Golf Tips Vol. 11

静かなドン

先日、練習グリーンでパットの練習をしていたら、一度だけ一緒に廻ったことのあるDon(ドン)がやって来ました。アメリカ人としては小柄ですが、やや肉付きのいい、見るからにパワフルな体型。「最近、仕事の方はどうだい?」とよくこっちのことを覚えています。

彼はハンデ3〜4という、ここのクラブでもトップ・クラスのゴルファーです。一緒に廻った時に、彼が珍しくフェアウェイ・ウッドをトップしました。やけにでかいウッドなので、「クラブは何?」と聞いたら、「ドライヴァーだ」と云う答え。フェアウェイでドライヴァーを使うのはTiger(タイガー)とかFred Couples(フレッド・カプルズ)ぐらいかと思っていたので、びっくり。

折角のチャンスなので、色々聞いてみました。
Q「初めて80を切った頃はどういう風だったの?」
A「グリーン周りのチッピングを一生懸命練習して、それが助けてくれた。Ben Hogan(べン・ホーガン)の言葉だが、もし寄せが常にピンをオーヴァーするようだったら、グリップを堅くせよ、もし常にショートするようだったら弛めにせよ…というのがある。これは役立った。ゴルフはフィーリングだと思うので、実はメカニックにはあまり関心が無い。練習場で300発も打つなどいうことはしない。基本は知っていなければならないが、その後は猛練習の必要は無いと思う。新しいクラブを買った時は相当練習しなければならないが、最近はクラブなど買わないのでその必要も無い」

Q「ロー・ハンデを維持するのは大変なプレッシャーなんじゃない?」
A「スコアを気にしてプレイするわけじゃないので、プレッシャーは感じない。目標はフェアウェイの真ん中に正確に打つということであって、それが上手く行ったかどうかが重要。パーやバーディは結果でしかない。ゴルフ場に来る時の心構え("frame of mind")が問題だと思う。スコアだけ追求するゴルフは正しい考え方ではない。フェアウェイをキープするとか、最小パット記録を更新するといった目標を持つのが正しい態度だと思う。ゴルフは毎日同じじゃないし、いつも何か発見があり学ぶことがある。完璧なゴルフというのは不可能なので、いくつかミスをするのは当然、それはそれで認めるしかない。よくクラブで地面をひっぱたくような人がいるが、そういうことはしない。かなりひどいプレイだった時は、三日とか一週間とかゴルフから遠ざかる。プレッシャーを感じるのは、お金を賭けた時だね:-)」

(December 05, 1998、改訂May29, 2015)


マリガン

その日最初の一打が失敗した場合に、「今のは無し!」にして打直しの二打目から数えるという(囲碁・将棋における「待った!」みたいな)庶民的ルールがMulligan(マリガン)。トーナメントにはあり得ません。先日、前の四人組のスタートを見ていたら、池に入れたわけでもなく、ごく普通にティー・ショット出来た人間まで二打目も打っていました。これはあんまりです。待ってる方がイライラします。ま、こういう人達は少ないですが。

'A Round of Golf with Tommy Armour'
by Tommy Armour (Lyons & Burford, 1959, $13.95)

この本の著者Tommy Armour(トミー・アーマー)はスコットランド生まれのプロ。アメリカに移住後、いくつもメジャーを制覇しました。

「スコットランドにはMulliganなんてなかった。失敗したら、失敗したわけだからその分を数える。御名御璽。

アメリカへ来てからMulliganというものを知って愕然とした。その発想が理解出来なかった。後に、ああ、これは無思慮なゴルファーに反省の機会を与えるためのものかと思い当たった。

Mulliganが最初の一打だけでなくどこでも使えるとしたら、一日中プレイした160打から80だけ数えるという輩が出て来るだろう」

(June 27, 1998)


冬場のゴルフ

'One Move'(ワン・ムーヴ)の著者Carl Lohren(カール・ローレン)によるtip。

'Getting Set for Golf'
by Carl Lohren with Al Barkow (Viking Penguin, 1995, $18.95)

「体温は頭部から抜けて行ってしまうので、帽子を被るのは重要。保温のいい下着やミトン(手袋より温かい)も重宝。薄いのと厚いのと二つの靴下を履く。一ヶ所に留まってはいけない。常に動き続けること」

「ボールは暑い季節のように飛ばない。ワンクラブ上げた方がよい。寒風は温風よりヘヴィで、抵抗が大きい。5 mphの寒風は約15 mphの温風に相当する。グリーンは通常堅いので着地後のランを計算すること」

何方もやっていることでしょうが、予備のボールをポケットに入れておいて温めておくのがいいようです。冷えたボールは弾力が無く、飛ばないと云われています。ワン・ホール毎に交換します。

シニア・プレイヤーのEddieが、「冬は女性用のボールを使うのがいいよ」と云っていました。コンプレッション度が低いので、寒気の中でも飛ぶということなのでしょう。これはまだ試していません。

(December 21, 1998)


イレギュラー軍団
[Justin & Lee]

'Golf Digest' 1997 No.10にJustin Leonard(ジャスティン・レナード)のスウィングの分解写真が掲載されました。彼は背も低く、あまりパワーがある方でも無さそうなので、私などが模倣するのにぴったりのタイプです。しかし、つぶさに写真を見ていくと、凄いトップなのです、これが。左肱は明白に折れているし、クラブヘッドは左腋の下に近い高さまで下りています。オーヴァースウィングなんてもんじゃありません。しかし、解説者はこれらに全く言及していません。

やはり'Golf Digest'の1998 No.1にLee Westwood(リー・ウェストウッド)の分解写真が登場。彼はイギリスの若手のホープです。で、このLee Westwoodですが、インパクトで左肱が折れているのです。解説では、「Westwoodはインパクトで頭を下げるので、左腕がそのままだと間違いなくボールの後ろの地面をヒットしてしまうかテンプラになる。その調節のためにクラブヘッドを引き上げる必要があり、左肱が折れるのだ」とか。淡々とした客観的解説で、非難めいた色彩は全然ありません。

Jim Furyk(ジム・フュリック)の往復で軌道が違うイレギュラー・スウィングも有名ですが、彼はトーナメントで常にTop 10に入る好成績だし、WestwoodもLeonardも順調に勝利しているので、誰も非難しないのでしょう。勝てば官軍です。我々がやったって(実際にやってるわけですが)わざわざ分解写真を撮ってくれる物好きはいません:-)。

(July 14, 1998)



トリプルボギーの上

Double bogey(ダブル・ボギー)、Triple bogey(トリプル・ボギー)はもう“日本語”になっていますが、ではそのトリプル・ボギーの上は御存知ですか?パー4だと8の場合。英語では"quadruple bogey"(クァドループル・ボギー)と云います。日本でプレイしていた時は恥ずかしさもあって、「スコアは?」「蛸(たこ)で〜す」とか云って笑って胡麻かしていたものです。ではその又上は何と云うでしょう?パー4で9の場合。"Quintuple bogey"(クウィンチュープル・ボギー)です。何故こんなことを知ってるかって?よくやるからです:-)。今日もパー5で9を出しましたから立派な"quadruple bogey"です。

(April 20, 1998)


賭けゴルフ

ゴルフ場の常連がそれぞれ勝手に決めた名前と方式が横行し、コースAの方式はコースBではポピュラーでないということがあり得ます。

コースAではシニア達がScats(スキャッツ)と呼ぶ方式で遊んでいます。これは、TVで観られるSkins Gameと似たようなものです。あなたが一人だけパーなら10セント、バーディなら20セント、イーグルなら50セントずつ他のメンバーから貰える仕組み。チャラなら10セントずつ次のホールに上積み。同じコースAでも複雑なScatsをする人々もいます。あなた一人だけ他より良ければ25セント、バーディなら更に25セント、ショート・ホールでワンオンしたら25セント貰え、全員チャラなら次のホールに10セントずつ上積みという方式。四人だと、これは結構額が大きくなります(大騒ぎするほどでもないですが)。

以上は一緒に廻る組全体での賭けですが、当然その中の“宿敵”との個人的賭けも並行して行なわれます。ハーフの最後で、敗色濃い方が一気に挽回出来るオプション「プレス」(勝てばチャラ、負ければ倍)というのもあります。

コースBの常連はSnake(スネーク)という方式を好んでいます。これはスリー・パットしたら他のメンバーに25セントずつ払うというもの。仮に四回スリー・パットして他の三人に払うとしても合計$3.00(約¥360)ですから大した額ではありません。他の一人、二人もスリー・パットするでしょうし。しかし、誰しも罰金は払いたくないので、真剣にパットするようになります。これはスコア・メーキングのためにもいい賭けだと思われます。

(November 18, 1998)


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