Golf Tips Vol. 146

本番のリズムを練習で作り出す

この記事の骨子は「あるホールを想定して練習する」ということなのですが(これは過去にいくつかのtipsを紹介済み)、どうしてそれが不可欠なのか?という点について、ここでは納得出来る説明がなされています。筆者はスポーツ心理学者Dr. Joseph Parent(ジョゼフ・ペアレント博士)。

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「あるヴェテランのツァー・プロが、練習場で素晴らしいドライヴァー・ショットを放ち続けていた。私が賞賛すると、彼は『練習場ではリズムを構築するのがたやすい。しかし、コースでは話は別だ』と云った。彼の過去の戦績を振り返ると、彼は常にラウンド初めの方で苦闘しており、次第に好調になって行くパターンであった。彼は練習場でのリズムをコースでのリズムに切り替えられなかったのだ。

練習場では、同じターゲットに向って同一のクラブで何度も何度も打つのが普通である。コースでは完全に異なり、普通同一地点から同じクラブを二度続けて打つなどということはない。だから、練習場のリズムをコースのリズムに切り替えるには時間がかかるわけだ。

ほとんどのツァー・プロは、ラウンド前に似たようなウォーミングアップ法を行なっている。ウェッジから始めてショート・アイアン、ロング・アイアン、フェアウェイウッド、そしてドライヴァーという順番で数発ずつ打つというものだ。最後にウェッジで中間距離を打つ。私は、上に述べたツァー・プロに、ウォーミングアップの最後に違う方法を取ることを勧めた。

練習場で、No.1ホールをイメージする。ティー・ショットを打った後、No.1ホールのグリーンまでの残りの距離を計算する。その距離をアイアンで打つ。このようにして、ドライヴァー、3番ウッド、ウェッジを打つ。Par 3を想定してロング・アイアンも打つ。こうすると、ラウンド開始前に数ホールプレイすることになる。コースのリズムに突入しているわけだ。

上記のツァー・プロはこのウォーミングアップ法により、No.1では既にコースでのリズムを獲得し、ラウンド開始直後の数ホールのスコアも良くなった。あるトーナメントの前半六ホールを連続バーディで飾ったほどであった」

【参考】
・「練習・上級篇」(tips_32.html)
・「Luke Donaldの練習」(tips_99.html)
・「練習法の大いなる誤謬」(tips_130.html)

(December 04, 2012、増補August 31, 2018)


グリーンを制する者が小切手を得る

スポーツ心理学者Dr. Patrick Cohn(パトリック・コーン博士)が説くラウンド成功の鍵。

[Going Low]

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books, 2001, $22.95)

「PGAツァー・プロJohn Huston(ジョン・ヒューストン)は自分のことを“ムラのあるプレイヤー”と看做(みな)している。素晴らしいプレイかそこそこのプレイをするか、どっちかなのだ。いいゲームが出来ない時は予選でカットされたりしてしまう。

彼は1996年のMemorial Tournamentでコースレコードの61を記録した。1998年のUnited Airlines Hawaiian Openでは、63-65-66-66でPGAツァーの72ホール最少スコア記録を塗り替えた。二位に7打差をつけての優勝というのも記録破りだった。

ツァー・プロの場合、いいスコアはパットの成功によるものである。プレイヤーの多くがティーからグリーンまでは見事にボールを運ぶ。しかし、賞金の小切手がどこに行くかというと、普通それはパットを見事に沈めたプレイヤーのところである。John Hustonのようなプレイヤーが、ラウンドの早期にパットをぼんぼん入れ始めると、そこから得た自信は火がついたように燃え盛る。だから、ラウンド開始早々にパットを成功させることは、勢いを得る(弾みをつける)ための重要な鍵である。

John Hustonは云う。『早めにバーディを二つ決めてアンダーに出来れば、それはいい原動力となる。ボギーを出した場合のクッションにもなる。特に云いたいのは、いくつかのパットを成功させると、ボールが転げ込むのを目撃することによって自信がつき、その日はそれが何度も起るという気にさせられることだ』

John Hustonは早期に自信を呼び込み、勢いをつけるのはいいリズムによってであると、次のように云う。『ゴルフで最も重要なのはリズムだと思う。パッティングでもスウィングでも、いいリズムを身につけていれば、自信を持ちながらスタート出来る』 彼のようにリズムが身についているということは、いつでも打ったりパットしたりする準備が出来ているということにほかならない。これはゲームを容易にしてくれる。なぜなら、自分のリズムをラウンドの途中で探し廻る必要はないからだ」

(December 04, 2012)


左サイドの筋肉を鍛えよ

1970年に出版された'The Square-to-Square Golf Swing'(スクウェアからスクウェアへのスウィング)なる本は、今は亡きインストラクターJim Flick(ジム・フリック)が1968年に提唱したメソッドを、Golf Digest誌の編集者たちが大判二色刷りの教本としてまとめたものです。これ以前のスウィング理論やプロたちの傾向は、右手で押すパワーに依存したものだったため、《スウィングは左サイドで引け》という常識と正反対のこのメソッドは、当時かなり異色だったようです。後に、Jim Flickは自分名義で'Square-to- Square Golf in Pictures'という題名の本を出版(Golf Digest, Inc., 1974)しています。

「スクウェアからスクウェア理論」の概略は次のようなものです。「バックスウィングは左サイド(左の手・腕・肩)主導で行い、右サイド(右の手・腕・上体)は左サイドの動きに従うだけでなければならない。トップで左腕は伸ばされ、膝は柔軟なまま。ダウンスウィングは膝から下の左サイドが水平に左へ移動し、それがクラブをターゲットラインの内側に保持しつつ右肩をスウィング・プレーンに沿って引き下ろし、左の手・腕によるコントロールを維持する。それがスクウェアなクラブフェースを保つ。頭をアドレス時の位置に残しつつ、両脚は両肩・両腕・クラブを引っ張り続けながら、左方向に突き進む」

現在、《左サイドで引け》はもはや一般的となっていて新味はないでしょうが、左サイドの筋肉を鍛える以下のドリルは今後も役に立つと思われます。

'The Square-to-Square Golf Swing'
by Dick Aultman and the Editors of Golf Digest (Golf Digest, Inc., 1970)

「プロたちは練習場で一日に百回もフルスウィングして筋肉を鍛える。それがスポーツカーよりも速いクラブヘッドの加速を生むのだ。

残念ながら大方のゴルファーは右利きであり、多くの作業を右手で処理する。だから右サイドの筋肉が発達しており、左サイド主導の『スクウェアからスクウェア』スウィングを自然に行うには無理がある。

だから『スクウェアからスクウェア』スウィングを実行するには、筋肉のトレーニングが必要である。また、ダウンスウィングで強力な引く(プル)動きを開始するには、脚の筋肉の強化も必要である。

左サイドの筋肉を鍛えるには、クラブを左手一本で振る。最初は筋肉の痛みを感じるだろうが、それは左サイドが優勢になりつつある徴候として喜ぶべきものである。

1) 正しい体勢とグリップをし、左手の最後の三本指にプレッシャーを感じるように握る。背は伸ばし、腰は虚ろな感じを抱く。

 

2) 腕をフルに伸ばして、ボールからクラブヘッドを真っ直ぐ後方に動かす。左サイド主導を助け、スクウェアなインパクトを準備するため、手を僅かに反時計方向に廻す。肩を傾いたプレーンに沿って廻し、左手は高く、左腕はトップで伸ばされたまま。右膝を柔軟に。

3) 柔軟な膝の動きでダウンスウィングを開始する。膝を水平に動かすことによって、右肩が縦のプレーンで引き下ろされる。

4) 手の甲をボールに向かって引き、前腕部はターゲットに面する。フィニッシュまで、左手の最後の三本指の強さを保つように。

以上を一日に1セッション、筋肉が疲れるまで実施する。最初は二、三回のスウィングで疲れるかも知れないが、後には(数秒ずつ間をおきながら)五分ぐらいは続けられるようになる。

長いクラブを振るのが困難な場合は、短いクラブで始めて、次第に長いクラブに移行する。ドライヴァーが振れるまでになったら、振る回数を増やして行く。

これは120とか115で廻りたいと願っているゴルファーにも、75や70で廻りたい人にも役立つドリルである。

最高の飛距離とコントロールを追求したいのであれば、脚と左手のグリップを鍛える練習を追加すべきである。縄跳びや左手の最後の三本指で何かを強く握る鍛錬が効果がある」

(December 10, 2012)


ゴルフ・ルールQ&A【入門者篇】

女性の入門者のためのQ&Aですが、一寸びっくりさせられました。

'Beginners' questions answered'
editors of 'Ladies Links Fore Golf' ('Ladies Links Fore Golf,' Winter 2012)

「Q. グリーンでパター以外のクラブも使えますか?
A. 使えます。ゴルフ・ルールはグリーンで使うべきクラブを特定していません。というか、コースのどこであっても、クラブ選択に制限はありません。

【編註:グリーン保護のため、公式競技以外ではパター以外のクラブの使用を禁ずるローカル・ルールを制定しているコースもあるようです】

Q. 素振りした時に、偶然ボールがティーから転げ落ちたらどうなるの?
A. ボールはインプレイの状態ではないので、打数はカウントされず、ペナルティもありません。

Q. もし手持ちのボールを使い果たしたら、他のプレイヤーから借りてもいいの?
A. もちろん。プレイの遅延を招かない限り、あなたの対戦者からであれパートナーからであれ、ボールを借りて構いません。

【編註:寡聞にしてこれは知りませんでした。「裁定集」によれば「規則4-4aはプレーヤーがコース上でプレーしている他のプレーヤーからクラブを借りることを禁止しているが、他の用具(例えば、球やタオル、手袋、ティーペッグなど)を他のプレーヤーや局外者から借りることは禁止していない」そうです。だとすると、映画'Tin Cup'『ティン・カップ』(1996)の主人公がボールを使い果たすスリルは嘘になっちゃいますが…。あるいは「付属規則 I のワンボール条件を採用している場合は、プレーヤーはワンボール条件で求められている同じブランド・同じタイプの球を借りなければならない」に該当し、映画の主人公の同伴プレーヤーは別のタイプのボールを使っていたという設定でしょうか?】

Q. 飛行線を確認するため、クラブを両足の前に揃えてもいい?
A. スウィングする前に、そのクラブを取り除けばOK。しかし、これはプレイ速度遅延に繋がる恐れがあるので、練習場でやるのが望ましい。

Q. 傘やボール回収竿もクラブ本数に含まれる?
A. それらはゴルフ・クラブとは看做されないので、数には入りません」

(December 20, 2012)


Ben Hogan(ベン・ホーガン)のスコアを減らす八つのヒント [Power Golf]

'Ben Hogan's Power Golf'
by Ben Hogan (Pocket Books, 1948, $6.50)

「1) 練習

ほぼ全てのアマチュアが経験していることの一つは、インよりもアウトの出来が悪いというものだ。その理由は、アウトは身体のウォームアップに費やされ、その結果がインで発揮されるからだ。もし、スタート前にたった五個のボールでも打ってさえいれば、アウトのスコアを減らすことが出来る。単に筋肉のウォームアップになるだけではない。スコア・メーキングのための思考を、スタート時点から開始出来るという作用もあるのだ。

2) 常識

多くのゴルファーが、ショットする前に時間をかけて考えることをせず、いくつもの打数を無駄にする。例えば、バンカー越えではボールがグリーンに届くかどうかをハッキリさせるべきだ。ミスしてもよい範囲を考慮せよ。ピンから遠くへ乗せたとしても、ショートしてバンカーに掴まる危険を冒すよりはいい。『君子危うきに近寄らず』

3) 充分なロフトのあるクラブを使え

初心者がグリーンに向かってプレイする際、充分なロフトの選択に無頓着な傾向がある。その結果、空中に充分高くボールを上げられずショートしてしまう。次のホール、直前にショートしたという事実が心の中に存在するにもかかわらず、彼はまたもや同じクラブを取り出す。今度は、充分な距離を確実に得るべく、もの凄くハードに打つことを試みる。結果として、クラブ選択のミスは二打の高価な犠牲に繋がってしまう。

4) クリーンに打てないなら安全第一

ラフでは不必要な冒険を避けよ。単に脱出しようとするだけで二打も三打も費やすことになりかねないからだ。三打も四打も無駄に使うよりは、一打を犠牲にする方が賢明である。

5) サンドウェッジの使い方を習得せよ

多くの初心者がサンドウェッジの使用法を学ぼうとしない。彼らはユーティリティ・クラブが一体どういうものであるかを正確に理解していないのだ。【編註:単一目的のクラブでないものがユーティリティ・クラブと呼ばれます。サンドウェッジはバンカーからだけでなく、フェアウェイからピッチングやチッピング等にも使えるので、Ben Hoganはユーティリティ・クラブと呼んでいるようです】

6) クラブに仕事をさせよ

身体・腕・手などでボールを操ろうとする代わりに、自分のスウィングと、目の前のプレイのために選んだクラブを信じるべきである。

7) ピンではなくグリーンを狙え

バンカーで堅固に守られているグリーンの隅にピンが切られているような場合、絶対にピンを攻めてはいけない。このような時には第二打で勝負するのではなく、無難に乗せてからパッティングの能力に一か八か賭けるべきだ。常に、自分がコントロール出来る状況下で勝負すること。

8) 恐れるな

恐怖は筋肉のリアクションに影響を与える。だから、池越えを始めとするどんな障害物を越える際にも、恐怖感を心から追い出すべきである。誰であってものびのびとスウィングすれば障害物を越えられるクラブを持っているのだから、障害物を前にして震え上がるのは愚かである」

(December 23, 2012)


ゴルフ金言集 Part 20

以下の金言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。

[Dr. Wiren]

「ゴルファーは強靭であるべきだ。目一杯引っ叩くためではなく、イーズィにスウィングするために」
Dr. Gary Wiren(ゲアリ・ワイレン博士、PGAプロ、写真)

「絶好調だった昨日は、数億年昔のことだと考えよ。そうすれば、また奇跡が起らないとも限らない」
Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)

「インパクトの瞬間にあんたが美しく見えれば、その前後で獣(けだもの)のように見えたって構わない」
Seve Ballesteros(セヴェ・バレステロス)

「バンカーと水難との違いは、自動車事故と航空機事故との違いである。自動車事故なら助かるチャンスがある」
Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)

「私の息子が立派な人間でさえあれば満足だ。ゴルフなんかどうだっていい」
Earl Woods(アール・ウッズ、Tiger Woodsの父)

「一つのパッティング・メソッドから次のメソッドへと転々としてゴルフで人生を無駄にしてはならない。メソッドをころころ変えるのは、一つのテクニックに習熟しようとしない怠け者の姿勢である。練習の欠如によって不確実なパットを常駐させ、あなたを新たな魔法のパッティング技法の追求へと駆り立てるのだ」
Charles B. Cleveland(チャールズ・B・クリーヴランド、ゴルフ・ライター)

「ボールがディヴォットに入ったら、もう一つディヴォットを作りなさい」【=ボールを上げようとするのでなく、打下ろして新たなディヴォットを作ろうとすればボールは上がる】
Jan Stephenson(ジャン・スティーヴンスン、LPGAツァー・プロ)

「【パットについて】私に出来ることはボールをスタートさせることだけだ。後は神様次第だ」
Jimmy Demaret (ジミィ・デマレ)

「インパクトを過ぎるまで手首を緩めてはならない。フィニッシュまで固く保持せよ」
Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ)

「90%のゴルファーはボールと接触する前にアンコックしてしまう。それがダフり、トップ、方向違いのチョロなどの原因である」
Jerry Barbar(ジェリィ・バーバー)

「練習というのは筋肉に脳を移植することだと思う」
Sam Snead(サム・スニード)

「どのパットも沈めようと懸命にならないこと。『入れなきゃ!』という姿勢は、ストロークに重圧を加える。正しいラインと強さでホールに向かわせるためにベストを尽くすだけに留めよ」
Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)

(January 01, 2013)


潜在意識にスウィングさせる

この記事の筆者Dr. Dede Owens(デディ・オーウェンス博士、1946〜1999)は、元LPGAツァー・プロで、後にインストラクターとして活躍した女性。これは雑念を排除し、身についたスウィングを潜在意識に実行させる方法。

[Snoopy]

'GOLF: Steps to success'
by Dr. Dede Owens and Linda K. Bunker (Human Kinetics, 1995, $15.95)

「ボールを打つ時、何か別のことを考えるドリル。それぞれ5個のボールを打つ。

1) 100から三つおきにカウントダウンする。100, 97, 94, 91, 88, 85, 82, 79…という具合。
2) ハミングするか、静かに歌をうたう。
3) 詩を朗読する。

それぞれ、身体の緊張状態とボールの弾道がどう変わるか確認する」

(1)は眠れない時に100, 99, 98, 97…とカウントダウンすると心配事や興奮を忘れさせ、いつの間にか眠れるという方法に似ています。しかし、三つおきというのは難しい。数字音痴の私など、「91の次は、えーと、91マイナス3だから、う〜」などともたもたしてしまい、とてもスウィング出来ません。一つおきでもいいのではないでしょうか。

(2)はTimothy Gallwey(ティモシー・ゴルウェイ)が'The Inner Game of Golf'『インナーゴルフ』(1998)という本で提唱した方法と同じものです。私が知っている範囲でも、ハミングしながらスウィングするゴルファーが二人はいます。

(3)はどれだけの人が実行出来るか疑問です。ゴルフ・スウィングは非常に短時間なので、俳句なんかで充分かもしれません。しかし、「古池や、蛙飛び込む水の音」はやめましょう。ボールも池に入ってしまいます:-)。

'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books, 2001, $22.95)

「瞑想の指導者は、生徒に静かに呪文を唱えることを教える。意味の無い呪文は心を鎮めるのに役立つ。もし他の想念が浮かび上がって来ても、それらを通過させ、呪文に集中するよう指示される。ゴルフ・コースで瞑想に耽ってはいけないが、打つ前に集中するために何らかの呪文を唱えるのは有益である」

となると、やはり「南無阿弥陀仏」か「般若心経」がいいようです。

【参照】「でしゃばりコーチをブロックする」(tips_3.html)

【おことわり】画像はhttps://encrypted-tbn0.gstatic.com/にリンクして表示させて頂いています。

(January 13, 2013)


スウィング失敗に関するルール

'Swing and a miss'
by Dean Knuth ('Golf Digest,' February 2013)

「・USGAのストロークに関する定義

『ストロークとは、ボールを動かす意図を持ってクラブを前方に動かすこと』である。この文中の“意図”がキイ・ワードである。もし、ボールを動かす意図がなければ、ダウンスウィングの最中にボールを打つことをやめる選択をして意識的に空振りした場合、たとえクラブヘッドがボールの上を通過しても打数に含めない。

・スウィングを中断するつもりだったが誤ってボールを打ってしまったら、それは一打であり、ボールのある場所からプレイを継続しなければならない。

・素振りの際に誤ってボールを動かしたら、それはストロークではないが、1ペナを払ってボールをリプレースしてプレイする。

【編註】ティー・アップされたボールをアドレス時に誤って動かした場合に限っては、それはイン・プレイのボールではないので罰はなく、再度ティー・アップして打つことが出来る。もしスウィングを完了してしまったら、ボールが動いていようといまいと、それは一打と数えるがペナルティは科されない。(ルール11-3)

・ボールを打つのでなく、押したり掻き寄せたりした場合、それは合法的なストロークとはみなされず、2ペナ(マッチプレイではそのホールの負け)となる。ボールはクラブヘッドのどの部分で打ってもよいが、ボールとクラブヘッドの接触は瞬間的なものでなくてはならない。【編註:掻き寄せたり、押したりするのは瞬間的接触とは云えない】

・ストロークの間に一回以上ボールと接触した場合【=二度打ち】、その打数に1ペナを足す。打ったボールが何かで跳ね返って、もう一度クラブに当たった場合も同じ。

【編註】JGAの説明では「球がストローク中に2回以上クラブに当たっても1打の罰であることに変わりはありません」とのこと。

・バックスウィングの間にクラブが折れたが、あなたはスウィングを完結させようとした場合、それはストロークとは看做されない。ただし、ダウンスウィングの間にクラブが折れた場合は、ボールが動こうと動くまいと一打として数えなくてはならない。

・スウィングの間に(あなたのクラブが接触する前に)ボールが動いたが、あなたはそれを打ったというケース。
 a) ボールが動いた原因があなた(の動作)にないことが確実なら無罰。
 b) どんな風に何故ボールが動いたのか100%確かでなければ、1ペナを払ってボールが落ち着いた場所からプレイする」

(January 16, 2013、追記January 22, 2013)


カップを大きくしたらどうなったか?

Paul Runyan(ポール・ラニャン)の本に書かれていた、1934年に本当にあった話。1934年と云えば、Paul RunyanがThe Masters(マスターズ)で三位タイ、PGA選手権に優勝と、彼のショートゲームの腕前が完全に開花した時期であり、PGAツァーの多くのプロたちが彼のパッティングに恐れをなしていた頃のことです。彼はこの逸話を、パッティング戦略の重要性として紹介しています。

'The Short Way to Lower Scoring'
by Paul Runyan with Dick Aultman (Golf Digest/Tennis, Inc., 1979, $9.95)

「1934年のFlorida Year-Round Open(フロリダ・イヤー=ラウンド・オープン)開催前に、Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)【編註1】は競技委員たちに全てのカップの直径を8インチ(20.32センチ)にするよう説得し、成功した。【編註2】その理由をGene Sarazenは、『大きいカップはパッティングの負担を軽減し、偉大なショット・メイカーたちが受けて当然の利益を増やしてしてくれる』と説明した。私(Paul Runya)は反対し、パットが得意でない連中の利益にもなるだろうが、パットが上手い者の利益にもなるから結果は同じに過ぎない…と主張した。

[big hole]

【編註1】Gene Sarazenは、この年までにThe Masters(マスターズ)を除く三つのメイジャーに計六回優勝していた大物。この翌年The Mastersにも優勝し、生涯グランド・スラムを達成している。

【編註2】通常のカップの直径は4.25インチ(約10.8センチ)ですから、五割り増し以上!でかい!

私はトーナメント開始前に決意していた。私のパッティング戦略を寸毫も変えるべきではないと。的が大きくなったとしても、長い距離ではラグ・パットすべきだと。その決意は報われた。私は四日間を25アンダー・パーで廻り、11ストローク差で優勝したのだ。3パットはゼロだった。

二位に入ったCharlie Guest(チャーリィ・ゲスト)は、3パットをたった一つで済ませた唯一の人間だった。他のプロたちは、みなセイレーン【編註:ギリシア神話で、美しい歌声で船人を惑わし、船を座礁させ人々を溺死させた海の魔物】の呼び声の犠牲者となった。彼らはカップの大きいサイズに誘惑され、普通はラグ・パットすべき距離なのに1パットで沈めようと大胆に攻めたり、1メートルのサイドヒルのブレイクを無視したりした。

美しいタッチの持ち主であるOlin Dutra(オリン・デュートラ)は、二度も4パットした。Bill Melhorn(ビル・メルホーン)は13回も3パットした。カップを大きくさせた張本人Gene Sarazen自身は、皮肉にも七つのホールで3パットした。

これを読んでいるあなただって、戦術を変更すると同じ目に遭う筈だ。スクランブル競技のあるホールで、あなたのパートナーが既にパーで上がって相手チームとタイにしたとしよう。そのホールに勝つには、あなたがバーディを達成するしかない。うまく行けば勝つわけだし、失うものは何もない。この状況でのあなたの心理は『ショートだけはすんじゃねえぞ、てめえ』というものだろう。その結果、あなたはいつもより僅かに力を篭めてボールを打つ。ボールはたとえカップのド真ん中へ向かったとしても、カップの真上を通り過ぎて転げて行ってしまう。あるいは、それがブレイクのあるラインなら、余分の強さで打たれたボールはあなたが読んだ通りにはカーヴせず、真っ直ぐに転がって行ってしまう。パットに失敗したあなたは、あなた自身かパートナーに『最善の努力はしたぜ』と云うかも知れない。本当にそうだろうか?あなたがいつもの戦略から逸脱したことが、パット失敗の原因なのに。【=戦略を変えないことが、最善の努力なのに】」

【おことわり】画像はhttps://static.wixstatic.com/にリンクして表示させて頂いています。

(January 25, 2013)


Paul Runyan(ポール・ラニャン)のあだ名について

Paul Runyan(ポール・ラニャン)はPGAツァーのプロ仲間から"Little Poison"(リトル・ポイズン)と呼ばれていました。誰が訳したのか知りませんが、日本では「小さな毒虫」とされています。これは誤訳です。"poison"には「虫」という意味はないからです。

[Runyan]

そもそも、このあだ名はPaul Runyanに付けられたのが初めてではないのです。英語版Wikipediaの"Paul Runyan"の項に、「彼の"Little Poison"というニックネームは、1930年代の野球選手Lloyd Waner(ロイド・ウェイナー)からのイタダキである」とあります。

"Lloyd Waner"の項の説明をまとめると次のようになります。「Lloyd Waner(1906〜1982)というメイジャー・リーグのセンターを守る選手は、当時もっとも小柄なプロ野球選手だった。彼は、兄のPaul Waner(ポール・ウェイナー、1903〜1965)と共に、ピッツバーグ・パイレーツの外野を守っていた。二人は、兄のPaulが"Big Person"(ビッグ・パースン)、弟Lloydが"Little Person"(リトル・パースン)として知られていたが、ブルックリン・ドジャースのファン【編註:ブルックリンはニューヨークの下町で、かなり訛りがきついところ】が"Big Poison"(ビッグ・ポイズン)、"Little Poison"(リトル・ポイズン)と発音しているのを、スタンドにいたスポーツ記者が聞きつけ、それを広めた」のだそうです。

Lloyd Wanerがピッツバーグ・パイレーツに在籍していたのは1927〜1941年で、Paul Runyanのプロ生活は1925〜1941年ですから、そっくり重なります。PGAツァーの連中は、体格が小さいのに賞金をかっ攫って行くPaul Runyanを、有名野球選手のニックネームを頂いて"Little Poison"と呼んだわけです。

アメリカでは小男に"Little Joe"とか"Shorty"などのあだ名をつけ、それが通り名になり、当人も別に嫌な顔はしません。ですから、小柄なPaul Runyanを"little"と形容するのは蔑視でも何でもありません。"Poison"の方には優勝を攫われる僻みが篭っているように聞こえますが、しかし、野球の方のニックネームの起源を考えればユーモラスとも云えます。もちろん、「侮れない奴」、「うざったい奴」というニュアンス(毒)は感じ取れますが。

私は日本で広まっている「虫」という表現が嫌いです。"Little Poison"を「小さな毒虫」と訳すのは、1) "poison"に「虫」という意味は無い、2) "little"という言葉で「小さな存在」を指しているのが明らかなのに、重ねて「虫」という小さいものを表す言葉を使うのは冗漫である…という二点から、この翻訳は悪意が過剰な誤訳だと断罪したいと思います。

Googleの画像検索で"little poison"と入力してみて下さい。蚊の写真が二枚ほど出て来ますが、それ以外に虫の写真など出て来やしません。

「じゃ、お前なら何と訳す?」とおっしゃる? 訳しません。というか訳せません。「リトル・ポイズン」でいいと思います。

(January 25, 2013)


アイアンを常にシャープに打つ練習

中堅インストラクターBill Moretti(ビル・モレッティ)の背骨の角度に注目した練習法。

'Hit every iron flush'
by Bill Moretti ('Golf Magazine,' May 2008)

「アドレスからインパクトまで背骨の角度を維持して、手とボールの間の距離を同一に保つのが安定したスウィングの鍵である。あなたが、スウィングの間中背骨の状態を感じ取れないのなら、次の簡単な手段を試されたい。

1) ソフト・カヴァーの本(A5判ぐらいが適当)を半分見えるようにして、ズボンの背に挟む。

2) ボールにアドレスし、本の露出した部分が背中下部に平に接するように上体を前傾させる。

3) 通常のフル・スウィングをする。
 a) あなたがトップの原因となる伸び上がる動作をすれば、本の上部があなたの背を押すことになる。
 b) ダフりの原因となる屈み込む動作をすれば、本との接触が断たれる。

必要とあればスローモーションのスウィングも交え、本がフォロースルーまで背中とぴったり触れ続けるように練習せよ」

(January 28, 2013、改訂June 04, 2015)


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