'Tips from the Tour'
by Joey Sindelar (International Video Entertainment Inc., 1988)
合計14人のPGA Tourプロが各自得意の分野のtipを披露するヴィデオ。
Joey Sindelar(ジョーイ・シンデラー)は手製のパット練習器のデモを行ないます。もともとは彼の父親のアイデアだそうです。長さ約40cm、高さ5cmの板を使います。板を横長にして立てた状態にし、両端に板の高さを越える長い釘があまりきつくもなく緩くもない感じで納まるように細工します。釘は練習グリーンに刺さって、板を固定する役目です。
準備です。比較的ストレートなラインを選び、カップから6フィートほど離れて板を置きます。先ず、一本の釘を板を通してグリーンに刺して、板がカップを向くようにし、足で板を抑え、パターが板に接するようにしてパットします(ちゃんとスウィート・スポットに当たるようにボール位置を調整すること)。うまくボールがカップインしたら、もう一方の釘も刺して完全に板を固定します。これで準備完了。
この器具を使えばラインを心配することなく、ストロークの強弱、高低、テンポなどに集中出来ます。
私は80×5×3cmの板を買って来て($2.00)、絨毯の上で釘無しで使っています。重いので釘が無くてもフラフラしません。最初はパターが板を擦る音と感触に抵抗がありますが、そのうち慣れます。ストレート・バック、ストレート・スルーのストロークを身につけるにはいいアイデアです。
(December 07, 2001)
ミシシッピ州の小都市Meridian(メリディアン)の市営ゴルフ場には、少年ゴルファーがワンサと来ます。いでたちはTシャツに短パン、普通のスニーカーです。親子の場合は少なく、同世代で廻っていることが多いように見受けられます。土・日に少年ゴルファーが増えるのは当然ですが、週日の放課後、親の車で送られて来て日が暮れるまで遊んでいる連中もいます。
ある土曜の朝、練習グリーンにいたらNo.1からスタートしようとする四人の小中学生の会話が聞こえて来ました。
「1ホール$1.00だって?」
「9ホール$1.00にしよう」
「OK。9ホール$1.00」
「キャリィ・オーヴァー(勝負無しの場合の持ち越し)は?」
「キャリィ・オーヴァー無し」
「OK」
驚きました。賭けゴルフをやってるんです。親がスナック代として数ドル持たせてやったのを賭けているのでしょう。9ホール単位のストローク・プレイで勝敗を争うことに決めたようです。アウトとイン両方で負けても$2.00ですから、多分スナック代は$2.00だったのでしょう(プロ・ショップのサンドイッチの価格に相当)。
実は彼等がスタートして15分ぐらいで大雨になったので、私は帰宅しました。少年達も賭けゴルフを中断せざるを得なかったでしょうが、親が車で迎えに来ない限り帰れないので、多分どっかで雨宿りして最後までプレイを続けたことでしょう。
(December 13, 2001、改訂January 07, 2019)
'PGA Tour Caddie Tip'
by Bruce Edwards ('T&L Golf,' November/December, 2000)
Bruce Edwards(ブルース・エドワーズ)は、長年Tom Watson(トム・ワトスン)に仕えて、共に八つのメイジャーに優勝したヴェテラン・キャディです。
「以下は、Bruce Edwardsがボス(Tom Watson)の習慣をまとめた、ウォームアップの五つのtips。
1. 少なくとも一時間前にコースに着く。ちゃんとウォーミングアップすれば、身体の故障を防ぎ、スコアを縮めることが出来る。
2. 少なくとも10分間ストレッチングする。首、肩、背中、膝の後の腱を集中して行う。
3. 練習場でボールを打つのは20分以内に留める。ウォーミングアップであって、練習ではないことに注意。ウェッジから始め、7番アイアン、3番アイアン、3番ウッド、ドライヴァー、そしてサンドウェッジの順。一本につき7個のボールは多過ぎるぐらい。
4. 少なくとも20分はチップ、パットに時間をかける。
5. 時間が無い時はボールを打ったり、パットの練習はしない。筋肉を弛め、スムーズなスウィングのテンポを得る。
(January 02, 2002)
オランダにお住まいの小林さんが、珍しいゴルフ事情を寄せて下さいました。ドイツでもゴルフは免許制だそうですが、オランダはもっと厳しいようです。日本やアメリカも、少なくともルールとエティケットの試験ぐらいはあってもいいと思いますね。
2,000年の二月にロッテルダムに赴任し、その春からコースでプレーを始めました。二年足らずですし、限られた地域に基づくオランダゴルフ事情ですが、紹介させて頂きます。
『オランダ暮らし便利帖』という本のゴルフという項目に、以下のような記載がみられる。NGF(オランダゴルフ連盟)は、ゴルファーとしてのマナーを身に付け、規則を順守して安全にプレーが行われるようにとの目的から免許制度を実施していて、免許取得には次のような試験に合格することが必要である。
1) エチケットに関する筆記試験。
2) ルールに関する筆記試験。
3) 実技試験
a) 五発打って、四発を120m(女性は100m)以上遠くに飛ばすこと。
b) ホールから20mのアプローチショットを五発打ち、四発をホールから半径4mの円に入れること。
c) 10mのパットを五回行い、三発をホールから半径2mの円に入れること。
d) 2mのパットを五回を行い、三発をホールから50cmの円の中に入れること。
4) コース試験(9ホール、内容不明)。
オランダは仕事を始めとして全て“資格社会”なので、ゴルフも基本的にライセンスがないとコースでプレー出来ないらしい。「これは大変だ!」と思った。私は日本では100前後の腕前で、100を切れると「良かった」と思う程度のレベル。120m飛ばすのはまあいいとして(方向性は問われないようなので)、アプローチ、パットがノーカンの私には、b〜dが試験という条件下ではプレッシャーになる。「今から練習しても急にはうまくならないし…」とりあえず筆記試験は英語も可のようなので、英語版のルールブックを手に入れて勉強を始めた。そうこうするうちに、四月のゴルフシーズンとなった。
居を構えたロッテルダム南の村はずれに'Golfbaan Oude Maas'というゴルフコースがあり、そこの練習場に通って様子をみることにした。ある日、どうすれば試験を受けられるのか受け付けで聞いてみた。試験を受けないで済まないだろうかという下心と共に、恐る恐る「初めてですが、ここでプレーをしたいのです」と聞くと、日本でいえばおみず風の受付嬢は上目づかいに、「あなた、オランダでのハンディキャップはいくつ?」「オランダでは持ってないけど、日本ではハンディキャップ18です」と言うと(オフィシャルハンディは持っておらず、見栄も手伝って実力よりも少なく言ったようである。プライベートコンペでは、15から24位)、「じゃ、いいわよ。プレーの三日前から予約受け付け開始で、プレー費は90ギルダー(約4,500円)です」とあっさりOK。
ちなみに料金システムはビジターの場合2,001年は95ギルダーで、メンバーになると年会費1,600ギルダー(約8万円)程度。一度払うと何回プレーしようと一切費用はかからない。この制度を二年目に知って、ウェイティングメンバー(正式メンバーは一杯なので、「待ち会員」で、クラブのコンペに参加出来ない、クラブ発行のハンディキャップを取得出来ないということ等以外は差は無い)というのになってプレーした。
オランダでよくプレーする日本人の業者Aさんに聞くと、日本でオフィシャルハンディを取得していることを証明するものを提示すれば、オランダ中の大抵のコースでプレー出来る(名門はある程度以下のハンディキャップ証明が必要)とのことである。彼は、「こっちに来てから作ったんだ、これでOKさ」と自慢そうに一枚の運転免許証位の大きさのカードを見せてくれた。それは、私ら日本人が見れば、一目瞭然に自分でワープロで作り、ビニールを張ったお手製のものだった。もちろん、こんなのズルである。ほぼ同時期にオランダに来た同じ会社のゴルフ好きの他の二人と共に、こうして意外にも簡単にオランダでのゴルフを始めることが出来た。
4)のコース試験内容は、今年何回か一緒に廻った、現在ライセンス取得挑戦中の中国人のJ君('Oude Maas'のスクールの生徒であればコースを廻れる)によれば、'Golfbaan Oude Maas'では、試験官がついて廻って、9ホールではなく、アウトの4ホールを使って、エチケット、ルールの理解を審査され、4ホールの平均がトリプルボギーペース以下なら合格とのことである。
日本と違ってオランダではこのゴルフ免許制度のおかげで、初めてゴルフをする人は殆どインストラクターからレッスンを受け、ゴルフスクールは盛況である。生徒のオランダ人と話したこともあるが、初めてゴルフをする人々にとってはこの試験は当然ながら相当の壁のようだ。スクールで貰ったレッスン帳(日本の自動車教習所みたいにレッスンのステップ毎に終了すると先生がサインをしてくれる)を見せてくれながら、「去年からスクールに入っているけど、まだまだだ。今年中にライセンスを取って自由に色んなコースを廻れるようになるのは、無理だと思う」と、力なく言っていた。
エチケットの試験もあるくらいなので、オランダ人のゴルフマナーは大変良い。コースを廻り始めた頃、ボールを打とうとすると、近く(結構離れていても)のプレーヤーは、お喋りを止め、立ち止まり、息をひそめてじっとするのに気づいて、私達はいたく感心した。彼等はプレーが遅れ気味になるとすぐにパスさせてくれるし、ティーグランドがお互いに近い時は同時に打たないように譲り合いをしたり、周りのプレーヤーへの気配りは我々が大いに見習うべき点である(周りへの気配りは必ずしも国民性ではないことを付け加えておく)。
このコースを中心として、他にロッテルダム近郊でリンクス風の'Golfclub Kleiburg'や、オランダでは珍しくアップダウンの多い'Rotterbergen'でもプレーしたが、プレー費、予約の仕方、マナー、日本のハンディキャップを言えばすんなりOK等、状況は同様である。
一昨年の『週刊ゴルフダイジェスト』でマサ・ニシジマさんがオランダのゴルフについて紹介しておられ、「日本では一流コースは7,000ヤード以上、パーは72という常識が出来上がってしまっているが、オランダのゴルフコースで、ゴルフのスケールは決してこういうもので決まるのではないということを思い知らされた」と述べ、オランダにも優れたリンクスコースがあり、ユトレヒトセ、ハークシュ、ケネマーなどについて書いておられる。私がこちらで買ったオランダ・ゴルフコース案内の本にも、ケネマーは世界ゴルフコースのベスト100に入っていて、ハークシュはヨーロッパの中でもベストコースの一つに入ると記述してある。過去六回オランダ・オープンの会場となったノートウェイクセも名門である。これらのリンクスでいつかプレーしたいと考えているが、ライセンスやハンディキャップを証明するもの、メンバー同伴等の壁がしっかりあるようである。
夏坂健氏の『ゴルファーを笑え!』(新潮文庫)に、「オランダのゴルフを救った男」というエッセイがあり、「アムステルダムの近くにあるヒルバーシュム・ゴルフクラブは、1,910年に開場されたオランダ随一の名門コース。歳月を経た巨大な樫の樹林は、柔らかくうねる緑のフェアウェイを包むようにそびえて、深奥な森に迷い込んだと錯覚させるような荘厳な印象を与えた。数あるヨーロッパの名コースの中でも、ヒルバーシュムの樹林の美しさは別格と、誰もが絶賛するのだった」と書かれている。第二時大戦中にこの樫の樹林がナチスドイツにより伐採の危機に瀕した時に、ゴルフを愛するナチスの一軍人によって救われた物語がある。夏坂氏は残念ながら近年逝去されたが、ゴルフをこよなく愛し、膨大なゴルフの知識を基にユーモアとヒューマニティあふれる文章を多く残しておられる。『地球ゴルフ倶楽部』はじめ、その多くが文庫本として世に出ており、一読をお勧めしたい。
ところで、オランダのコースは日本と比べてどうなのか。ロッテルダム南のパー71、コースレート68.3、5471mの'Golfbaan Oude Maas'パー71、コースレート70.2、5655mの'Golfclub Kleiburg'を中心に2,000年は約20ラウンド、2,001年は約30ラウンドしたが、2,000年は平均スコア107、2,001年は93で、日本で100前後でプレーした私は、「オランダはゴルフがそんなに盛んではないけど、なめたもんじゃないな」と感じた。2,001年の他の二人の日本人も同様に、日本でプレーしていた時よりもラウンド平均5〜10位スコアを崩していたと思う。
戸惑ったのは、ラフが日本と違って葉が柔らかく、ヘッドにからみつく感じで簡単に脱出出来ず、ラフからラフへと渡り歩くことである。フェアウェイは狭く、日本のように擂り鉢になっていないので左右へ打ち出したボールはラフや林の奥深くへ転がって行き、キャディーもいないのでロストボールになる確率が高いこともスコアを崩す一因である。とにかく飛ばなくともフェアウェイキープがスコアメイクの絶対条件だと身にしみた二年間である。
2,001年は他の二人の日本人の事情で彼等とプレー出来なくなったので、オランダ人始め、ナイジェリア人、中国人その他、誰彼かまわず一緒に廻った。ナイジェリア人のM君も一緒にプレーする人が欲しかったようで、自然と彼との機会が増え、半分以上はハンディキャップ8のシングルプレーヤーの彼と廻った。32才の彼からくり出されるドライバーは280ヤード、アプローチ、パットもうまく、簡単に70台を出す。ハンディ4のオランダ人とも何回か廻ったが、日本ではシングルプレーヤーと廻ったことが無かったので、大いに参考になった。彼等のリズム、コースマネージメント、スコアメーク法や技術等、生ける教材であったのは幸運だった。二年目は彼等のおかげで日本では一度も出したことのない80台を五回も出せ、平均スコアもだいぶ向上した。しかし基本的にコースレートは低いので、日本で今プレーして同じようなスコアが出るかどうかは疑問である。
オランダ人は寒いのが苦にならないのか、夏ほどではないが今の時期でもゴルフ場は賑わっている。冬はコースを傷めるため三月位までカート禁止なので、キャディバッグを担いで冬用の特製シューズを履いて廻っている。冬はコース全体がぬかるんでいるため、靴の外観はまるで長靴だが底には普通のゴルフシューズのように滑り止めがあるという、オランダで初めてお目にかかった代物。
12月に2℃位の中をM君とプレーした。ナイジェリア出身の身には冷たい風がこたえるのか、「コバヤシ、5℃以下の日はゴルフを休みにしよう」と云われ、その言葉に乗って私は二月一杯まではオフシーズンという案配である。
「80を切った、その日」に投稿出来る日を夢見て、今年も頑張って行こうと年頭にあたって思う次第である。
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(January 09, 2002、改訂January 03, 2017)
「自分を騙す」という記事で次のように書きました。
「池越えの恐怖と重圧は強烈です。では、池ポチャのイメージを受け入れてしまったらどうでしょうか。ティー・ショットの前の素振りで、一打目は池に入ったと想像する。口惜しい思いを噛みしめながらボールをセットし(1ペナ払った後の三打目のつもり)、「今度はしっかり打って、無事に向こう岸へ送り届けるぞ」と決意する。テニスの安全サーヴみたいに。通常、力が抜けた二打目(1ペナを加えると三打目)は自分も驚くほど飛んだりします。『最初からこう打てば良かったんだよなあ』といつも思います。自分をうまく騙しおおせれば、一打目でそのいい軌道が得られるわけです。完全に自分を騙し切ってしまって、スコアまで間違えないようにしたいものです:-)」
最近次のような文章にぶつかりました。
'Golfing in the Zone'
by Larry Miller (MJF Books, 1996, $6.98)
「悪いショット(あるいはパット)の後、すぐさまボールをドロップして打ったショットは、十中八九、初めに打とうと思っていた正しいショットになる。これは、第一打のフィードバックを得たからでもあるが、もうプレッシャーが去ったからでもある。
我々のスクールでは、生徒達に次のように教える。二回連続で悪いショットをしたところを視覚化しなさい。バンカーに入る瞬間とか、池の飛沫とか。右OBがあるのなら、二回スライスを出してOBになる細部を視覚化して貰う。
以上を十分感じ終えたら、今度は実際に打ちたいところを視覚化するように指示する。そして、スウィング。
生徒達は正しいショットを打つ。二回貧弱なショットをメンタルに経験した後なので、十中八九いいショットになる」
ほとんど同じテクニック(?)ですね。驚きました。
(January 13, 2002)
71歳の老人J.B.(ジェイ・ビー)が「面白いから読め」と一冊の本を手渡してくれました。見ると、Herbert Warren Wind(ハーバート・ウォーレン・ウィンド)が書いた古い本です。この人はBen Hogan(ベン・ホーガン)の'Five Lessons'『モダン・ゴルフ』に共著者として名を連ねていることで有名です。ハーヴァード大学入学と同時にゴルフ・ライターを目指し、当時から雑誌などに寄稿し始めました。エール大学にも通い、創刊されたばかりの'Sports Illustrated'の編集長兼ライターに卒業と同時に就任。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)ら錚々たるプロの信任も篤く、いわば正統的ライターのトップに位置する人です。
そんな人が「面白い」本を書くものだろうか?と半信半疑でした。しかし、これが面白いのです。
'On The Tour With Harry Sprague'
by Herbert Warren Wind (Flagstick Books, 1960)
Herbert Warren Windの生まれ故郷マサチューセッツ州の、あるゴルフ場のアシスタント・プロがツァー参加を決意します。しかし、若くてお金も無いので、ゴルフ場経営者から借金して冬場だけツァーに参加し、出資者であるオーナーに定期的に報告の手紙を出すことが義務づけられます。この本は、その若きプロHarry Sprague(ハリィ・スプレイグ)の手紙を集めたという体裁です。
ところで、このサイトでアメリカのゴルフ・プロの本を沢山紹介していますが、必ず著者であるプロの名前の後に"with ..."として見知らぬ名前があることにお気付きでしょう。これはスポーツ・ライターや雑誌編集者の名前です。彼等がプロとの面談で本の構成を考え、プロからスウィングの基本やらtipsやらを聞き出し、粗原稿を書き、プロが目を通して追加訂正をする…という形で作られているのだと推測します。プロは原稿をひねくり回している時間はないというのが表向きの理由ですが、もう一つ、文科系でないゴルフ・プロには原稿を書くような才覚が無いということも云えるでしょう。よしんば書けたとしても、繰り返しが多かったり、具体的でない、誤字脱字が多い、言葉遣いが適切でない…などの傾向が顕著で、どうしても文科系のお目付け役が必要になるわけです。
主人公のHarry Spragueもご多分に漏れず、一般教養に欠け、文法的間違い、誤字脱字だらけの手紙を書きます。"January 7th"を"January 7nt"、"amateur"を"amachure"、"regular"を"regalar"、"tournament"を"turnament"、"bogey"を"boge"、"phone"を"fone"などと、滅茶苦茶です。映画にもなった'Forrest Gump'『フォレスト・ガンプ/一期一会』も凄い英語でしたが、あちらは南部の貧しい育ちの、一寸おツムの足りない人間ゆえでした。Harry Spragueはもっと悪いといえるでしょう。
彼は西海岸のあちこちで予選落ちを繰り返しますが、ロング・ドライヴに絶大なる自信を持っていて、駄目なのはパットが悪いからだと考えています。しかし、ウエッジやパットの練習を毛嫌いし、打ちっ放し練習場から離れません(我々と同じ)。そこで有名プロを掴まえては講釈を始め、あげくはBen Hoganにまで教えようという勢い。
上に抜き出した凄い英語は自筆で書いた時に出て来ます。多少賞金にありつくと、彼は速記者を雇い、喋ったことを速記して貰ってタイプしたものを出資者に送ります。これはまあ、普通の英語。速記者が金髪の若い女性だったりすると、Harry Spragueは抜け目無く彼女にモーションをかけます。独身のプロはどこでもモテモテなので、彼はゴルフそっちのけで女性を追いかけ廻して、出資者から注意されたりします。
賞金ランキングが上がって来ると、Harry Spragueは地元ゴルフ場での出世を画策します。アシスタント・プロからヘッド・コーチへの昇進です。そうなった時のために自分のアシスタントを物色しますが、「Sam Snead(サム・スニード)を雇えなくはないが、彼は賞金を缶に入れて庭のあちこちに埋めているため、それを全部掘り返してマサチューセッツに運び、また全部埋めるというのは大変だから、女性アシスタントを雇うことにしたい」などと勝手なことを云い出します。
こうまで厚顔無恥、無知蒙昧なプロを描かれて、当時のツァー・プロ達は文句を云わなかったんでしょうか?「たかが冗談じゃないか」と笑い飛ばしたのかも知れませんが、実はHarry Spragueを笑えない連中もいた筈です、かなりの数で。
(January 26, 2002)
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