Golf Tips Vol. 173

ダウンスウィングの正しい連鎖反応

Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)は、ヒッコリー・シャフトの時代にキャディをしながらゴルフを覚えましたが、スティール・シャフト時代に突入した時、それを使いこなした最初の人となったことから『モダン・ゴルフの祖』と呼ばれています。彼は1945年にPGAツァー11連勝、年間計18勝を挙げるという記録を樹立し、この記録は今も破られていません。この記事は名人Byron Nelsonが語るダウンスウィングの正しい手順です。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「私はダウンスウィングを一種の連鎖反応だと考える。鎖の最初の輪は左サイドである。左サイドが手を引っ張り下ろし、ボールへと向かって打ち抜く。手はクラブヘッドを引っ張り下ろし、ボールへと向かって打ち抜く。感覚的には左サイド全体(足、脚、腰、方、そして腕)が一組となって下り始める。ダウンスウィングを脚とか腕などの単独行動でスタートさせようとする試みは、スウィングを台無しにするタイミング不良を招く結果となる。

ダウンスウィングを正しくスタートさせる鍵は左膝である。左膝は、バックスウィングの間に右へ横移動する。ダウンスウィングは、いまだ柔軟さを保っている左膝を左方向に水平に戻すことで始めるべきだ。この動きは左踵を固定し、脚と下半身を左にスライドさせ、左サイド全体と、一組となった腕・手とを引っ張るパターンを確立する。

腰が左へ動くにつれ、右膝はボール方向に動き、右肩を正しく下方に動かす。体重は右踵の内側から左踵の外側へと動く(そこは体重のフィニッシュ地点でもある)。左腕は、左サイドがボールを通過しても、なおしっかりとクラブをコントロールしており、頭はボール位置の後ろに留まり、身体は「逆C」の形に弓なりになる。

最初の横移動の後、左足と腰は、腕と手に意図したターゲット・ラインで振り抜かせる(道を空ける)ために、ターゲット方向に回転する。ショットを通じて左下半身は低く留まり、絶対に伸び上がらない。インパクト・エリアで、クラブはなおも下降気味の弧を描いて動く。アイアンのショットでは、ボールを先ず打ち、直後にディヴォットを取り始める。左サイドでリードし続け、インパクト・エリアでのコントロールを失わなければ、ショットの間じゅう低く留まるのは難しくはない。

スウィングの間、私は次のようにイメージする。私の左手甲、左腕、クラブフェースは棒のように一体である…と。そう考えれば、フェースをオープンにしたりクローズにしたりすることはない。それら全体を一組として持ち上げ、ボールにスクウェアに戻すだけなのだ。時たまプッシュしたりプルするかも知れないが、空中でのボールのカーヴは皆無に近い。

フィニッシュは、それまでにやったことの反映である。あなたが以下のようなことを実行すれば、高く、バランスのよいフィニッシュが迎えられることを保証する。
1) しっかりしたグリップ。
2) スムーズでリズミカルなスウィング。
3) 身体の部分品全てが一組セットとなったバックスウィング。
4) 左サイドが手とクラブヘッドを下ろす連鎖反応のダウンスウィングで、ボールへと向かって打ち抜く」

(June 05, 2016)

Paul Azinger(ポール・エイジンガー)のバンカー・ショット

これは「信ずる者は砂地獄から救われる」(tips_70.html)所載のPaul Azinger(ポール・エイジンガー)のtip部分だけを図解入りにして独立させたものです。この方が解り易いと思います。バンカー・ショットの距離の調節法およびホームランやチョロ対策が、至極明快になりました。

[Azinger]

'The Way of An Eagle'
by Robert Darden and P.J. Richardson (Thomas Nelson, 1996, $19.99)

「バンカー・ショットを成功させる鍵は、クラブフェースを返さないことだ。この練習には左手をポケットに入れ、クラブを右手だけで持つ。これだとクラブフェースは回転しない。右手によるスウィングは通常完璧なスウィングとなる。ボールから離れ、椅子に腰掛けるような体勢で、若干オープンなスタンスを取る。私はクラブを低めに引く。

普通、体重は両足に50:50【図の2】。左足の体重を70にすると飛距離は短く【図の1】、右足に70だと飛距離は長くなる【図の3】。

トップしやすい人は胸骨をボールの少し後ろに位置させる【図の4】。ファットに打つ傾向がある人は胸骨をボールより少し前に位置させる【図の5】。実際にはファットに打ったクラブのバウンスによってトップしているのに、ファットに打っているのだと自覚しないゴルファーが多い。この場合、胸骨はボールより前に置かなくてはならない」

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「実際にはファットに打ったクラブのバウンスによってトップしている」を補足しておきます。雨の後などで固く締まった砂などの場合、ボール後方の地面でクラブヘッドが弾かれ(潜らない)、その跳ね返りによってトップする現象が起き易い。クラブヘッドを砂に潜らせない工夫であるバウンスが、この場合裏目に出てしまうわけです。しかし、ゴルファーは(ホームランのショックなどに気を奪われて)盛大にダフったことに気づかないことが多い…ということをPaul Azingerは云っているわけです。こうした固い砂の場合は、バウンスの少ない60°ウェッジやギャップウェッジ等を選ぶのがベターです。

(June 12, 2016)

バンカー・ショットのボール位置

The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)の'The Golf Fix'という週一の番組で、インストラクターMichael Breed(マイケル・ブリード)が「バンカー・ショットのボール位置は胸骨の正面」という理論を提唱していました。

一般に「左足の内側」と云われるのは、スクウェアに構えた足をオープンにした時に、結果としてボールが左足の内側に位置して見えるだけなのだそうです。

Michael Breedの理論は常に単純明快なのが取り柄ですが、グリーンサイド・バンカーでは、1)クラブヘッドを潜らせないために(フェースをオープンにして)バウンスを利用する、2)両足を砂に埋める分、シャフトを短く持つ、3)下半身は動かさず、スタンス・ラインに沿ってスウィング」…と、これぐらいのポイントを押さえればいいと云っています。

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このtipは取扱注意です。ホームラン王から脱皮した私は、本年三月に「私のバンカー・ショット」(tips_169.html)という記事を公開したほどバンカー巧者(?)となっていたのですが、この理論を試そうとボール位置を胸骨の前にし始めてから、ベイブ・ルースやバリィ・ボンズの記録を塗り替える勢いとなりました。"If it ain't broke, don't fix it."(壊れていないなら、弄くり廻すな)という言葉がありますが、全くその通り。やめときゃよかった(>_<)。

「私のバンカー・ショット」当時のボール位置は「左足の内側」だったのを、胸骨に揃えてみたのです。確かに胸骨の正面で構えれば、砂の取り方が予定した以上に浅くなったり深くなったりすることは防げます。ボールは胸の中央の前方とし、それにアドレスした後両足をオープンにするのは理に叶っているように思われました。しかし、これらの調整をしたのがホームラン再発の原因となってしまったのです。ショットした後の地面を見ると、ボールの遥か後方で地面を打っています。Paul Azingerが指摘する、ダフってバウンスによるトップをするという見本でした。

 

何度もバンカー・ショットに失敗した私は、自分のサイトの「バンカーショット、二つの流儀」(tips_153.html)と「スプラッシュ型バンカー・ショットの修得」(同)とを読み返し、自分がエクスプロージョン型とスプラッシュ型の手順をごっちゃにしていたことに気づきました。(ホント、このサイトは役に立つ。←自画自賛(^^;)上の「Paul Azinger(ポール・エイジンガー)のバンカーショット」で、彼が「クラブを低めに引く」と云っているのはスプラッシュ型だからです。「バンカー・ショットのボール位置は胸骨の正面」というMichael Breed理論は間違っておらず、私の応用の仕方が間違っていたのでした。で、胸骨の後方10センチを凝視し、「津波」と「灰汁を取る」をキー・ワードとして、砂を力強く掻く打法を実行して、何とかスランプから脱出出来ました。距離の調節は「Paul Azinger(ポール・エイジンガー)のバンカー・ショット」の体重の掛け方を参考にしています。この直後、久し振りの「サンディ」(バンカーからの寄せワン、しかもOKの距離)を達成出来ました。

(June 12, 2016)

Luke Donald(ルーク・ドナルド)のバンカー・ショット

'10 Rules'
by Luke Donald with Guy Yocom ('Golf Digest,' December 2009)

「アマチュアのバンカー・ショットのための最もよいドリルは、ボールの後ろ3インチ(約7.6センチ)の砂の上に線を引き、その線にクラブのソールを入れ、そのままボールの下を振り抜くことだ。最初の数回はその線の後方に打ち込むことだろう。その原因は、アマチュアの多くがボールをあまりにもスタンス後方に置き、過度にインサイドからスウィングするせいだ。インサイドからボールを打って宙に浮かべようとすると、ボールを掬い上げるしかなく【=ダフり】、それがボールの遥か後方を打つ理由である。

線の後ろを打つミスを避けるには、ボールをもっとスタンス前方にし、アウトサイド・インでスウィングすることだ。このドリルをマスターすれば、あなたのバンカー・ショットの基礎が構築されたと考えてよい」

(June 12, 2016)

Al Geiberger(アル・ガイバーガー)のバンカー・ショット

DVDレンタルで、'Quick Tips from Golf's Greats'(偉大なプロたちのTips)というのを観ました。ドライヴァーはパーシモンの小さなヘッドの時代ですから、相当古いです。今回は、PGAツァー最初のMr. 59であるAl Geibergerのバンカー・ショットを紹介します。

「バンカー・ショットはアマチュアが思うよりずっと簡単だ。

1) ターゲット・ラインを視覚化する。普通のスウィングだと、そのターゲット・ラインに平行にスタンス・ライン(両足のライン)を揃えるのだが、バンカー・ショットではスタンス・ラインはターゲットの左を向く(ヴィデオでは約30度左を向いている)。そのスタンス・ラインに両足・両膝・両肩を揃える。

2) クラブフェースはターゲット(旗竿・着地点など)に向ける。

3) スウィング・ライン(クラブヘッドの軌道)はスタンス・ラインと平行。

4) そのスウィング・ラインに沿ってスウィングすると、結果的にカット・ショットになる。【編註:これはフェードの打ち方と全く同じ】

5) リリース(アンコック)を極力我慢すること。早期のリリースは大幅なダフりに繋がる。

6) ボールの2インチ(約5センチ)後方の砂を狙ってクラブヘッドを打ち込む。

7) インパクトで、ターゲット方向に右膝を送る。

上の要領でスウィングすれば、目一杯の力で砂を爆発させたりすることなく、ターゲットに向かってスムーズにボールを送り届けられる」

フェードの打ち方をマスターした方なら、この方法は簡単でしょう。「大きく両脚を開いてスウィングの土台を安定させろ」というのが最近のインストラクションの主流ですが、Al Geibergerは「右膝を送り出せ」と云っています。このメソッドを実行する場合、腕と脚の動きを同期させるため、心の中で1-2、あるいは1-2-3などと掛け声を掛ける必要があります。そうでないと、例えば脚の動きが先行すれば直接ボールを打つことになりホームランをかっ飛ばしてしまいます。要注意です。

 

(June 12, 2016)

ディヴォット恐怖症の方へ【やさしい解説】

インストラクターの祖父、PGAツァー・プロだった父、上級アマだった母、インストラクターの夫、インストラクターの義父を持つという凄い家系の女性インストラクターKellie Stenzel Garvin(ケリィ・ステンツェル・ガーヴィン)による、ヒットダウンの勧め。

'The Women's Guide To Golf'
by Kellie Stenzel Garvin (Thomas Dunne Books, 2000, $24.95)

「テニスやラケット・ボール、ピンポン等で高いボールを打つ時、われわれはラケットを上に向けて打ち上げる。何故なら、ラケットにはロフトがないからだ。ゴルフではクラブヘッドにロフトがインストールされているので、ボールを上げるにはクラブで地面に打ち下ろすべきなのだ。

TVでプロ・トーナメントのゴルフ中継を見ていれば、プロたちが大きな芝の一片(=ディヴォットと呼ばれる)を切り取るのに気づく筈だ。ディヴォットは主にアイアンで見られるが、それはボールのターゲット側で取られる。インパクトでクラブヘッドは先ずボールと接触し、次に地面と接触する。アマチュアの上手いプレイヤーでも、このことを知らないのには驚かされる。クラブがボールと接触するのは、まだ下降中の出来事であり、ボールを打ってもまだ下降を続けて地面を打つのだということを理解してほしい。

ゴルフでボールを上げたい時、われわれは他のスポーツのように上に向かってスウィングしない。クラブは地面と接触する際、円運動の下降する軌道にある。毎回必ずディヴォットを取る必要はないが、少なくともクラブは、ボールのターゲット方向で地面近く低く動く必要があると覚えておくこと。ボールのターゲット側の前方に低くティーを埋め込んだと仮定すると、クラブヘッドは先ずボールを打ってボールを宙に浮かべ、その後地面に埋め込まれたティーにぶつからねばならない。

しかし、アマチュアの多く(特に女性)は地面を打ちたがらない。固い地面で手を痛めるのが恐いのか、芝生を壊すのが恐いのか。女性の生徒が初めて地面を掘ると、先ず『あら、ごめんなさい』と謝り、直ぐにディヴォット・ホールを修理したりする。云わせて貰えば、謝る必要はないし、直ぐに修理する必要もない。ショットなり、練習なりが終わった最後にディヴォット・ホールを埋めればいいのだ。

 

ディヴォットを取っても、手を痛めることはない。もしそういう感じがするのなら、腕をリラックスさせれば衝撃を吸収してくれる。練習で、ボールのターゲット方向にティーかコインを置いて、ボールの後にそれらを打ってみる。ある若い女性を教えた時、彼女は明らかに地面を打つのを怖がっていた。私はボールの前に'divot mix'(ディヴォット・ミックス、砂と芝の種を混ぜたもの)を散布した。彼女は問題なく'divot mix'の砂を打ち、ディヴォットを取ることに慣れた。地面を壊すのも問題ないと認識すべきだ。よく見れば、そこら辺はディヴォット・ホールだらけの筈だ。

練習場でボールを打つ際、素振りでも地面を打ち、それを本番でも再現する。いったん、地面を打つことと地面を壊すことに慣れたら、ボールはしっかり宙に浮かび、距離も増えることが期待出来る」

(June 15, 2016)

PGAツァー流ディヴォットの取り方

インストラクターHank Haney(ハンク・ヘイニィ)のディヴォット指南。

'Make a tour-quality divot'
by Hank Haney ('Golf Digest,' May 2016)

「ディヴォットはゴルフの一部である(特にツァー・ゴルフにおいて)。ツァー・プロたちはスウィング・スピードが早く、通例タイトなフェアウェイから短いクラブでグリーンへと打つため、芝の塊を宙に舞わせる。

だが、全てのディヴォットが平等ではない。あなたがホームコースでツァー・プロのように打とうとして、1インチ(2.54センチ)ボールの後ろを打ったとすると、バックスピンは生み出せない。単に、スウィング速度を遅らせるだけである。

ショート・アイアンを手にした時だけディヴォットを考えるべきだ。その時がディセンディング・ブローを実行したい場面であり、地面より先にボールと接触すべき状況だからだ。7番アイアンより長いクラブを用いる場合は、掃くようなスウィングで構わないし、その際ディヴォットはほとんど取らない。

何故か?二つの理由がある。今日のアイアンは許容度が高く、クラブフェースの低部で打っても上部で打ってもいいように出来ている。技術の利点を活かせばよろしい。第二に、ボールを掃くように打つ時は、浅い攻撃角度でインパクト・ゾーンに突入する。ボールと少しトップ気味に接触するにせよ、ダフり気味に接触するにせよ、急角度のスウィングでミスするよりいい結果が得られる。言葉を替えれば、ミスの程度が小さくなるのだ」

(June 15, 2016)

スウィング分解写真を真似ようと思うな

これはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)28歳の時の自叙伝の中の一節ですが、彼はこの本執筆中の1968年までに、既にメイジャー九勝を挙げていました。その彼の、一般ゴルファーへの警告。

[Brook]

'The Greatest Game of All (My Life in Golf)'
by Jack Nicklaus with Herbert Warren Wind (Simon and Schuster, 1969)

「高速度カメラによるスウィング分解写真は両刃の剣だと思う。それはゴルファーにとって、特定のショットの様々な段階でスウィングの要素がどう機能するかを研究するためにとても有益なものだ。それはまたバックスウィングやダウンスウィング、あるいはその両方を狂わせるようなエラーを発見し、修正する対策を講じるのに便利でもある。

しかしながら、今日あまりにもストップ・モーションの写真がゴルファーの目の前に溢れており、多くの熱心な週一ゴルファーたちがスウィングの間の特定の位置に彼らの動きを合わせようと努力するミスを犯す。例えば、ヒッティング・ゾーンに突入するにつれ、カメラが捉えた有名プロのポジションを真似しようと試みるような。これはよくない考えだ。スウィングが、意識的にコントロール可能な沢山の部分で構成されているものだなどと考えるべきではない。成功したゴルファーはそんな風に考えない。あなたが静止していると思うポジションは、それ以前の動きの結果であり、そのゴルファーはそれらの動きを正しく実行することによってそのポジションに到達しているに過ぎない。成功したゴルファーは原因と結果を取り違えたりしないが、週一ゴルファーはごっちゃにしがちだ。

同じことを別の方法で述べてみよう。ゴルフ・ショットを遂行する時、あなたはスウィングを部分、部分に分けて制御することなど出来ない。あなたはバックスウィングの半ばのクラブヘッドの位置や、バックスウィングのトップでの両手の位置、インパクトでの右腰と肩の位置…等々を、筋肉でコントロールすることなど出来ない。ゴルフ・スウィング全体は二秒以内に完結する。これは、次から次へとコントロールするには早過ぎる動作である。だが、あなたは良いスウィングでは何が起るかを知っておくべきだ。そうすれば、正しい動作をする可能性が増え、云うまでもなく不調の際にどこに問題があるかを知ることが出来る」

【おことわり】画像はhttps://www.madlab.ca/にリンクして表示させて頂いています。

(June 19, 2016)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のパッティング

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ、1902〜1971)はスウィングやストローク法について「私は以下の数章に自分がゴルフで悪戦苦闘したことを記すけれども、インストラクションを与えようとか、このようにプレイせよなどとと云うつもりはない。それどころか、『私はこんな風にプレイする』と語る者として向いているかどうかさえ定かでないと感じている」と書いているほど謙虚です。ここでは、彼のパッティングについての考えを紹介します。

[Bobby]

'Down The Fairway'
by Robert T. Jones, Jr. and O.B. Keeler (Minton, Balch & Company, 1927)

「『ネヴァー・アップ、ネヴァー・イン』という有名な格言は、多くの場合カップに向かって強くバーン!と打つことの口実になっているように思われる。その文句はまた、1〜2メートルもオーヴァーするボールを見守るプレイヤーが『少なくともボールにカップインするチャンスは与えたんだ』と自分を慰める際にも用いられる。といっても、それは大したチャンスには思えないが…。もちろん、ラインに真っ直ぐ転がったもののショートして止まったボールがカップに入るなんてことは想像出来ない。しかし、カップを通過したボールがカップに入らないこともまたハッキリしている。過度に強く打たれたボールがカップに入るには、たった一つの進路しかない。それは正面玄関の真ん中であって、カップ後方の壁が暴走停止装置として機能していることが不可欠である。

私のホームコースEast Lake G.C.(イースト・レイクG.C.)のクラブ・プロStewart Maiden(スチュアート・メイデン、1986〜1948)は何度も次のように云っていた。『ボールがカップに到達して息絶える時、ドアは四つある。ボールが縁にかかれば正面玄関、裏口、あるいは左右のドアからも入り得る。だが、早いスピードのボールは正面玄関の真ん中を通らねばならない。早い転がりで到着するボールに左右のドアはないし、裏口も存在しない』彼のこの言葉は、特に高速グリーンにおいて正しい。遅いグリーンでは、ハードに打たねばと判断すべき時もあるだろう。

また、軽々に扱えない第二パットの問題がある。私の経験から云って、欲張り過ぎたアプローチ・パットの後で、連続して1〜1.5メートルのパットを沈めるのに全力を尽くすことほどプレッシャーのかかるものはない。私の場合、長いパットが入るのはカップで息絶えるように届かせた時であって、ハードに打った時ではない。もし、息絶える際にボールがカップの縁にかかれば、大抵の場合それは転げ込む。もし縁にかからなければ、残った距離は帽子の直径ぐらいのものなので、仕上げのパットは単純だし心理的負担はゼロである。1924年のU.S.アマで、私を心理的にかなり楽にしてくれたのはそれであった。私はいいストロークが出来たものの、長いパットを沢山沈めたわけではなかった。残りの距離を、大体においてカップから30センチに寄せることが出来たせいなのだ。私は長いバックストロークとリズムを用い、自分の脚と身体を硬直させたりしなかったことを覚えている。

少年時代、上手だったパッティングが劣悪になり、1〜1.2メートルの距離を転がる間には、色んなことが起ることを発見した。それは、昔も今も私にとって常に困難な距離である。正直云って、私は1メートルの距離よりは、絶対に沈めなければならない3メートルのパットに直面する方がいいと思う時がある。

私は、常にラインより距離が重要だなどと云うつもりはない。60センチ、1メートル、1.2メートル、あるいは2メートルのパットを成功させるにはラインが全てであって、どれだけ強く打つかを案じる必要はない。ボールがカップに届けばいいのであって、バーン!と打っってはいけない。だが、アプローチ・パットにおいては、重要なのは距離である。もし、私がラインに集中して距離に無頓着であれば、もっと頻繁に1パットを成功させられるだろうが、同時にもっと多くの3パットもすることだろう。だから、ぴったりの距離であることは、何より望ましいのだ。

グリップやスタンスについて触れていないが、その理由は私は頻繁にパッティング・スタイルを変えているし、すぐまた変えるかも知れないせいである。どっちみち、パッティングの秘訣は(そんなものがあればの話だが)私はメカニックス(機械的ストローク手順)ではないと考えるからだ。ストロークはスムーズでかなりの程度自動的であるべきだとは思うけれども。自分としては、柔軟さがあるべきで、したがって膝と身体の動き(長いパットでは腕の動き)が必要だと云いたい。

『身体と両脚を動かしてはならない』という一般に認められたセオリーがあることは承知している。だが、私はその理論は誤解されていると思う。私自身のことはおいといて、パット名人であるWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン、1892〜2069)、Johnny Farrell(ジョニィ・ファレル、1901〜1988、1928年のU.S.オープン優勝者)、Francis Ouimet(フランシス・ウィメット、1893〜1967、1913年のU.S.オープン優勝者)の三人を見てほしい。Johnny Farrellは特に距離を必要とするアプローチ・パットにおいてパターを高く上げ、膝と身体を使う。Francis Ouimetは両肩を動かす。身体を動かさずに肩を動かせるものだろうか?否である。

私は両手を向かい合わせにする。すなわち、両方の手の平を向かい合わせにし、手首も互いに向き合って動く。

私のパッティングが悪化するのは(それは時として最悪になるのだが)、どのようにストロークするかに集中するあまり、ボールをカップに沈めることをちゃんと考えなくなる時だ。私は常にアプローチ・パットに長けていたし、トップ・クラスとは云えないまでも今やそれらを沈めるのも結構上手くなった。だが、私の結論は、充分スムーズで正確なストロークを身につけているなら、そういうストローク法を可能な限り忘れて、ボールを穴に入れることに集中すべきだということだ。そもそも、それがゴルフの起源だったわけだし」

以下は超特大版のBobby Jonesの写真集に寄せられたBen Crenshaw(ベン・クレンショー)の解説。Ben Crenshawはパット名人というだけでなく、Bobby Jonesを崇敬する真摯な研究家でもあります。

'The Greatest of Them All—The Legend of Bobby Jones'
by Martin Davis (The American Golfer, Inc., 1996, $60.00)

「Bobby Jonesのパッティングは、フル・スウィングのミニチュア版である。バックスウィングの長さが異なるだけで、何も変わらない。ワーナー・ブラザース製作のゴルフ・レッスン短編映画で、彼はパッティング・ストロークの際に(特に長いパットの時)膝を動かすことを奨励している。Bobby Jonesはそれがストロークにスムーズさを加えると感じていた。硬直していてはスムーズなストロークは生み出せない。

Bobby Jonesの若い頃は両足(特に踵)を近寄せ、屈み込む姿勢でパットしていたが、1920年代からグランドスラムの年である1930年にかけては、彼は両方の踵をくっつけ、背を伸ばした姿勢てパットしていた。スタンス・ラインはターゲットに対しややオープン、完全に自然で快適で、美しいバランスを見せている。【上図】 それはほとんどチップ・ショットか短いピッチ・アンド・ランの構えのように見える。私(Ben Crenshaw)は緊張が感じられないことによって(若い時のものより)このポスチャーを好む。そして、これが彼の偉大な成功を達成したメソッドなのだし。

Bobby Jonesのメソッドはとても単純明快で、パットの狙いを定めたら、ボールの前にパターヘッドを起き、それをボールの背後に移し、すぐストロークする。全て一続きの動作で行われる。どの時点でも停止することはなく、終始動き続ける。

Bobby Jonesのストロークはとてもリズミカルでスムーズだった。彼はパターヘッドを真にスウィングさせ、その長いストロークは美しかった。彼自身は掃くような動きを好んでいた。彼は、短い突くようなストロークはスムーズさと安定性を欠くと感じていた。正しいストロークには傾斜を判断する能力と適切な強さを達成することが必要だと、彼は語っていた。これ以上付け加えることは何もない。それはまさに私がトライしていることなのである」

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Ben Crenshawの'The Art of Putting'(1986)というVHSヴィデオの付録として、Bobby Jonesのゴルフ・レッスン短編映画のパッティング篇がついています。それを見ると、Bobby Jonesは両方の親指をシャフト上に伸ばした逆オーヴァラッピング・グリップを用い、狭いスタンス、背を伸ばし気味の姿勢で、手首を後方→前方に折り曲げて弾くストロークをしています。

(June 22, 2016)

恐れを知らぬ若者のようにパットせよ

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ、1902〜1971)は「充分スムーズで正確なストロークを身につけているなら、そういうストローク法を可能な限り忘れて、ボールを穴に入れることに集中すべきだ」と云いました。同じ趣旨のことをTommy Bolt(トミィ・ボルト、1916〜2008)は、「ゲームを楽しむ若者のようにパットせよ」と云います。

[Bolt]

'How to Keep Your Temper on the Golf Course'
by Tommy Bolt with William C. Griffith (David McKay Company, Inc., 1969)

「全ての若いプロがツァーに参加したての頃、とても素晴らしいパットをする理由は、彼らのメンタルにリラックスした態度によるものだと私は確信している。彼らは小生意気な若僧であり、彼らにとってゴルフはまだ遊びに過ぎない。だが、ツァーでの年数を経るに従って、次第に彼らはその素晴らしい自信過剰な態度を失い、ゴルフはプロ同士が競う遊びではなく、生活の糧であることを自覚する。彼らは少し心身を強ばらせ、ボールは以前のようにはカップに転げ込まなくなる。

かつて、ツァーの新人たち数人が練習グリーンのあらゆる地点からボールをカップに抛り込むのを見ながら、Sam Snead(サム・スニード)が悲しげに云うには、『見ろよ!奴らはフェアウェイの真ん中からボールを転がしてるが、このゲームがどんなにタフなものか知らないんだ。それをいずれ奴らも悟るだろうが、問題は来年の今頃は次の新人たちがやって来るってことだ。そういう新人たちの先を行くのは不可能だ』

同じことは、新人時代に彼の炎がPGAツァーを燃やした頃のSam Snead自身にも当てはまる。彼もボールを素晴らしく転がしたものだ。そして、御存知のように、後に彼は【編註:パッティング・スランプ克服のため】玉突きとクローケーを綯い交ぜにしたテクニックを考案せねばならなくなった。彼は云った、『ゴルフは車の運転みたいなもんだ。歳を取るにつれて注意深くなる』。この態度は保険会社にとっては喜ばしいものだろうが、同じメンタルな手法をゴルフに持ち込むと取り返しがつかなくなる。

Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)を御覧なさい。最近の彼は以前より注意深くなり、若い頃の彼ではなくなってしまった。ある時期、私はJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が全てのトーナメントで優勝する能力を持っていると思ったものだが、彼ももはや若僧ではなくなり、時たまいいパットをする程度である。思うに、ゴルフ歴が長くなるにつれての注意深さが、われわれのプレイを悪化させるのだ。Sam Sneadは正しい。われわれはどんどんダッファー時代のメンタルな態度に戻って行くのだ。われわれは過度に注意深く、あまりにも真剣過ぎるようになる。

ストローク数はグリーンにおいて最も増え易いものであり、もしゴルファーが自分のプレイを分析し始めれば、無惨なスコアの50%の割合を占めるのはパット数であることに気づく筈だ。素晴らしいティー・ショットをし、最高のアプローチ・ショットの後、60センチのパットに失敗することはあなたを気違いにする。『60センチのくそったれめ!』あなたは自殺したい思いになるだろうが、それは正しい選択肢ではない。60センチのパットを毎回間違いなく沈められる自信がつくまで練習すべきなのだ。練習以外に上達の道はない。ストロークを身体に覚え込ませるほど練習すれば、安定して正確に、そしてスム〜〜〜ズにボールを転がせるようになる。自信が心身をリラックスさせ、それがパットを成功させるのだ」

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リラックスしてゴルフを楽しむには、同じ筆者による以下の記事が助けとなるかも知れません。
【参考】「パーなど相手にするな」(tips_170.html)

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(June 22, 2016)

Lydia Ko(リディア・コゥ)のストローク

 

KPMG Women's PGA Championship(和名「全米女子プロ選手権」)【註】と翌週のMeijer(マイヤー)LPGA ClassicをTV観戦しました。

【註】このトーナメントは以前はLPGA Championship(LPGA選手権)だったのですが、昨年からPGA of America(インストラクターの団体で、PGAツァーとは異なる)が主催者となったのだそうです。スポンサー探しに躍起となっているLPGAが、自分の城を明け渡した形で、LPGAの文字も抹消されてしまい、男子のPGA Championship(PGA選手権)と混同しちゃいそうです。「"Women's"(女子の)と付けりゃ文句ねーだろ!」というPGA of Americaの傲慢さが際立っています。

私にはLydia Ko(リディア・コゥ)のストロークがとても印象的でした。パッティング巧者としての自信に裏付けられてのことでしょうが、彼女のストロークは特に短いパットで、常に加速させるのです。フォワードストロークはバックストロークの倍の強さのように見えるほど。逆に云えば、加速を目指すためにバックストロークを短くしているという感じ。これは、(手の動く方向こそ違え)ビリヤードで球を撞く動作に似ています。振り子運動のようにスムーズなものではなく、フォワードストロークに必ず勢いを加えている。入らなければ、50センチ〜1メートルはオーヴァーするであろう勢い。自信たっぷりというか、大胆不敵というか。これぞ「恐れを知らぬ若者のようなパット」でしょうね。

彼女の師匠David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は「2メートル以内のパットであれば、原則として短く、しかも加速するパッティングをすべきだ」と説いていますから、彼女はこの教えを忠実に実行しているのかも知れません。

TV中継では、彼女のストロークのクロースアップをスローモーションで見せたことがありますが、想像通りボールの赤道から上を叩いています。これがオーヴァースピンのいい転がりを生む秘訣なのだろうと思われます。

【参考】「David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)の ショート・パットを沈める」(tips_120.html)

 

(June 22, 2016)

David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)のAスウィング

 

最近のLydia Ko(リディア・コゥ)のスウィングに、落ち着かない感じを抱いていました。何やらJim Furyk(ジム・フューリク)の8の字スウィングのように不自然に思えたのです。6月4週目のWalmart NW Arkansas Championship(ウォルマート・ノースウェスト・アーカンソー選手権)を見ていたら、解説者のJudy Rankin(ジュディ・ランキン)が「最近の彼女のスウィング変更の特徴は、非常にアップライトなバックスウィングです」と云っていました。それで、「あ、これはLydia KoのコーチDavid LeadbetterのAスウィングに違いない」と察しがつきました。

YouTubeでDavid Leadbetter本人が若いインストラクターを指導しているヴィデオを見ました。(https://www.youtube.com/watch?v=uypgmV0YlWY)「Aスウィング」の"A"は"Alternative"(代替の、別の)という意味。以下のポイントは、全てオーソドックスなスウィング理論とは異なっています。

・テイクアウェイ直後からクラブ・シャフトを垂直に近く立てる。
・手首を廻さず、シャフトを立てたままバックスウィング(クラブフェースは自然にクローズになる)。
・右脇に何かを挟んだ場合、それを落とさないように(右脇を引きつけたまま)トップへ。
・両手は超アップライトなトップ、クラブ・シャフトはターゲットの右を指す。
・アップライトに上げた両手を下げ、フラットにインサイドからボールに向かわせる。

 

このヴィデオは若いインストラクターの一人が生徒となってAスウィングを学ぶのですが、“生徒役”が三回ぐらい打ってもDavid Leadbetterから褒められませんでした。ということはかなり難しいテクニックであることを予感させました。

もう一つ、別なヴィデオを見てみました。(https://www.youtube.com/watch?v=3GhyWA6wuuk)こちらではDavid Leadbetterは目の前に背骨の角度と同じ角度で立てたクラブをトップまで廻して見せました。それはLydia Koのトップのように、飛行線と平行なシャフトになりました。

・Lydia Koの新旧のスウィングを分析したヴィデオもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=nL8GS8c5_js

試しに練習場で打ってみましたが、私にはこのスウィングは複雑過ぎます。悪名高いJim Furykのような8の字スウィングにも抵抗がありますし。David Leadbetterは「これはドローを生むスウィングである」と云っていますが、私は元々フック系のせいか、多くのボールが左へ向かいました。

後で'Golf Digest'のバックナンバーをめくってみると、David LeadbetterによるAスウィングのグリップに関する記事が見つかりました。

'Praying for better shots'
by David Leadbetter ('Golf Digest,' October 2015)

「左手はフィンガーで、シャフトが全ての指の根元に沿って斜めになるように握る。左手のグリップはストロングになるように調整する。右手は左と対称的に握るが、こちらはウィーク・グリップになるように調整。インターロックでもオーヴァラップでも、どちらでもよい。両手が対称的になっていることを確認。両方の手首は、僅かに凹型に折れていること」

この右手のウィーク・グリップがフックを防ぐのかも知れません。

【参考】http://www.golfdigest.com/story/david-leadbetter-a-swing-starter-kit
 このサイトは英文ですが、写真を見るだけでも価値があります。参照ページの最初の写真の、低い方の両手がアップライトにクラブを持ち上げる角度、上の方の両手がトップからフラットにダウンスウィングする角度を示しています。

(June 29, 2016、改訂August 13, 2016)

背骨を正しく右傾させよ

インストラクターTom F. Stickney II(トム・F・スティックニィ二世)は、長いインストラクター生活で「アドレス時の背骨の横方向への傾斜は、ゴルフで最も忘れられている基本である」と述べています。

[T angle]

'Spine angle—a forgotten fundamental'
by Tom F. Stickney II ('Golf Illustrated,' Jan-Feb 2005)

「背骨の横方向への傾斜が、重心、トップへのクラブシャフトの動作の有効性、トップで右脚に寄りかかる度合い、そしてXファクター【註】などをコントロールする。

【編註】“Xファクター”とは、「バックスウィングで肩は目一杯廻すが、腰の回転は極力抑えるべきである。両方を目一杯廻したのではバネの効果(捩れ)が生じないからだ。ドライヴァーでのモデルは、肩を100°廻し("/"の文字の下端が捻転度)、腰を60°廻す("\"の文字の上端が捻転度)。"/"と"\"の文字を組み合わせるとΧになり、その交差角度が大きいほどパワーが生まれる」…という、インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)が1996年に発表した理論。

横から横への背骨の動きを分析することによって、この傾斜の重要性を知ることが出来る。この基本を見落としていると、様々な問題が起り易い。それには体重の逆移動、プレーン外への持ち上げ、中途までの左前腕の過度のプロネーション、トップで上がる右肩,’右膝のスライドや揺れ…などが含まれる。

もし横への背骨の傾斜が不足だと、背骨はアドレスで直立しがちになり、右利きのゴルファーの場合は右への傾斜が充分でなくなる。背骨の傾斜不足は、全てのレヴェルのゴルファーにとって大問題のセットアップ不良である。

【編註:この記事には上級、中級、初級に分けて、背骨の傾斜不足の害が書かれていますが、省略】

背骨の横方向への傾斜を簡単にチェックするには次のようにする。アドレス体勢を取り、クラブのグリップ部分を胸骨の中央に当てる。クラブヘッドは両足の真ん中に垂れ下がる筈だ。見下ろし、ゆっくり右肩を下げて傾斜させながらクラブヘッドを見守る。クラブヘッドは左足の甲の方へと動く。クラブヘッドが左足甲を覆った時が、正しい背骨の横への傾斜の完成である。

注意しなければならないのは、常に腰は中央にあるべきだということだ。背骨だけを右へ傾げなければならない。身体全体を右へスライドするのはいとも簡単だし、重心をアドレス時の身体の中央より後方に動かすが、それは背骨の傾斜を変えないし、クラブヘッドは左足甲の方へ動かず、身体を右に移動させるだけである。

鏡を用いて上の動きを試みられたい。背骨を右に傾斜させると、55%〜60%の体重が右足に移るのに気づく筈だ。こうして、アドレスであなたの重心は身体の中央の後方となり、これまでになく自由でソリッドなバックスウィングをもたらしてくれる」

【参考】「Tの字を傾けて捻転せよ」(tips_165.html)


(June 29, 2016)

伸び上がらず、低く留まれ

『モダン・ゴルフの祖』Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)による、ゴルフ・スウィングの秘訣。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「頭をじっとさせたまま、下半身でダウンスウィングをリードすべきであるということは、いくら強調しても強調し足りない思いだ。あなたは顎を通過してスウィングする感覚、ターゲット方向に腰と脚が顎を通過しても頭を後方に残す感覚を作り出さねばならない。そのフィーリングを云い表すベストの方法は、《完全に頭の下方でスウィングする》ということだ。あなたの身体は顎の突端を通過するが、頭が動く前に腕はフォロースルーへと振り抜かれる。

私は『ダウンスウィングの正しい連鎖反応』(06/05)で「ショットを通じて左下半身は低く留まり、絶対に伸び上がらない」と述べたが、それはどういう意味か?一般ゴルファーは単に「頭をじっとさせ続け、見上げるな」だと思うだろう。それも大事なのだが、私はそんなことを話しているのではない。

インパクトの瞬間、多くのゴルファーがあまりにも急速に身体と頭を持ち上げ、それに続いて左肩を回転させる。彼らは背を伸ばした体勢でボールを見ることになってしまう。彼らはたまにはいいショットを打てるかも知れないが、プレッシャーがかかると、この左サイドで伸び上がる癖を誇大に行うことになる。これはプルやトップなど無数のエラーの原因となり得る。

一方、上手いプレイヤーは膝を曲げ続け、左サイドでリードし、頭を後方に残しながら、インパクト・エリアで低く長く留まる。右サイドは、上がったり身体の周りを廻るのでなく、下方に向かい、クラブヘッドの軌道は可能な限り低く、ショットの後半でボールを追いかける。

アイアンでは、ボールと接触する時になおも下降軌道を辿る。ドライヴァーではボールはスタンスのやや前方でプレイされ、水平の軌道、あるいはインパクトでやや上昇気味の軌道を辿る。こういう風にスウィングするゴルファーは、ボールをよりソリッドによりストレートに打てる筈だ。

かつてPurdue University(パーデュー大学)で、私ほか当時の四人のトップ・プロがスウィングを撮影されたことがある。その時の写真は、私が誰よりもクラブをライン上で長く低く往復させていたことを証明した。思うに、それが私のショットが曲がらないもう一つの理由であろう。

最近のプレイヤーの中で、スウィングの間に伸び上がらない勝れた例は、Tome Watson(トム・ワトスン)とTom Weiskopf(トム・ワイスコフ)である。彼らの膝はフィニッシュの段階でもまだ曲げられたままだ。

どのゴルファーも、左サイドを柔軟にし、スウィングの間じゅう頭を後方に留め続けるこの動きを身につけるべきだ。インパクト・エリアで右肩がその低い位置に達するまでボールを見送ってはならない。右肩が顎の下に到達したら、頭は自然に上がるものだ」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(June 29, 2016)

パッティングを音で改善する

 

私の目下のパットの問題点はボール一個分ショートしたりすることです。カップの向こう数十センチを目標に打ってもショートしたりします。ボール一個分のショートというのは精神衛生によくありません。情けないやら腹立たしいやら。チーム仲間にも面目丸つぶれだし。

日本アマの最高峰・中部銀次郎は「芯でとらえれば、全部入ります」と云っていました。私も芯でとらえることに腐心していたつもりですが、どうもそうではないのかも知れない。ボール一個分ショートと云う微妙な長さは、打つ強さの問題ではなく、芯でとらえてないせいだと考えれば合点がいきます。

ストロークする時のインパクトの音に注意してみました。一回一回音が違います。【以下の音は、パターの構造によって異なるでしょう】
・ボゴンという鈍いくぐもった音
・カツンと木刀を軽く打ち鳴らしたような高い音
・一様でなく割れた感じの音(芯を外した時に多く、手に振動が伝わって来る)
それぞれの音とボールの距離の関係を調べてみました。バックストロークを同じ長さにしてパターのトゥ寄り、真ん中、ヒール寄り、ボールの上を打つ、下を打つ…などで、距離の変化を知ろうとしました。

ふっとグリップ圧を変えても音が変わるんじゃないかと思い、きつく握った場合と緩く握った時の違いを調べました。ぴんぽーん!緩く握った場合にカツンと澄んだ音がして、よく転がります。きつく握ると、鈍い音がします。これはスウィートスポットを外した音だろうと思われます。つまり、きつく握るとボールの中央に正確にスウィートスポットが戻らず、方向も距離をも損なうようです。【ま、いくら音が良くても狙いが悪ければ入りませんけど】

これは我ながら素晴らしい発見だと思います。われわれは「入れよう!」と意気込むと、ついグリップをきつく握り締めがちです。すると、肩が強ばり腕も強ばる。これが実はパット失敗の原因かも知れません。で、これを発見した直後のラウンドで徹底して緩めのグリップでストロークした結果、次のようになりました。
・No.2(350ヤード)パー4:10メートルの上りを30センチほど読み違えてバーディ失敗。【充分に緩めのグリップじゃなかったかも知れない】
・No.3(270ヤード)パー4:やや下りの6メートルを沈めてバーディ
・No.8(280ヤード)パー4:急な下りのサイドヒルの2メートルのブレイクを、2センチ高めに読み過ぎてバーディ失敗。
・No.12(110ヤード)パー3:やや下りの8メートルを沈めてバーディ
・No.16(270ヤード)パー4:11メートルを20センチほどショートして【方向は完璧だった】バーディ失敗。
 その他、二度ほど1メートルの距離をリップ・アウトさせてボギー。

 

[grip]

これは、パットだけに関して云えば、私としては近来になくいい出来だったと云えます。われわれのシニア・グループで6メートル以上のパットが成功するなんて、滅多に見られない“まぐれ”ですからね。それをワン・ラウンドで二度も達成したんですから。思い出しても、まだ胸がわくわくします。今後はパターが滑り落ちない程度に、常に緩く握ることにします。この“まぐれ”が続くかどうか、非常に楽しみです。

もちろんパットのFLW(固定した左手首)も忘れておりません。ただし、「パットのFLW(固定した左手首)改訂版」(tips_171.html)に書いた「アドレスでは手をゆるゆるにしておき、バックストロークのトップに到達したらそこで左手首を固める」の後半部分は無視し、最初から最後までゆるゆるです。グリップはゆるゆるでも、左手首の角度は終始変えずに保持します【←これが重要】。

ところで、左の図は14年前の記事につけたイラストで、実はこの当時既にゆるゆるのグリップの良さについて書いていたのですが、すっかり忘れていました。今回のような嬉しい成功がなかったせいです。ですから、今度のゆるゆるグリップは「発見」ではなく「再発見」が正しい。

《パットの成否は音で聞け》という文句がありますが、これは「(ボールの行方を見送らずに)カップにコトン!と転げ込む音を待ち受けろ」という意味で云われます。しかし、私が練習した範囲ではインパクトの音次第で「あ、こりゃ駄目だ」、「お、これはイケルかも」と明確に判断出来ます。であれば、「ボールの残像を見よ」(tips_171.html)と共に「インパクトの音を聞け」を実行すれば、完全に頭を動かさずにストローク出来ることになります。

【参考】「総括・振り子式パッティング」(tips_65.html)【14年前の記事】


(July 03, 2016)

パター・ハンドルを肥満体にする

自分で超幅広の2Thumb(トゥー・サム)ハンドルをインストールした2 Bar(トゥー・バー)パターは、どうもインストール方法がいい加減だったようで、ラウンド前に必ずハンドルがターゲットにスクウェアかどうかチェックせねばなりません。その角度がラウンド中に元に戻ってしまう心配もあり、厄介なことこの上もありません。かといって、外して再インストールも出来ないのです。カッターで切り裂く以外に方法がない。新しいハンドルを購入して、プロにインストールして貰うと、50ドル以上かかってしまいます。

[grip]

長年愛用しているOdyssey(オディスィ)Rossie II(ロズィー・トゥー)は、マレット型の名作パターですが、このハンドルにテープを巻いて肥満体にしたらどうか?と考えました。インターネットで調べると、同じことを考えている人がいて、「パターにテープを巻いても違法ではないか?」と質問し、「ラウンド中にテープを剥がしたりしない限り合法」との回答を得ていました。USGAの規則FAQ(https://www.usga.org/RulesFAQ/rules_answer.asp?FAQidx=51&Rule=14)を見ても「膨らみやくびれを作ったりしない限り、テープやガーゼを巻いてよい」となっています。

運動具店へ行くと、厚さ1.6ミリの結構分厚いテープがありました。テニス・ラケットに使うことが主目的で売られている筈ですが、"All Sports Grip"(全てのスポーツのためのグリップ)と書かれています。野球のバットやホッケー・スティックなどにも使えるということのようです。一巻き5ドルのものを二個購入しました。これを全部Rossie IIのハンドルに巻き付けると、以前は8センチぐらいだった円周が12.3センチまで太りました。超幅広ハンドルに慣れている身としては、もう一巻きほしいところですが、それはこの企てが成功してから考えることにしました。


【おことわり】画像はhttps://www.prodirecttennis.com/にリンクして表示させて頂いています。

(July 03, 2016)

パットの距離の尺度を設定する

 

インストラクターの祖父、PGAツァ?・プロだった父、上級アマだった母、インストラクターの義父、同じくインストラクターの夫という凄い背景を持つ女性インストラクターKellie Stenzel Garvin(ケリィ・ステンツェル・ガーヴィン)による、パットの距離コントロールに尺度を定め、大幅なオーヴァーやショートを避けるアイデア。

'The Women's Guide To Golf'
by Kellie Stenzel Garvin (Thomas Dunne Books, 2000, $24.95)

「ロング・パットの距離コントロールのフィーリングを持ち合わせていない人は、カップを3メートルもオーヴァーしたりショートしたりして、『まだあんたの番だよ』と云われる屈辱を味わうことになる。

私が考案した距離コントロール・システムは、あくまでも初歩であって上級者を満足させるものではない。しかし、私の生徒たちはこれによって素晴らしい成果を収めている。

あなたが腰の幅のスタンス【註】で立っていると仮定すれば、その足を用いて距離のコントロールが出来る。

【編註】これはアメリカの女性を対象に書かれている本なので、腰の幅は平均的日本人男性より広いでしょう。

・小さいパット:右親指から左親指へ

・中くらいのパット:右の小指から左の小指へ

 

・大きいパット:右足の5〜8センチ外側から左足の5〜8センチ外側へ

・非常に大きいパット:右足の12〜15センチ外側から左足の12〜15センチ外側へ

お気づきのように、距離の長短ではなくパットの大小で規定している。これはわざとそうしてあるのだ。グリーンは上り、下りの勾配などによってボールの転がる早さが異なる。上の基準で「中くらいのパット」の距離であっても、下り勾配なら「小さいパット」としてプレイする。「中くらいのパット」の距離でも、それが上りなら「大きいパット」としてストロークする。

パットするに当たって、常にパットの「大きさ」を決め、両足を基準としたストロークをすれば、『まだあんたの番だよ』と云われて恥ずかしい思いをすることはなくなる筈だ」

(July 03, 2016)

ハンドルの太さがパット軌道を変える

PGAインストラクターでありスポーツ心理学者でもあるDavid Write, Ph. D.(デイヴィッド・ライト博士)によれば、スタンスだけでなく、パター・ハンドルの太さによってもストロークの方向が変わるそうです。「パッティングを音で改善する」(このページ上)に書いたように、私のパッティングは突如良くなったのですが、それは同じページに書いた「パター・ハンドルを肥満体にする」のせいかも知れません。この記事を読み飛ばさないよう御注意下さい。あなたのパッティングを素晴らしいものにする可能性がある内容だからです。「ハンドルの太さがパットの軌道を変える」なんて信じられないでしょう。私も数年前にこれを読んだ時、信じませんでした。しかし、私は間違っていました。

'Golf Magazine: The Best Putting Instruction Book Ever!'
edited by David DeNunzio (Time Inc. Home Entertainment, 2010, $32.00)

『スタンス幅の決め方・決定版』(tips_141.html)による最適のスタンスをしていることを前提にすると、両方の手がそれぞれにマッチする太さのパター・ハンドルを握った時に、"core muscles"【註1】がバランスを保ち、どちらの足のCOF【註2】もセンターとなる。

[handles]

【編註1】"core muscles"(コア・マスル):同じ筆者による「フル・スウィングのスタンス幅と身体の重心」(tips_163.html)の「上核、中核、下核」を参照のこと。"core"はスウィング・パワーの核・原動力となる身体の領域。"muscles"は「筋肉」。スタンス幅を変えると"core muscles"の領域が変動する。

【編註2】"COF":Center Of Force(センター・オヴ・フォース、体重の中心となる足の一点で、左右の足それぞれに存在する)

もし、あなたが大き過ぎるか小さ過ぎる何かを持つと、パワーの核となる部分が緊張する結果、右か左の腰を回転させ、片方の足のCOFを前方(爪先方向)に移し、他方の足のCOFを後方(踵方向)に移動する。

リサーチの結果、大部分の標準的なパター・ハンドルはゴルファーの5%以下にしかフィットしないということが明らかになっている。だから、あなた方の95%は右か左の腰を回転させ、片方の足のCOFを爪先方向、他方のCOFを踵方向に移していることになる。

・細過ぎるハンドルの場合【例:写真のA】

私の両手にとって細過ぎるパター・ハンドルを握ると、スタンス幅は正しいのにグリップのサイズ違いが右の膝を左より過度に緩め、ターゲットに対し腰を無理矢理オープンにしてしまう。これは私の右足のCOFを爪先に、左足のCOFを踵に動かす。このサイズのハンドルだと、私のパターはアウトサイド・イン(=プル)の軌跡を辿ることになる。

・太過ぎるハンドルの場合【例:写真のB】

私の両手にとって太過ぎるハンドルを握った場合。今度は左の膝が右より過度に緩み、それがターゲットラインに対し腰を無理矢理クローズにする。その結果、私の左足のCOFは爪先方向に、右足のCOFは踵方向に動いてしまう。これはインサイド・アウト(=プッシュ)の軌跡を生み出す。

・両手にフィットするハンドルの場合【例:写真のC】

私の右手にも左手にもフィットするパター・ハンドルを握ると、左右両方の膝の柔軟性は均等になり、両足のCOFの位置は同じ場所(私の場合、拇指球の下方で土踏まずの中央の上方)となる。【下図の赤丸】この場合、ターゲットラインにスクウェアな軌道が得られる。

【編註】まとめると、ターゲット方向の足のCOFが踵ならプル、ターゲット方向の足のCOFが爪先ならプッシュということになります。

・片方の手だけにフィットするハンドルの場合

左手には完璧にフィットするパターを左手だけで持ち、アドレスし、正しいスタンスをとった時、膝の柔軟性は左右均等である。しかし、そのパターに右手を添えると太さがフィットしていないため左膝の緩みが増し、腰はクローズになってしまう。

あなたのパター・ハンドルは左右どちらの手にもフィットしなければならない。私の左手はおよそ1インチの1/10ほど右手より大きい。だから、私のパター・ハンドルは右手に合うように多少先細りでなくてはならない。【編註:博士はライトハンド・ローのグリップをしています】

パター・ハンドルのサイズが正しいかどうかチェックする方法がある。クラブを一本両爪先を結ぶラインに数センチ離して平行に置く。パターを持ってアドレスし、どちらか一方の膝が地面のクラブ・シャフトからはみ出していないかどうか調べる。どちらか一方でもはみ出していれば、現在のあなたのパター・ハンドルはあなたの両手にフィットしておらず、両足の重心はターゲット・ラインに平行でなく、何か埋め合わせの策をでっち上げない限りパット・ミスは避けられない」

[icon]

膝がはみ出さなくても、左右の足のCOFを調べてみるべきです。私の手元の数種のパターでCOFをチェックしてみました。【A、B、Cは上の写真に対応】

[feet]

A) TearDrop(ティアドロップ)【非常に細いハンドル】:左足のCOFは拇指球の下方だが、右足のCOFは爪先になる
  他の細いハンドルのパター二本も全く同じ傾向。

B) 2Thumb(トゥー・サム)ハンドルをインストールした2 Bar(トゥー・バー)パター【五平餅のような超肥満体ハンドル】:左足のCOFは拇指球の下方だが、右足のCOFは踵になる

C) Odyssey(オディスィ)Rossie II(ロズィー・トゥー)に10ドル分のテープを巻いた肥満体ハンドル:左右どちらのCOFも拇指球の下方になる。左図と全く同じ。

左右の足のCOFが揃っていれば、狙った通り打てます。7月3日以降も10メートルのバーディ・パットを沈めたりして、私のパット好調は続いており、仲間から驚かれています\(^o^)/。「ゆるゆるグリップ」と「ハンドルの肥満体化」を同時に始めてしまったので、今となってはどちらの功績なのか知る由もありません。両方かも知れないし、どちらか一方かも知れない。しかし、どっちの功績かを知るためにRossie IIに巻いたテープを剥がす気はないし、ゆるゆるグリップを止める気もありません。好調の原因を探ろうとして不調になる愚は冒したくないので(^-^)。

COFが揃っていないと感じられたら、パター・ハンドルを両手にフィットするよう調整すべきです。

【参照】
・「正しいスタンス幅の決め方」(tips_126.html)【ライト博士執筆による重要な記事】
・「スタンス幅の決め方・決定版」(tips_141.html)【同上】

(June 06, 2016)

超簡単・フェードと意図的スライスの打ち方

これまでに紹介したフェードの打ち方で最もシンプルなものは「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の フェードとドローを学べ」(tips_157.html)でした。今回紹介するのは、さらに簡単なフェードの打ち方で、筆者は「下手に複雑なことをするな!」と口を酸っぱくして説いています。なお、筆者George Peper(ジョージ・ペパー)はアメリカ人で'Golf Magazine'の元編集長でしたが、現在はスコットランドに住み着き、セント・アンドリュースを含む五つのコースのメンバーとなっているそうです。

この本の書名'Scrambilng Golf'について。「スクランブル」という言葉は軍用機などの非常時の「緊急出撃(退避)」として知られていますが、悪路で行うオートバイの「スクランブル・レース」というのもあります。この本で扱われているショットもボールがラフ、バンカー、水の中、壁の前、木や杭の後ろ…など、全てアマチュアにとっては「窮地」と云ってよい状況です。ですから、『窮地脱出のゴルフ』と云っていいでしょう。

'Scrambling Golf'
by George Peper (Prentice-Hall, 1977)

「・フェードのかけ方

1) スタンスをオープンにする。ターゲットラインから約5センチ左足を下げ、両爪先を結ぶラインに腰、肩を揃える。

2) クラブフェースを最終的なターゲットにスクウェアにする(注意:上で設定した両足、腰、肩のラインに揃えるのではない)。

これだけ。コントロールされたフェードを打つ処方は以上である。

御覧のように、スタンスを開くことによって、結果的に通常のスクウェアなスウィングの軌道に右腰を突き出すことになる。このでしゃばりの骨盤は、あなたにテイクアウェイでアウトサイドにクラブを引かせ、ダウンスウィングでボールを横切る(カットする)ようなインパクトを強制する。これは左から右へのスピンを生む最高の方法である。

他に余計な調整をしてはならない。ただ単にスムーズで快適なスウィングをすればよい。あなたのセットアップが正しければ、Ben Hogan(ベン・ホーガン)流の最高のフェードが実現する筈だ。

【注意事項】一般的に、フェードは通常のショットより高く上がり飛距離が落ちる。ストレートなショットよりも、一本か二本長いクラブを選ぶこと。

・意図的スライスのかけ方

フェードよりもっとボール軌道を曲げたい場合は、いくつかの工夫が必要になる。

先ず、フェードのセットアップをさらの強調する。スタンスをもっと大きくオープンにし、グリップをウィークにする(両手の"V"が左目を指すまで左に廻してからグリップを固める)。これは異様な感覚を与えるかも知れないが、数回の素振りで慣れるように努める。間違っても、アドレスとワグルの途中でいつも慣れ親しんだグリップに戻してはならない。

 

これ以上何か余計な工夫を加えないこと。フェードの時と同じように、スタンスとクラブフェースの角度は、上のグリップに助けられてボールを適切にカットする準備を整えている。単に、可能な限りの手首の動作を伴って、ゆっくりスムーズなスウィングをし、ボールをカットすることに専念する。もし、頭をその想念で一杯にし、不動の頭でスウィング出来たなら、普通なら虫酸が走るようなスライス、ただし今回だけは見守るのが喜ばしいスライスを生み出す筈だ。

【注意事項】フェード同様、ストレートなショットよりも、一本か二本長いクラブを選ぶこと。

あなたが生来のフック打ちであれば、フェードと意図的スライスを打つには、やや誇張したセットアップとグリップ調整が必要である。

フェードとスライスに関して、二つの事項を付け加えておく。第一に、このような左から右へのショットは、ドライヴァーやパターのような垂直に近いフェースのクラブの場合に打ち易い。何故なら、こうした比較的ロフトの少ないフェースは、フェードやスライスのサイドスピンと競合するバックスピンの割合が少ないからだ。だから、ロング・アイアンはショート・アイアンよりフェードやスライスをかけ易い。6番や7番アイアンだとバックスピンが出しゃばり、サイドスピンは影を潜めてしまうのでフェードや意図的スライスは難しくなる。

第二に、フェードとスライスはラフからよりもフェアウェイでの方がかけ易いことを覚えておくこと。濃密で湿ったライは、クラブヘッドとボールとの摩擦を減少させ、ボールにスピンを加えようとする力を妨げる。だから、クリーンでドライなライ以外でこの作戦行動に期待してはいけない。実際には、ボールを左から右へ曲げるに最適のライは裸地である。固い剥き出しの地面は、完璧にクリーンなコンタクトを可能にしてくれ、ボールにハードで真性の左から右へのスピンを与える。だから、次回あなたが目の前を遮る木と裸地によって二重のトラブルに見舞われたと考えたなら、腐ってはいけない、それは英雄的ショットをする完璧な状況なのだ」

[icon]

われわれは窮地に陥ったことでパニックになり、さらに慣れないフェードや意図的スライスを打つとなると、逆上したり慌てたり力んだりしがちです。しかし、どちらにも「ゆっくりスムーズなスウィング」が求められています。急いだスウィングは厳禁なのです。なお、上の記事では触れられていませんが、フェードにも意図的スライスにも両手がターゲットに向かう高いフィニッシュが望ましい。これが左から右へのスピンを完遂します。低いフィニッシュだと手首が返ってフェースをクローズにしがちです。

【参考】「Johnny Millerのフェード上級編」(tips_137.html)

(July 17, 2016)

超簡単・ドローと意図的フックの打ち方

これまでに紹介したドローの打ち方で最もシンプルなものは「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の フェードとドローを学べ」(tips_157.html)でした。今回紹介するのは、さらに簡単なドローの打ち方で、筆者は「下手に複雑なことをするな!」と口を酸っぱくして説いています。なお、筆者George Peper(ジョージ・ペパー)はアメリカ人で'Golf Magazine'の元編集長でしたが、現在はスコットランドに住み着き、セント・アンドリュースを含む五つのコースのメンバーとなっているそうです。

この本の書名'Scrambilng Golf'について。「スクランブル」という言葉は軍用機などの非常時の「緊急出撃(退避)」として知られていますが、悪路で行うオートバイの「スクランブル・レース」というのもあります。この本で扱われているショットもボールがラフ、バンカー、水の中、壁の前、木や杭の後ろ…など、全てアマチュアにとっては「窮地」と云ってよい状況です。ですから、『窮地脱出のゴルフ』と云っていいでしょう。

'Scrambling Golf'
by George Peper (Prentice-Hall, 1977)

「木や障害物を迂回する必要がないとしても、ドローは役に立つショットである。常にランが増えるので、ドライヴやロング・ショットで特に助けとなってくれる。同じ理由で、【グリーンを狙う場合には】通常のショットをする時より、ワン・クラブ減らす必要がある。

・ドローのかけ方

1) スタンスをクローズにする。腰、肩をターゲットラインの右に揃える。ボール位置は通常通りでよい。

2) クラブフェースをターゲットにスクウェアにする。

グリップやスウィングについて考える必要はない。セットアップで右腰を引いているので、このショットに不可欠なインサイドへのテイクアウェイとアウトサイドへのダウンスウィングが自ずと発生する。

スムーズなスウィング、不動の頭、そしてあなたが望むボール軌道の明確なヴィジョンを心に抱き続けること…などに集中する。あなたが望ましいボールの飛行を熟知しているなら、このスタンスとクラブフェースの調整をした後は、よくコントロールされたドローが打てる筈だ。

・意図的フックのかけ方

ドローよりもっと大きく曲げたいのであれば、アドレスでいくつかの変更が必要だ。

スタンスをさらに1インチ(2.54センチ)クローズにする。グリップをストロングにする(両手の"V"がズボンの右のポケットを指すまで右に廻してからグリップを固める)。可能な限りゆっくりスウィングする以外、さらに何か意図的な変更を加えないこと。右へ振り抜くことと、あなたの理想的なショットのイメージを抱き続けること。

 

フックはドローよりさらにランが増えるので、ドローよりワン・クラブ、ストレートなショットより2クラブ短いものを選ぶ。グリーンへ3番アイアンを打つ場面で意図的フックを打つなら5番アイアンが妥当である。だが、もし上り勾配であれば4番アイアン。

意図的にカーヴさせようとするショットのいずれもそうだが、ラフからスピンをかけるのは困難であり、奇跡を期待してはいけない。

あなたが生来のスライサーであれば、ドローとフックを打つには、やや誇張したセットアップとグリップ調整が必要である」

(July 20, 2016)

パッティング・スタンス幅の決め方・ヴィデオ篇

当サイトではDavid Wright, Ph.D.(デイヴィッド・ライト博士)の研究成果を「正しいスタンス幅の決め方」(tips_126.html)、「スタンス幅の決め方・決定版」(tips_141.html)などとして紹介して来ました。私はその結果を「スタンス一つで、あっと云う間にパット巧者になれる法【実話】」(tips_163.html)として報告しました。まだ納得出来ない方のために、博士が出演しているYouTubeヴィデオのあらましを紹介します。スタンスの幅によって、両手の向きが変わってしまう(=真っ直ぐストローク出来ない)ことが証明されます。

0:00〜0:35 【編註】以前、博士が主宰していた'GripSize.com'からダウンロードした用紙に左右の手形を描いた図を送ると、博士のチームが長年のリサーチから導き出した最適のグリップ幅とスタンス幅を教えてくれるサーヴィスがあったそうです。もうそのサイトは閉鎖されていて、そのサーヴィスは受けられません。しかし、次のセグメントの要領で、個々に最適のスタンス幅を決められます。

0:36〜1:14 博士は、当サイトが「正しいスタンス幅の決め方」として紹介した方法を実演します。博士は「両手が揃って完璧にターゲットラインに沿って往復するのは、適切なスタンス幅に両足を開いた時だけ。そのスタンス幅を決定するのは簡単」と云い、両手の人差し指と中指で名刺大のカードを挟んで立ちます。

 

1:15〜1:49 パッティング体勢を取り、深呼吸し、リラックスします。先ず試しに両足を34センチに開きます。鏡で両手に挟んだカードの向きを確認します。両方のカードの向き(角度)は揃っていません。右手は左手より開いています。肩は動かさずに両手だけ左右に動かすと、この場合、右手はアウトサイド・イン、左手はインサイド・アウトに動きます。【編註:これでは自然なストロークは出来ません】

1:50〜2:05 スタンスを広げると、両手のカードの角度が変わり、次第に開き方が揃って来ます。

2:06〜2:31 非常にワイドなスタンス幅にする。この時、両手のカードの向きは完全に揃っています。両手を左右に振ると、その動きは見事にシンクロします。博士にとって最適のスタンス幅は62センチだそうです。

2:32〜2:38 両手の指先の長さも完璧に揃っています。

2:39〜2:54 スタンス幅を狭めに戻すと、両手の指先の長さは揃わず、それを無理に揃えると肩は突如オープンに回転してしまいます。

2:55〜3:23 博士「パターフェースでターゲットを狙う場合、上半身(胴体、肩)がスクウェアであるかどうかに左右される」

3:24〜5:00 【この部分は、スタンス幅が適切なら腕の角度が左右対称になるという理論の説明】

 

5:01〜5:23 ターゲット方向から見たアングルでの実演。両手が揃ってラインに平行に動くことに注目。両手の指先も揃っている。

5:24〜5:37 スタンス幅を数センチ狭めるとどうなるか?両手はバラバラに動き、両手の指先は揃っていない。

5:38〜6:29 博士「適切なスタンス幅は人により、体型(身長、体重、肩幅、胴の幅、靴のサイズ等)によって異なる。しかし、一旦それを知ればパターにもアイアンやウッドにも応用出来る」

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以前、私は名刺の向きのテストにより、自分の最適のスタンス幅は33.5センチとしていました。今回、このヴィデオを見て、両手の動きが完全に揃うスタンス幅を調べたら、なんと43センチでした。かなり広めのスタンスにしていたつもりでしたが、それでも10センチ以上足りなかったようです。

このカードを用いるチェック法は鏡を使わなくても、カードがターゲットラインに平行に動くかどうかで視認出来ます。また、私のように特殊なストローク法をしている場合でも、カードを挟んだ手によってそのストローク法が正しいかどうかチェック出来ます。

(July 24, 2016)

カット・ショットを修得せよ

'Scrambling Golf'(窮地脱出のゴルフ)から、カット・ショットの打ち方の詳細。

'Scrambling Golf'
by George Peper (Prentice-Hall, 1977)

「出来るだけ早くボールを高く上げ、バックスピンが必要な状況だとしよう。いいライ(裸地やタイトなライではない)で、ピンまで約8ヤードなのだが、ボールとゴールの中間に高さ3メートルの生け垣がある。ピンの近くに寄せたければ、あなたの唯一の選択肢は生け垣越えのカット・ショットを打つことだ。

このピッチ・ショットの変化形は容易いショットではない。少しでもトップ、シャンク、ダフりのようなミスを犯すと、その代償は高くつく。しかしながら、じっくり練習すればこのショットを安定して打てるようになり、そうなった時、このショットの真の価値を見出すに違いない。

このショットは技巧的ショットの典型であり、一見不可能な状況下でボールをピン傍につければ、心理的後押しが得られたり、あなたの対戦相手に不意打ちを食らわせることが出来る。縮めて云えば、カット・ショットはどれだけ時間がかかっても修得するに足るショットなのだ。

カット・ショットの原理は意図的スライスと同じである。基本的には身体はターゲットの左を狙い、クラブフェースは右を狙って、アウトサイド・インのスウィングで左から右へのスピンをかける。この技法をドライヴァーやアイアンで用いると、ボールは大きく左から右へ曲がる。しかし、グリーンサイドでのカット・ショットではスライスがかかるほどハードに打たれない。その効果は、オープン・フェースによって増す高度と、カットするアクションによってかけられる多量のバックスピンと急停止である。

ウェッジを手に(多くの場合サンド・ウェッジが望ましい【註】)ワイドなオープン・スタンスを取り,両脚・腰・肩をかなり左に揃える。左足をオープンにし、そのトゥはピンの右を指す。フラットなグリーンだと、ボールが右へバウンドするので、ピンの左40センチ〜1メートルを狙う。

【編註】この本には「ロブ」という項目もあるのですが、そこでも筆者は「ウェッジあるいはサンド・ウェッジ」と書いていて、ロブ・ウェッジに言及していません。Tom Kite(トム・カイト)が60°ウェッジをバッグに入れて一般に広めたのが1981年頃ですから、その四年前に出版されたこの本がロブ・ウェッジに触れていないのは当然とも云えます。われわれにとって、カット・ショットにはロブ・ウェッジを使う方が簡単です。

 

フラットに寝せオープンにしたクラブフェースでターゲットの15〜20°右を狙う。ボール位置は左足爪先の前方とし、両手はボールのぴったり後ろで構える。これがクラブフェースに効果的なロフトを与える。両手を1/4ほど反時計方向にスライドさせてウィーク・グリップとする【編註:手を廻すだけでクラブは廻さない】。このグリップは、インパクトで手首が廻ってフェースをクローズにしショットを台無しにするのを防止する。

数回の素振りが望ましい。アウトサイドで上方へのテイクアウェイ、早期のコックをする。ボールとの精確なコンタクトが必須なので、捻転や体重移動を少なめにし、短くコントロールされた控え目なバックスウィングをする。クラブがボールの下方を横切るダウンスウィングに集中する。掬い上げようとしてはならない。このショットを正しく遂行すると、ボールはグリーンに着地後すぐ停止する。フェアウェイから打たれたら、最初のバウンドでぴょんと弾む。だからセットアップする際に、30〜60センチ左を狙うよう考慮する。

このショットを猛練習すること。裏庭でプラスティック・ボールで練習しても楽しい。薮や干してある洗濯物、自動車などにどれだけ近く立ち、それらの上を飛び越すショットを打てるか確認する。1メートル離れた自動車を越えられれば、このカット・ショットをマスターしたことになる」

【参考】「カット・ロブ」(tips_55.html)

(July 24, 2016)

カット・ロブ簡略版

'Golf Magazine'誌編纂のショートゲーム大全から、インストラクターScott Suckett(スコット・サケット)によるチップショットを急停止させる術。お薦めです。

'Golf Magazine: The Best Short Game Instruction Book Ever!'
Edited by David DeNunzio (Time Inc. Home Entertainment, 2009, $32.00)

「あなたは、チップしたボールが数回バンドし、カップの傍で急停止して欲しいと願っているのだが、いつもそうはならず遠くまで転がってしまう。

多くのゴルファーと同じように、あなたも方向のコントロールに懸命になっており、ウェッジをターゲットラインに真っ直ぐ振らねばならないと考えているのだ。それは役立つ場合もあるが、スピン・コントロールは不可能であり、寄せワンを容易に許してはくれない。

a) インパクトにかけて、両腕をターゲットの左に動かせ。凶暴なカットではなく、どちらかと云うと身体の周りをフォロースルーへとスムーズに廻すスウィングである。これは活き活きとしたインパクトを作り出し、ウェッジのグルーヴ(溝)にボールを噛ませ、あなたが望んでいる急停止のスピンをボールに与えてくれる。

b) もっとスピンを増やしたければ、バックスウィングでクラブを少しインサイドに引き、インパクトの後、手と腕を左に向けてスウィングする」

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アプローチ・ショットがグリーンの外にこぼれた。ボールからピンまでは10数ヤード。砲台グリーンなのでパターで転がし上げるには距離のコントロールが難しい。土手を越えるチップをしようとすると、ボールはピン近くに着地し、どんどん遠くへ転がってしまう恐れがある。こういう状況は珍しくありません。

カット・ロブだとクラブフェースをオープンにしたり、ターゲットの左を狙ってスタンスラインに沿ってスウィングするなど、バンカー・ショットに似たいくつかの手順を踏まねばなりませんが、そこへ行くとこの簡略版は何の下準備も要らず、いつものチッピングに一工夫加えるだけなので有り難い。またカット・ロブは料理し過ぎるとベラボーにショートしますが、この方法だとその心配はありません。

 

(a)の方法だと確かにバックスピンによってランが減りますが“急停止”とまでは行かず、私の場合、ストレートに振り抜く場合の半分のランという感じ。真に急停止させたければ(b)の方法を取る必要があります。砲台グリーンのピンまで10ヤード(エッジの3ヤード外)から(b)を練習してみましたが、面白いくらい寄りました。

(July 24, 2016)

ハンドルの太さがパット軌道を変える・ヴィデオ篇

当サイトはDavid Wright, Ph.D.(デイヴィッド・ライト博士)の研究成果を「ハンドルの太さがパット軌道を変える」(このページ上)として紹介しましたが、まだ納得出来ない方のために、博士が出演しているYouTubeヴィデオを紹介します。ハンドルの太さによって身体の向きが変わることが証明されます。

 

0:00〜0:35 【編註】博士は腰のアライメントを強調する棒を腰に着けています。博士「われわれは手にフィットするものを握ると、身体のコア【核=首から股まで間のどこかに存在する(人によって場所が異なる)パワーの原動力】がリラックスするが、フィットしないものを握るとコアが自ずと向きを変えてしまう。

1:01〜2:12 博士「先ずスタンダードな(普通に売られている)ハンドルのパターを握ってみる。膝に注目のこと」この場合、膝・腰は自然にオープンになり、両手はアウトサイド・インの軌道で振られる。ハンドルの太さ次第で膝がオープンになったり、クローズになったりする。

2:13〜2:42 次いで博士は自分の手にフィットさせたハンドルのパターを握る。博士「御覧のように膝はスクウェアのまま留まる」

2:43〜2:57 再度、スタンダードなハンドルのパターを握る。腰・膝はオープンになる。

2:58〜3:33 博士「これがアウトサイド・インやインサイド・アウトの軌道でパットする原因である。パットの軌道に影響を与えるのは正しいポスチャー、スタンス、そしてハンドルのサイズの三つ。これら全てを最適化すべきである。ハンドル・サイズは簡単に変えられる」

3:34〜4:41 【編註】この部分は生体力学研究の話で、適切なスタンス幅でラインを読むべきであるという理論の説明。(略)

 

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David Wright博士は細いのとやや太めの二種類のハンドルしかデモしていませんが、私は超肥満体(五平餅型)ハンドルを加えて三種類テストし、太さの違いで覿面に身体の狙いが変化することを確認しました。あなたも手元のパターを握って両足・爪先をターゲットラインに揃えてアドレスし、左右の足それぞれのどこ(爪先、中央、踵)に体重がかかっているか【左右同一場所がベスト】、膝はまだターゲットラインに平行かどうかを調べてみて下さい。

最近、プロ、アマを問わずSuper Stroke(スーパー・ストローク)ハンドルの人気が高まっていますが、ハンドルの直径(インチ)を意味する2.0、3.0、5.0など、様々な太さがあり、Super Strokeならどれでもいいわけではありません。用品店でそれぞれの型を握って上の方法でテストし、あなたに最適の太さのハンドルを購入すべきです。

【参考ヴィデオ】
'How to wrap a putter to your precise grip size.wmv'(各種テープを使ってハンドル・サイズを太くする方法の実演)
https://www.youtube.com/watch?v=Z-PYuyDS9a4 [12' 29"]

(July 27, 2016)

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のパッティング哲学

これはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が旧著や雑誌などに書いた原稿のパッティングの部分だけを集大成した本から、パッティングに関する考え方。

'Putting My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (John Wiley & Sons, 2009, $25.95)

「どのホールでもパットに二打費やすことが許されており、一般的なコースのパーは72だから、理論的にはゴルフ・ゲームの半分はパッティングだということになる。現実的には、ツァー・プレイヤーもアマチュアの大多数もパット数の比率はもっと少ない。プロは平均して1ホールにつき2パット以下で上がることが多く、アマチュアはグリーンに到達するまでの打数が多いからだ。

どちらにせよ、パッティングは多くのゴルファーが認める以上に大きなインパクトをスコアに与える。ツァーはパッティング・コンテスト以外の何ものでもないと云うと云い過ぎかも知れないが、あながち真実から遠くもない。ボールをカップに沈めなければ競争にならないからだ。それは週一ゴルファーのチョコレート争奪にも通じることだと思う。

私が長いゴルフ人生で学んだ最大の教訓は、パッティングを無理矢理成功させようとすると、ゴルフは鎌首をもたげて激しく噛み付いて来るものだということだ。私はグリーン上で攻撃的であるべき時に安全第一でパットして痛い思いをしたかと思えば、それに懲りて強引にカップに捩じ込もうとして入らず尚更痛い思いをしたこともある。これは自分自身を悩ませる果てしない悪循環である。

私にとってのパッティングの本質は、難しいなどという範疇を越えるものであり、われわれに簡単に受け入れられるより以上にかなり幸運に左右されるものだ。われわれがその事実を受け入られれば、われわれ自身が自分のゲームを妨害する危険を少なく出来る」

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“帝王”と呼ばれるJack Nicklausにしてパッティングは「かなり運に左右される」と云っているのは驚きです。長短にかかわらず、ほとんどのパットを見事に捩じ込んでいたように思えるのですが。しかし、「パットが成功するかどうかは運次第」と名人Jack Nicklausが云っているというのは、われわれの「入れなきゃ!」と緊張し昂る心を安らかにしてくれます。Jack Nicklausでそうなら、われわれはなおのこと「絶対に入れる!」なんてことは不可能なのだ…と。

(July 27, 2016)

股関節で上体を折ることの重要性

スウィングでもパッティングでも背は真っ直ぐ伸ばし、股関節(右の図の白い逆ハの字の部分)から上体を折らねばいけません。

[hip-Joints]

これに関した二つの記事を紹介しますが、先ずは背を丸め腰を突き出してSの字のように背を曲げると、ミスに繋がるだけでなく腰痛の危険があるという警告。

'Don't arch your back'
by Ron Kaspreske ('Golf Digest,' February 2014)

「アドレスする時、どのゴルファーも背から腰にかけて弓なりにしなければならないと考えている印象があるが、'Golf Digest'誌選出アメリカのベスト50インストラクターの一人であり、Titleist(タイトリスト)パフォーマンス研究所のDave Phillips(デイヴ・フィリップス)は、それは腰痛と悪いスウィングに繋がると云う。

彼は『それは“Sポスチャー”と云われるもので、プレイヤーがアドレスであまりにも尾骨(びこつ)を突き出すのが原因だ。この背骨の底部の過度のカーヴは腰背部の筋肉を緊張させ、腹部の筋肉を弛緩させる。これはポスチャーの崩壊、体重移動の失敗、各部バラバラのダウンスウィング…などの問題の因となる。このアドレスからソリッドに打つには大変な苦労を伴う』

Dave Phillipsは、アドレスでお尻を突き出すのはいいが、それを背を丸めることによって達成してはいけないと云う。そうではなく、股関節から上体を折って、背骨は真っ直ぐにしておくこと。これは身体の中心の強靭さと腰部・背骨の安定性を必要とするが、良いスウィングをもたらし、腰痛を防止することが出来る」

 

次に、David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)による上体の折り方の解説。

'Perfect your posture'
by David Leadbetter ('Golf Digest,' March 2013)

「あなたはツァー・プロのようにボールを打たないだろうが、アドレスのポスチャーでプロのテクニックを真似出来る部分はある。スタートであなたの身体の角度が適切なら、繰り返し可能なスウィングの基礎を構築出来る。それは一定の軸の周りでの捻転と、正しい軌道でのクラブの上げ下ろしを可能にしてくれる。

よいセットアップの鍵は、ウェイスト(胴のくびれた部分)ではなく、股関節からボールに向かって身体を傾けることだ。その差は微妙だが、ウェイストから身体を折ると背を弓なりに曲げてしまう。このアスレティックとは云えない位置から良いスウィングをするのは困難である。

良いポスチャーを取るには次のようにする。鏡の前で背を伸ばして立つ。指先を左右の股関節(上図の白い逆ハの字)に押し込み、その指で腰を押しながら上体を傾け、お尻を突き出す。肩甲骨はフラットに保ち、両膝を少し緩める。

以上の手順で、あなたはアスレティックでリラックスした感じが得られる筈だ。プレイする時、この股関節の屈折を再現すること。あなたはプロのように見えるだけでなく、プロのように打つことも可能になる」

【参照】「股関節とはどこか?」(tips_110.html)

 

(July 27, 2016)

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