公開：July 15, 1997
地域：ミシシッピ州
監督：Rob Reiner
出演：Alec Baldwin、Whoopi Goldberg、James Woods、William H. Macyほか
範疇：実話／人種問題／法廷もの／公民権運動活動家殺人犯の裁判／地方検事補

私の評価 ：☆☆☆

【Part 1】

1963年、人種差別を撤廃する公民権運動が絶頂を迎えた頃のこと。ミシシッピの州都ジャクスン郊外で公民権運動リーダー（黒人）のMedgar Evers（メドガー・エヴァーズ、実在した人物）が、自宅前で射殺されました。James Woods（ジェイムズ・ウッズ）演じる白人至上主義者のBylon De La Beckwith（バイロン・デ・ラ・ベックウィズ）が逮捕され、銃器、指紋その他完璧な証拠によって有罪は確定的と見られたのですが、全員白人の陪審員によって"hung jury"（不一致陪審。有罪・無罪の評決が出せず、お流れ）となります。元州知事が陪審員の前で容疑者Beckwithと握手するなど、白人達が一丸となってこの殺人者を援護したと云える状況でした。Whoopi Goldberg（ウーピィ・ゴールドバーグ）演じるMedgar Eversの妻の提訴で、二回目の裁判が行なわれますが、これでもBeckwithは"hung jury"となり大手を振って町を歩いていました。

それから30年後、Whoopi Goldbergは三度目の裁判の陳情に地方検事を訪れます。地方検事は「もう証拠も無い。証人も死に絶えつつある」として乗り気ではありませんでしたが、検事補のAlec Baldwin（アレック・ボールドウィン）が再調査することになります。彼が黒人のために働くことは、親戚、知人、町中の保守的な人々の神経を逆撫でします。最悪の事態は彼の妻が強固な差別主義者であったことで、ついに離婚にまで発展してしまいます。

不信感を示すWhoopi Goldbergをなだめつつ、Alec Baldwinは刑事達とこつこつと再調査を進め、いよいよ三回目の裁判が開始され…。

タイトルバックのニュース映像が迫力があります。白人による黒人迫害、スポーツや戦場における黒人の活躍、公民権運動の展開…などがフラッシュ的に紹介されます。本編の中でも、John F. Kennedy（ジョン・Ｆ・ケネディ）による人種差別撤廃宣言のフィルムがインサートされたり、事実の重みを過不足無く取り入れています。

Alec Baldwinは彼の軽い印象を払拭するように、ひたむきに検事補を演じています。法廷での弁論も爽やかで、まあ及第点と云えましょう。プロデューサーは最初Tom Cruise（トム・クルーズ）にやらせたかったようですが、彼は'Jerry Maguire'『ザ・エージェント』に押さえられていて駄目だったそうです。しかし、Alec Baldwinは進歩的で公民権運動に理解がある父親に育てられたため、Medgar Eversの悲劇も知っており、父親に誇れる仕事としてこの役をやりたかったそうです。

Whoopi Goldbergは抑えに抑えていて、最後に感情を爆発させます。なかなかいい演出です。判決を待つ間、「時間潰しに散歩でもしますか？」というAlec Baldwinに、「待つのは得意だから、大丈夫」と云います。さりげなく、30年も待ったことに言及しているわけです。これはいい台詞です。判決が下って、裁判所前の群衆に挨拶します。ここはもっと長いスピーチでしたが、Whoopi Goldbergがなかなかうまく演じられず、現地の撮影でも沢山のテークを必要としたそうです。それでも監督の気に入らず、さらに彼女一人をハリウッドのセット前で撮りました。これにも18テークかかったという、この映画でも記録的な難シーンだったようです。

脇役では'Fargo'『ファーゴ』で主役を演じたWilliam H. Macy（ウィリアム・H・メイシィ）が、Alec Baldwinを補佐する刑事としてコメディ・リリーフ的場面を楽しそうに演じています。もう一人の刑事は、当時の自分を演じている本物だそうです。

故Medgar Eversの子供達も出演しています。長男と次男がそれぞれ自分の役を演じていて、娘は陪審員の一人を演じています。Alec Baldwinが最終論告をする場面の撮影の時に、陪審員席にいた娘は感きわまって泣き続け、Alec Baldwinまで泣きそうになって撮影が中断するハメになったそうです。

Alec Baldwinの長男役は、あまりアップにならないので目立ちませんが、Lucas Black（ルーカス・ブラック）が演じています。彼はアラバマ州出身なので'Sling Blade'『スリング・ブレイド』、'Crazy in Alabama'『クレイジー・イン・アラバマ』など、“南部もの”に引っ張りだこです。

「ミシシッピの幽霊」という原題は、Alec Baldwinの幼い娘が見る夢に出て来る幽霊であると同時に、未だに根絶されないK.K.K.など人種差別の“亡霊”も指しているのでしょう。ある人に云わせると、この事件の犯人BeckwithはK.K.K.も恐れるほど過激な男だったそうです。

(February 14, 2001)、改訂(December 22, 2010)

【参照】'For Us, the Living'（未公開）　（Medgar Eversを主人公にしたTV映画）

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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