今日やっと真意が解りました。トップで短く躊躇すると、下半身はそう長く待っていられないので先にダウンスウィングを始めるのです。手打ちの危険が消えると同時に、これはレイト・アンコックにつながります(うまくいけば)。だから結構な飛距離が出るわけです(うまくいけば:-))。
素人に「下半身からダウンスウィングを始めろ。コックはほどくな」と云っても無駄なので、名人達は「トップで間をおけ」という実行可能、簡単明瞭、効果絶大な処方をしたのでしょう。
「下半身はそう長く待っていられない」と書きましたが、Senior PGA Tour(シニア・ツァー)で活躍中のBob Murphy(ボブ・マーフィ)という爺さんは、トップで文字通りフリーズします。彼の場合はいつまででも下半身が待っているのです。一昨年、近くの町にSenior PGA Tourが来た際、彼のスウィング見たさにわざわざ出掛けたものです。一寸やってみましたが、到底真似出来ませんでした。Bob Murphyは野球で奨学金を貰っていたほどだそうなので、構えて球を待ってた延長線上で出来るのでしょう。Dave Hill(デイヴ・ヒル)の説明では、「あんな風にトップでクラブを保持するというのは、相当強靭な力が必要だ」そうです。やはり「短い躊躇(ためらい)」が一般向けのようです。
【参照】
・「Tommy Armourのトップの間(ま)」(tips_4.html)
・「積極的躊躇」(tips_2.html)
・「“トップの間(ま)”検事側の証人」(tips_25.html)
・「Leadbetterのトップの間」(tips_40.html)
・「トップの間(ま)の正体」(tips_82.html)
(June 11, 1998、増補May 30, 2015)
'Putt Like The Pros'
by Dave Pelz with Nick Mastroni (HarperPernnial, 1991, $13.50)
Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)は練習用具の開発魔でもありますが、調査魔でもあります。固定式自動パット機を開発した折り、一旦ラインを設定すれば完璧に入る筈なのに入らない。「何故だろう?」てんで、数ヶ所のゴルフ・コースでいくつかの時間帯で調査したのだそうです。その結果判明した驚くべき事実とは?
朝方、刈られたばかりの理想的グリーンでは自動パット機は75%の成功率なのに、夕方には30%に落ちてしまう。ボール・マークやスパイク・マーク、ゴルファーの踏み跡がパットの成功を妨げるのだそうです。特にしばし佇んだ人の踏み跡は二時間半経っても判別出来るほど残るとか。とりわけプレイヤーの大半が踏むカップ周辺は惨憺たる有り様になるわけです。私の「あと一転がり」という惜しいパットはこういう事情も影響していたのでしょう。
プロ達が同伴プレイヤーのパッティング・ラインを踏まないようにしている理由が判りますね。実際には同伴プレイヤーのパットがカップをオーヴァーした場合に備え、ラインの延長線上も迂回して歩いています。
Dave Pelzの助言ですが、一緒にプレイする仲間を説得して、朝一番のスタートを予約すべきだそうです。起床が一寸辛くても、いいスコアをお土産に帰れるのだから、その努力は十分報われるとのこと。
【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。
(August 15, 1998)
イギリス人Harold Swash(ハロルド・スワッシュ)はBernhard Langer(ベルンハード・ランガー)などヨーロピアン・ツァーのプロのパッティング・ドクターとして有名な人だそうです。先日The Golf ChannelのGolf Talk Liveに出演していました。
珍しいことは云ってなくて、要点は納得出来ることばかりです。
1) 左腕とパターは一直線になるように構える。
これはBen Crenshaw(ベン・クレンショー)のスタイルでもあります。Ben Crenshawのパターは左腕につけた義手のように一体化して動きます。
2) アッパー・ブローでパットする。
これはPhil Mickelson(フィル・ミッケルスン)のメソッドでもあります。活きのいい転がりを生み出す秘訣のようです。
3) 十分加速する。
これは不特定多数のプロやインストラクターが云いますね。ちゃんとフォロー・スルーをとれば加速出来るが、そうでないと手首が折れてパットの軌道が狂うようです。
(August 24, 1998)
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